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第80話 即ち、我が意の如く

 ロイとレダ、そしてリー、ラー、シュイ教官の五人が竜に向かって走る。迫り来る屍鬼に対して今度は倒すことより突破を優先して通り抜けていく。


 全ての兵が屍鬼になったわけでなく、まだ僅かながら生存者もいて、気絶からの覚醒と悲鳴、殺戮が随所で起こるなど周囲は混沌としていた。


 幻葬の吐息によって精神を灼かれた衝撃は人によって異なる。霊鎧無しの常人であれば気絶はほぼ免れ得ないが、単に短時間気を失うだけの者から、目覚めはするが心的外傷(トラウマ)を負う者、そのまま目覚めることなく死に至る者、様々だ。


 今回の犠牲者たちはだいたいが正規兵であり、一般人よりは心身の強い者が多かった。そのため、時間さえあれば目覚められる者が殆どだったろうが……多くの者がその前に魔術の巻き添えや屍鬼によって死亡し、死者の数は既に500人を超えていた。



 その混沌の中で竜に向かう五人には、まず竜が作り出した移動防壁が叩きつけられたが、そこで活躍したのが【反射】の力を持つリーだ。


 リーの【反射】によって作られた鏡はあらゆるものを反射する盾であり、極めて切れ味に優れた武器でもある。


 従来は非常に小さいものしか作れず、手刀が短剣にもなる程度でしかなかったが、霊輪を開いて以降作れるものが少し大きくなり、持続時間も延びた。


 そして彼には一際長い霊杖が渡されていた。この杖は霊的に自分の体の延長として利用できる。そこでリーは杖の先端に【反射】で作り出した刃を形成、巨大な長刀を作り出したのだ。


「名付けて仙鏡偃月刀……見るがいい、邪竜め!」


 リーがこの長刀をぐるりと振り回すと、その軌道に合わせて防壁が切り裂かれ、人が突破可能な大きさの孔がくりぬかれた。


『……!……』


 竜は少し驚き、再び透明化を発動するが、今度はロイから大量の霊気を乗せた投石が飛ぶ。そのため当たった一瞬だけ竜の動きが止まり、透明化も解ける。その間にラーが周辺に転がっていた巨石を持ち上げる。


「おらああっ!」


 彼の【軽重】は人間の何十倍もの重さのある物すら、触れている間は持ち上げ可能な重さに変える。しかしなぜか動かしにくさ(=慣性のこと。ロイ達には理屈は分かっていない)自体は変わらないので、加速させるには相応に力が必要だ。


「はあっ!!」


 そのため少しだけ持ち上がった石をラーごとロイが【金剛】の剛力で蹴り飛ばすことで速度を与える。さらにその上にシュイが飛び乗った。


 直後、巨石はラーの手を離れ本来の重量に戻るものの、込められた霊気は残っており、そのまま竜の最終防壁にぶつかって破砕する。


 そしてシュイのほうは一瞬だけ身体能力強化の魔術により跳躍、竜の頭の辺りまで飛び上がり……杖を竜に叩きつけながら滑り落ちる。ついでレダが竜の脚に杖を高速で打ちつけた。


『……GRAAA!!』


 だが竜にとって巨石やシュイとレダからの打撃は、物理的にも霊的にも殆ど効かなかった。


 竜は嗤う。こいつらの力は大したことはない……注意すべきはやはりあの小僧だけだ。その小僧が迫ってくる。


 竜は癒やし終えた翼を大きく震わせてレダとシュイを弾き飛ばすと、【幻装】(カモフラージュ)【透過】(パーミエイション)を再起動、ロイを見えざる鍵爪で迎撃した。


「ぐおっ……!」

「うわあっ!」

「くっ」


 吹き飛ばされた二人に構う余裕なく、ロイは全力で鍵爪を受け止め(・・・・)、ついで【妖隠】(フェアリーシェード)にて姿を消し灰色の世界を疾駆する。


 竜は防壁を再構築。本体は幻装と透明化を維持しつつ、ロイがいた辺りを可動防壁で囲み押し潰しながら、つい先ほど完成した罠を起動する。


 『吸滅地獄』の術式の裏で【幻装】により隠していた高位儀式魔術『元素置換』……物質の置換というだけならウーハンの仙力に近いが、竜語魔術によるそれは人間の仙力より遥かに規模が大きい。


 砦の周辺に作った防壁の本当の目的は逃亡防止でも毒のためでもなく、この術の範囲指定補助のため。


 仙力を持つ者には、直接的な魔術、そして幻妖である竜自身による直接打撃は効きにくい。ゆえに竜は間接的な手法で、気絶している者を含め人間達を皆殺しにする方法を採ることにしたのだった。


 そして置換するものは何か。

 ……今回竜が指定した入れ替え対象は、砦内全域の空気中の「酸素分子」と外の「窒素分子」


 酸素を窒素に置き換える、それだけだ。だがその環境は人間種にとって致命的。彼らは無酸素の空気を一息吸っただけで無力化し、短時間で死亡する。


 竜や竜人にとっては無酸素状態は大したことではない。しかし人間は、そうした空気を吸ってしまうと血中酸素濃度が一気に低下し意識障害を起こすという特性がある。なんと脆弱な命であることか。


 つまり人間達にとってほぼ純窒素の空気とは、目に見えず匂いもなく認識もできない地獄。そうでありながら、毒となるものは一切増減しないため通常の防御魔術や仙術の対象外。解毒術なども意味がない。


 そして呪文の必要がないほど術式を作り込み、さらに【幻装】によって魔法陣を隠しておけば人間達には何が起こるか分からない。


 このために先ほどの術までは敢えて呪文を唱え、魔法陣を隠さずに発現させていた。そうして幻霞竜といえど魔術攻撃には呪文が必要で、魔法陣も発生すると思い込ませる。


 そこに突如、呪文も魔法陣もなく知覚も不可能な罠を仕掛ければ、人間たちはわけも分からず死ぬしかない……。


 

 ──結果的には、それは迂遠に過ぎた。


 それは幻霞竜という種の悪癖だ。人間達など殺すだけならもっと簡単な手段はいくらでもあったのに、無駄に巨大で精緻な術式を複数編み上げて時間を浪費した。


 大技を使うにしても元素置換や【憤怒】を使う少女の個別無力化を狙うのでなく、単純に対処に余裕を与えぬ連続攻撃のほうが良かったであろう。


 知性と共に再現される上位幻妖は、どうしても生前のやり方や成功体験に縛られる。今回のこれも、かつての彼が人類に対して使ったやり方だ。そうして何千人も一気に仕留めたことがある。


 幻妖となり果てたからには、もっと粗雑で拙速な、自爆も辞さぬ戦い方で問題ないと分かっていても、下手に知性があるとなかなか難しい。


 幻霞竜という種はその能力特性から、自分の意図や攻撃を相手に悟られる事を嫌う。そして手間がかかっても手順を踏み相手を罠に嵌めるやり方を多用した。


 ゆえに彼らは、想定外(イレギュラー)に弱い。




 ……いざ人間たちの息の根を止めるべく地獄を呼び出そうとしたところで、竜は異常に気がつく。


 煌めく仙力の長刀を持つリーが、幻像に目もくれず一目散に、見えないはずの竜の本体のほうに向かってきていた。


 ラーも同様だ。そして一抱えもある石を投げる。その石は突然出現した多数の水球の一つにぶつかってそれを破壊し、周辺に水をぶちまけながら防壁に激突する。他の水球も地面に落下し周辺を濡らした。


 彼等の破壊は素早く的確で………人間たちへの攻撃用どころか、竜自身を守るための防壁にも孔があく。


『!』


 何故だ。何故位置が読まれている?


 それに思えばさっきの小僧も妙だった、何故爪を受け止めることができた? 幻装と透過を併用した爪だ、避けるならまだしも受け止めるなど……まさか攻撃が見えていた!?


 さらに水球はただの水ではなかった。破魔の聖水……それによって付近の『元素置換』の魔法陣が損傷し、エラーが発生。打ち消されるほどではないものの、発動が遅れる。


『!?』


 ここまでの破魔の力をいつの間に? 人間のくせに一切の呪文も魔法陣すらもなく……霊威か!?




 ……【幻装】も【透過】も、竜自身の認識には影響しない。だから竜は気がつかなかった。見た目としては変わっていなかったからだ。


 先ほど人間たちになぞられた部分の鱗や、吹き飛ばしにつかった手足の表面が、元と同じ色に【変色】していたことを。そしてその部分には偽装も透明化も及んでいないことを。


 これがただの塗料や魔術、弱い仙力などによるものなら竜と一緒に消えただろう。だが【変色】の実態は【調波(チューニング)】……第二階梯に類する上位仙力である。


 【幻装】【透過】に対して同格であるため簡単には打ち消せない。消すためには竜としても何をされたのかを認識し、それに合わせて力を行使する必要がある。


 リェンファの眼は【変色】のそうした質的な優位性を見抜き、透明化を見破る手段としての利用を提案した。


 本来の提案は、ウーハンの力で、変色させ聖水で湿らせた濡れ砂を竜の頭上に転移させてふりかけるというもので、シュイ本人らが直接鱗の色を変えるのは危険な賭けであったが、ウーハンがいない以上仕方ない。


 その結果、竜が幻像を作り位置を偽装しても、実体があるところの空中に色の筋や点が残った。そこから狙うべき位置がわかる。


 幻霞竜にとって幻覚や見かけの変更は己の領分。そこに驕りがあった、自分がやり返されるのは想定していなかった。


 さらにレダは吹き飛ばされながらも聖水を魔力の許す限り【再現】して作り出し、竜の魔術の阻害を試みた。防壁の術に効けば儲けもの、そうでなくとも他に竜が何らかの範囲術式を発動する可能性が高いと考えたのだ。その考えは概ね当たった。


 竜は相手に何らかの手段で実体を察知されている事と術式の損傷に気がつき対応しようとしたが、全ては一瞬の攻防。回避も、防壁の再構築も、『元素置換』の術式修復も間に合わない。防壁に空いた孔から少年の侵入を許し……。


 そして尾の付け根にあった凝核に、灰色の世界から出現したロイの一撃が突き刺さった。大量の霊力を流し込んだ赤杖の手元側が、微かに赤く光る。


『……♪……』


 杖が歓喜するかのように震え。


『AGAAAAARR!!』


 竜の体が衝撃で揺らぐ。ロイはそのまま背中を駆け上がってうなじにある最後の凝核を狙う。ついでリーとラーが霊撃を竜の脚に叩き込み注意を逸らそうとする。しかし。


『……URUAAA!!』


 魔力の大放出が起こす衝撃波によって三人とも吹き飛ばされた。『波衝陣』と呼ばれる術者中心で衝撃波を瞬間的に発生させ全方位攻撃する魔術、それがほぼ無詠唱で発現したのだ。


「がっ…!」

「かはっ」


 追い詰められた竜は、仙力使いらを力技で強引に引き剥がし、再度強固な防壁を展開しつつ、【透過】の力で地面に沈んで逃げようとする。


 竜は焦りながらも思考する。大丈夫、まだ大丈夫だ。ほんの僅かでいい、『元素置換』を再起動するための十を数えるほどの時間、それだけ稼げれば勝利は確定する……!


 そして竜は同時に屍鬼達に新たな命令を発し、最優先でこの五人を襲わせようとした。周辺全ての屍鬼が一斉に竜の方に向かって走り出す。

 



 竜の背にいたロイは上空に吹き飛ばされ、固定の力で向きを変え戻ろうとしたところで、再度防壁に殴られ、さらに上に飛ばされた。そして思いがけず何かに叩きつけられる。


「痛っ!? くそっ…!」


 上空にも竜が作った透明な防壁があったのだ。毒の術式の前に作られた防壁の名残だった。おそらく元は円柱形の防壁で、側面方向のはニンフィアに破壊されたが、上の蓋部分は残っていたらしい。


 痛みをこらえて体勢を立て直すが、砦を俯瞰できるほどの位置に飛ばされ、戻るにも時間がかかる。眼下では竜の居場所を示す色の筋が既に大地に半ば沈みかけている……!


 上の防壁を足場に、下に向かって落ちる方向に跳躍する。急げ! あと少し、あと一撃を叩き込めれば! 色が残っているうちに!


「ぐ……う……」

「足が、ちくしょう……」


 ロイ以外の皆は今の攻防で倒れていた。生きているだけでも大したことなのだ、普通なら真竜の一撃などを食らえば、最初に戦った兵士たちのように肉塊になってもおかしくない。


 【金剛(アダマス)】を持ってもいない皆が多少なりと耐えられるのは、仙術を学んだからこそ。幻妖本体の攻撃は霊鎧によってある程度緩和できるし、仙術は多少の身体強化の効果もある。


 それでもこの竜が幻妖でなく本来の真竜であったなら、今ので皆あっさりと死んでいたかもしれない。それほどに人と真竜とは存在の桁が違う。


 そして緩和したとはいえ重傷者も多い。再び立ち上がれるのは何人か……ウーハンがいないぶん、あと一手が足りない。このままでは屍鬼達にすらやられる。


 だが距離が遠すぎる。ただ落ちるのでは間に合わない。空を駆けるにもかなりの霊力を使う。そこにさっきの周囲を止める力を使えば辿り着く前に霊力が尽きかねない。


 力が必要だ。あともう少しだけでいい、力が。


『力ガ 欲シイ?』


 ……何かの声が、聞こえた。


 ああ、欲しいね!


『ジャア 私ニアナタノ……』


 そして悪魔の誘惑が、少年を。


(カラダ)ヲ クレタラ…』


 少年を……。




「やらん。むしろ返せ、よこせ」




『……エ?』


 霊気の動きを逆に。吸い取るように。


『アレ? ……ナンデ!?』


 杖がうるさい。


 この杖は霊気を通す。通すが、余計な損失があった。杖自身が少し霊気を食べていたのだ。


 この中に何かが埋め込まれている。何かが眠っている、そいつがロイの霊気を横取りしていた。


 返せ。そして……そうだ、働け。お前のその力を、俺のために使え!!



救世(メサイア): 派生・強欲(アワリティア)色欲(ルクスリア)傲慢(スペルビア)──汝は我が手、我が足、我が力──【掌握】(ドミネーション)


『ウッソォ!? コレ【掌握】!? エ、【強欲】【色欲】【傲慢】……マダアルッ!? テ、マサカ、全部!? ナンデ!? アッチョッ、ダメェッ! ソンナ、ムリヤリッ! アッ、アァッ! 私、壊レ■▽※%&!!……』


 この棒の奥にいたこいつ。こいつの力は、そうか。

 変える力か。形を、有り様を【変容】(トランスフォーム)させる力。


 ならば命じる。

 即ち、我が意の如く。

 疾く伸び、砕き、奴を打ち据えよ!

 


『……ハイ』

 


 次の瞬間。ロイの命令に従い、如意棒(・・・)が爆発的に伸び、赤い閃光となって空を走った。


 如意棒は多層防壁をそのまま破砕し、大地に突き刺さる。だが竜を示す色は既に地に沈みこみ、奴は逃げおおせ……。


 ……逃がすか!

 こいつを逃がしたら、守れない。


 ニンフィアの顔が浮かぶ。きっとこいつは逃がすと、真っ先に彼女を傷つけるはず。守れるのは俺しかいない、


 竜が企んでいる術式のことを知らずとも直感する。今だ、こいつを倒すのは今しかないと。時間が足りない? ならば。

 

 ──時よ止まれ、そして


 【救世: 派生・怠惰(アケディア)・傲慢──【天崩】(ヘブンフォール)】 


「……食らえぇっ!!」


 燻る怒りをぶつけるのはここだ!


 如意棒を一旦放す。


 ──もっていけ、今の俺の全てをくれてやる! だから。


『……!!!』


 ──逃がさん!


 棒の先端に拳を叩きつける。


 【救世: 派生・傲慢・憤怒(イラ)──天網にかからぬ物なく、裁きの届かぬ地はあらじ!──【天罰】(パニッシュメント)


 天網恢恢(てんもうかいかい)()にして失わず。


 天に(ひと)しき者の怒りから逃れえる者無く、いかなる欺瞞も回避もその力は許さない。


 拡散しないロイの全力の霊力が怒りを得てさらに増幅され、時を止める事によるエネルギーを注ぎ込まれ、一時的に人の殻を超える。


 世界の時がゆっくりとなる中、彼の全力を振り絞った一撃は如意棒を介して天より地を穿ち、莫大な霊圧の塊となって地中の竜に届いた。


『!!?!!!』


 それは、霊気を認識できるリェンファからは、天より輝く巨大な稲妻の拳が叩きつけられたかのように見えた。


「……凄い」


 神鳴る裁きの拳が、太古から蘇った幻を打ち砕く。 



 ……OOOOOAAA!!!


 必中の霊威を宿すその拳は巨大でありながら、正しく残る凝核を中心に捉え、激突と同時にそこに全霊力が収束。幻妖を構成する疑似魂魄そのものを崩壊させていく。


 そして全力であれば生命を含む万物を欺きすり抜けるはずの透過の霊威は、より上位となる神威に上書きされ吹き飛んだ。


 ……GUAA


 馬鹿な こんな こんな武器は 力は 知らな……いや そうか


 ……A


 幻妖を現界させていた奇跡が少年の一撃によって崩壊する刹那。


 竜はかつて自分であったモノのことをようやく思い出していた。忘れていた二度目の戦いに何があったのかを。



 そうだ 何故 忘れていた


 あのときも 地中 奥深く 潜んだ 我を 捉えたのは 魔弾でも 雷撃でもなく この……



 ──幻妖になり果てる者とは。幻妖に姿を盗まれた者。幻妖に殺された者。そして、龍脈かそこに近しき場で息絶えた者。


 かつての彼は、魔弾に撃たれ傷を負い、透過の力で地中深くに逃げ込んだところをかの拳に撃たれ……。


 ……



 それはあらゆるモノを殴り倒す異能。

 かつての【救世】の使い手が得意とした力。

 【天崩】を伴う【天罰】は、その拳に人の身を遥かに超える威を与え、いかなる壁でも防ぎ得ず、生も死も超えて一切を調伏する、神仏の拳。


 先代はそこまで届いていた。

 そこまでは。




 竜が断末魔の叫びをあげ、地の中で形を失う。崩壊を免れた僅かなぶんだけが白煙として地上に這い出してきて……。


「今だっ、燃やせ!!」


 【爆破】の仙力によって燃え上がる寸前。



 ──思い出したぞ 『救世の拳』よ


 ──あるいは お前なら その先に……



 力を使い切り落下していくロイの脳裏に、そんな念が届いたような気がした。


 ……その先? なんだ?

 ……あ、ダメだ、もう霊力が……




 落ちはじめたロイを見て無事な者達が慌てる。


「ロイっ!」

「そっちに落ちるわ、受け止めて! 盾!」

「畜生め、拙僧はやはり改名せねばならんというのカ!」


 悪態をつきつつエイドルフがロイの下に間に合い、そのまま潰されて頭部などを強打しながらも、何とか彼を受け止めた。


「ぐふっ! せっ、拙僧の……貴重な脳細胞が十万個は死んだ……がくっ」

「悪い……たす、かった……」


 倒れ込む彼らの上で、白煙が火花を上げて燃え上がり、跡形もなく空に溶けていく。


 ここにようやく、あり得ざる古竜との戦いは終わった。


真竜戦終了。これで五章前半が終わりました。

当初予定よりかなり五章が膨らんでしまった……。


年末までに三回ほど幕間を挟んでから

年明け後しばらくして後半を再開できればと思います。


もし何かありましたら、感想など頂けると励みになります。


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