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第一話

気楽にのんびり見れるものを目指しています。

 その日は彼女にとって残業が続いた週末だった。といっても残業が嫌と言うわけではなく、残業代も出るので月に四十時間ぐらいならばむしろお願いします的なノリでこなしていた。さすがに月八十時間を超えた時は、これはアカンと思ったが。そんな事は年に一度あるかどうかだ。

 ともかく、楽さを一番に考えたヒールのない靴とこれまた楽さを一番に考えたグレーのスーツにお手入れが簡単と書いてあった黒のトレンチコートを着込んだ、ファンデと眉毛を整えただけのお気持ち程度の化粧姿で、短い髪を冬の冷たい風にボサホザにされながら、颯爽と馴染みの居酒屋へ連絡しようとスマホを取り出す。時刻は二十一時半。三十分で最寄駅に着くから十時には滑り込める。そうすればラストオーダーには間に合うだろう。

 一杯いけると思ってにやりと笑っただらしない顔はマフラーに隠れ誰も見ることが無かった。

 そして、直後に彼女の姿は消えた。


 その日は彼にとっていつもと変わらない週末だった。大規模なプロジェクトを任される事はしばしば。今もその大詰めに入っているためいつもより帰りは遅くなってしまっていた。今年で三十路だが、部長への昇進も示唆されている。本音のところはプライベートが圧迫されるのは好まない。が、給料もかなり上がるので欲しかった器具にも手が届く。身だしなみは足元からを体現するように手入れの届いた革靴、体型に合わせた肌触りの良いスーツ、高い身長を生かすようなコートを身にまといながら、脳内では金を取るか時間を取るか、そして晩ご飯はおでんにするかラーメンにするか実に悩ましいと苦悩していた。いつもならたんぱく質中心の食事を注意するところだが今日は週一の開放日。おでんもラーメンもあったまるが、比較的ヘルシーかカロリー爆弾か。この時間ならばギリギリ馴染みのラーメン屋も開いているだろうがしかし、最近のコンビニのおでんも捨てがたい。おでんの横に並ぶ揚げ物とかも、捨てがたい。どっちにしてもカロリー爆弾だった。

 ふいに彼は見た。目の前で赤信号に突っ込んでいく女性の姿を。咄嗟に動けたのは日頃のトレーニングの賜物か。届いた腕を掴んで思い切り引いた直後、彼らの姿は消えた。


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