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第44話 機甲童子と光の刃

 仙人たちは臨時教官(リュース)の遠距離霊撃に抵抗しつつ、何か持っていた袋から丸いものを取り出そうとしはじめた。そして残るフェイロンも何か筒のようなものを取り出した。


 リュースが呟いた。


「ふむ……全体的には惜しいが、さすがに最低限の基礎はできている。『霊穿』だけでは、長くは止められんか」


 霊穿……今の矢のような技か。未熟な仙力使いならともかく、名前持ちの仙人であれば、対処できなくもないのか。だが教官は、長くは止められんといいつつも、まだ充分に余力がありそうだった。


 何か考えて……そうか、さっきの武道場の上に降り注いだ大規模宝貝、あっちを警戒しているのか。あれを再起動させないことが優先で、その他は発動しても構わないと考えているのだろう。


 だからこれは単なる時間稼ぎ。何を待っているかというと………そう、そこでようやくフーシェン将軍とその側近らが追いついてきた。遅れたのは、武器と防具を用意していたからだろう。


「……改めて名乗るまでもないかもしれんが、私は天璣星(てんきせい)フーシェン・グァオ・オースティンなり。崑崙の仙人たちよ。間もなく我が手の者たちがここを囲む。貴様等に逃げ場はない、降伏せよ。さすれば命は私の名において保証しよう」

「そして仙力の実験台になれと?」

「そうなるかどうかは貴様等の態度次第だな」

「謹んでお断りする」

「ならば是非に及ばず、武を以て貴様等を捕縛する。そして命の保障はできん」

 

 ロイが見るに、フェイロンの目線は……これは仕方ない、やるしかない。


「……ウーハン、頼む」

「よっしゃ」


 ドゴォッ!


「……ありがと、な」


 背中に膝蹴り……無駄に力が籠もった一撃なんだが。俺は何か恨みを買っていただろうか……? まあいい、それで霊力が励起し、感覚が鋭くなる。


 ウーハン一人分ではそこそこというところだが、仕方ない。予め皆に殴ってもらってから出れば良かったが……急ぎだったし、あの場には仲間たち以外もいたので躊躇してしまったのだ。


 そうして将軍の到着と共にリュースは霊穿の頻度を抑え始め、ついに仙人たちとの均衡が崩れる。


「舐めるなよ、魔導師ども! 覚悟はいいな!?」


 魔導師らは、さっき例の『崩仙』の術を万卒長の背中越しに放っていた。……案の定仙人たちには効かず、却って警戒させてしまったようだ。


 『崩仙』が効かないと見るや、ハンセル導師らは周辺の空間に仰々しく多数の呪符を浮遊させ、怒りの表情で三人がかりで何かの呪文を唱えはじめていた。このままでは終われないとの意地によるものだろう。


 さすがに目立ち過ぎのそれを脅威と見たか、まずフェイロンがかき消え……。


 ガキィン!


「なっ……!」

「ちっ……貴様か」


 呪符が余波で吹き飛ばされ、ひらひらと落下する。


 導師の首が飛ぶ寸前で、ロイの剣が間に合った。ロイが持ってきていたのは先ほど使った訓練用の剣。切れ味などなく重いが、丈夫さは折り紙付きの代物だ。対するフェイロンが振るっていたのは……。


「宝貝『禽嘴(きんし)連刃鞭(れんじんべん)』」


 それは、一見大剣のように見えた。何故か、明らかに入っていたらしき筒よりも太く大きい剣身には、蛇の腹がそうであるような丸みを帯びた横筋が多数刻まれていた。


 ロイもあの後調べてはいた。それによると、『闘仙』には、間合いを自在にする伸縮する鞭にして剣なる宝貝があるという。


 あの蛇腹のところから分かれ伸びて鞭に変じ……それ自身が生きているかのように凄まじい速さで蠢き、さらにしなりと共に風の刃すら打ち出せる高度な武装であるらしい。


 それと彼の移動の仙力が組み合わさった攻撃はおよそ予測不可能。その力をもって彼は何年もの間西方方面軍を翻弄してきている。


「……いいだろう。この期に及んでは、もはや貴様を子供とは思わん。覚悟しろ」


 フェイロンはロイを相手と定めたようだ。あの時痛めたはずの腕はもう治っているように見える。前回より強敵なのは間違いない。


 しかしハンセル導師を守ったにも関わらず、能力が上がる気配がない。自分の異能は導師を味方とみなしていないのか、それともこの人は感謝の心を持たない人物なのか……どっちにしてもダメか。


「導師殿、例えいかに無双の切り札であろうと、あやつは速さ自慢の仙人なれば、長い術式は不利です。今は御身を守られる事にご集中ください」

「……すまんな」


 あ、少し霊力上がった。どうやら彼に感謝されたらしい。唱えていたのが本当に無双の切り札かどうかは知ったことではないが、一応そういうことにしておく。


 そうして、ロイとウーハン、そしてフェイロンは睨み合いながら足場のよい所まで少しずつ移動し、皆から離れていく。




 一方、ランドー達も次の手を放つ。


「宝貝『機甲(きこう)指徳童子(しとくどうじ)』」


 リュースに邪魔されながらもランドーが巨大な鏡を一瞬だけ成立させることに成功し、その間にスンウェンが何かを呼び出す。


 ……それは、身長がロイの五割増しくらいある、鎧兜姿に三又の槍と車輪のような盾を持つ鋼の人形だった。なぜか黄色い鉢巻きをしている。


 人形が仙人たちの前に素早く飛び出し守りを固める。かなりの重さなのか、着地の際に鈍い地響きがした。


 どうやら、鋼鉄製の戦闘用ゴーレムのようだ。帝国ではこういう戦闘用ゴーレムは魔導聖鎧と呼ばれていて、かつてはもう少し大きいものが戦場の切り札だった。


 ただ魔導聖鎧は高度な魔術制御を行える使い手が近くにいないと素早く動けない代物だった。魔術衰退以後は長時間実用的な速さで動かせる使い手が殆どおらず、後方で荷物持ちになっているらしい。


 しかしこのナントカ童子の動きは人間と大差なそうだ……つまりは小型とはいえ往年の魔導聖鎧に匹敵する。仙人なりに何らかの改良があるのだろうか。


「黄巾力士……じゃ、ない? (ウー)の仕業か。てめえこれ仙道じゃなく密教じゃねえか、黄巾巻いてりゃいいってもんじゃねえぞ」


──────────────────


 こほっ


「なんじゃウーダオ、風邪か?」

「いや、そのようなことは……うん?」

「?」

「……迂闊であった」

「どうした」

「まずいぞ、ユンイン。ちと困った事になっておる」

「困った事だと」

「帝都よ。先程、儂の人形が一つ呼ばれたようじゃ」

「?? 蔵が……これは……天睨鏡もか!? まさか、あやつら!」


──────────────────


 リュースが意味不明な事を呆れながら呟く前で、フーシェン将軍と側近が童子に向け武器を構える。


「……くっ、そちらだけに仕事はさせん! 仙人どもめ、我らの力思い知るがいい!」


 万卒長も横に並んで長剣を構えた。鞘は儀礼的なゴテゴテしたものだったが、剣身のほうは使い込んだ厚みのある実戦的な代物だ。構え方も見事なものであり、かなりの実力があるのは間違いな……。


 ピカッ!


「起動:『倶利伽羅(くりから)焔矛(えんぼう)』」

「がっ!?」

「アラティヤ先ぱっ……万卒長!?」

「……ごふっ………」


 いきなり童子が目から赤い光線を放ち、それが万卒長の胸を貫通、彼は昏倒した。死んだかどうかはロイには分からないが少なくとも重傷なのは間違いなさそうだ。


(何しに来たんですか、ほんと……)


 ……そもいくら腕に覚えがあっても、鎧すらつけていない状態で大物が前に出ないで欲しい。将軍のほうも大物だが、こっちは一応防具を付けているので、多少マシか。五十歩百歩だけど。


「ああもう、でかい口叩いてそれかよ……仕方ない」


 リュースが倒れた万卒長を手当てしようとする。そこにさらに童子が首を回し薙ぎ払うように光線を追撃するが、彼らの前に白い靄のようなものが現れてそれを散らした。前に教えてもらった光線防御の術式だ。


 光線のうち靄に当たらなかった端の部分はそのまま後ろに貫通し、魔導師と西方兵らの横のほうの地面を灼く。一拍遅れて土が少し溶解し軽い爆発と湯気が吹き上がった。駄目だあれ、まともに食らったら鎧付けててもヤバい。


 それを見た導師らは、悲鳴を上げ脱兎の如く逃げて……結果的にこっちに近付いてきた。まさか恐怖のあまり上司たち見捨てた?


 ……まあいい、いちいち気にしていられない。ウーハンに背中を任せ、ロイはフェイロンとの睨み合う。霊気の動きを見極め、瞬間で対応しないといけない。その前に……薄く霊気を伸ばして、そして。


「はっ!」

「むうっ!?」


 霊穿……!

 よし。リュースのそれよりはだいぶ弱いが、初めて自力だけで霊気を飛ばすことに成功する。もちろんフェイロンには効かないが、意識を逸らすくらいはできそうだ。


「小癪。既にそれくらいは使えるか。やはりこのまま放ってはおけねえな」

「どうかな、今あんたたちがやってるのは、藪蛇つつきだぜ」

「……強者に属する奴に、この感覚はわからんねえよ。前線に出ない老師たちにもだ」


 フェイロンが、連刃鞭を振りかぶり【妖跳】が発動する。次の瞬間、左側面、ロイとウーハンの間合いの外から見えざる風の刃が襲いかかる。まさしく間一髪で髪を揺らされながら避けた瞬間に、今度は後ろから連刃鞭が唸りを上げる。


「おおおっ!」

「ふんっ!」


 その攻撃は読んでいた。だがかわすには速すぎる。ゆえに、仙力による強化を腕に集中させ受け止める…!


「くっ…!」


 腕当では止めきれず、肉が斬られ、尺骨で受け止めることになった。だが骨を傷つけるには至らない。傷を受けた事で得た霊力を使って超加速し、体当たりする……誰もいない前方へ!


「……っ!」


 ロイの前側に跳んで、トドメを刺そうとしたフェイロンは、それを読んでいたロイの体当たりとかち上げをうけ吹き飛ばされる。


 そのフェイロンの背後にウーハンが転移し前蹴りを放つが……当たる寸前にフェイロンの姿はかき消え、少し離れたところに出現。フェイロンは折れた歯を吐き捨て、口から滴る血を舐める。


「くそが……やっぱりただの強化じゃねえな、なんなんだ貴様の仙力は…」


 剣がくい込んだ瞬間にロイの仙力が跳ね上がり、そこから骨を断つどころか弾かれた。さらにその後の反撃。


 またも出現場所を読まれ、宝貝の衣装に覆われていない顎のところを狙われた。フェイロンは一層ロイを警戒する。未知の仙力に加え、あの一瞬でそこまでやる技量は単純に脅威だ。


 それに霊気の遠当て……崑崙で擲功(てっこう)術と呼ばれる技は、フェイロンも使えないことはないが余り鍛えていない。宝貝があればそんな難易度が高いのに非効率なやり方など要らないと思ってきたからだが……。


 しかしあの禍津国の男は、その非効率なはずのやり方でこちらの仙力を抑え込む技を見せた。さらに目の前の少年は奴の指導のせいか、その技すら身につけはじめ、急速に成長しつつある。


 今叩かねば、こいつは必ずや崑崙の脅威になる……! 闘仙と呼ばれる誇りに賭けて、少年を倒さねばと信じた。


 一方、ロイは斬られた腕に軽く治癒魔術を使う。普段ならロイの魔術の才能では血止めすらできるかどうかだが、仙力が励起している今では、応急処置くらいにはなる。使っている間も目はフェイロンを追い、隙を見せない。


 その間も霊操で霊気を回す。教官に教えてもらった呼吸法を用いて効率を高める。エイドルフの超回復には到底及ばずとも、そうすることで実用的な回復速度になる。


 周りの兵と魔導師たちは何もできなかった。ロイとフェイロン、二人ともが速すぎるのだ。ウーハンもまともにはついていけておらず、そのため転移をもってしても一拍の遅れがあり、フェイロンに当てるに至らない。


 フェイロンも伊達に闘仙と呼ばれた男ではない。この場で彼についていける速さがあるのは、ロイとリュースだけであり、他の者では将軍ですら厳しい。まして今のフェイロンは、宝貝の衣装によって大幅に能力が上がっているのだ。


 闘仙と、救世の力に目覚め始めた少年は再び睨み合う。ウーハンがロイの背後につくが、彼としては歯がゆいものがあった。


 今の自分では、転移の仙力をもってしてもこの二人に届かないのでは……どうすればいいか、ウーハンもまた必死で考え始めていた。



──────────────────



 ロイとウーハンがフェイロンに対する一方で、フーシェンと彼の護衛担当の側近、フォンヤァ百卒長の2人が機甲童子と相対する。


 フーシェンは、瞬発力や速さでは仙力を励起させたロイやフェイロンより少し劣る。だが戦えばそう簡単に負けるものではない。


 膂力と体力(スタミナ)では二人以上であるし、彼の武人としての真骨頂は、毎日の愚直な鍛錬による極めて正確で威に優れた槍技にある。一撃でも当てられれば、それが致命傷たりえる。


 それに加え、奥の手……仙力を持つ彼は、七剣星の称号に恥じない武人であった。ここ数年、政務に追われ鍛錬の時間が減っていたのだが、この訓練の1カ月はむしろ鍛え直す良い機会となっていた。


「魔導聖鎧の類……しかも先ほどの光線といい、手強いな……」


 往年の魔導聖鎧は、人の三倍ほどはある巨人が主流であり、一騎当千と言われ戦場の切り札の一つであった。しかし目の前の童子は大きさは人間並であり、そこまで圧倒的な存在ではなさそうだ。


 それでも人並みの速さで動く鋼の塊というだけで脅威、さらに奇怪な術も使う。本来一人や二人で勝てる相手ではない。


 ……光線をまともに食らったアラティヤはリュースのほうが手当てしている。

 

「……ひゅー………ひゅー………」


 見たところアラティヤは片肺を完全にやられている。普通ならもう死んでいるだろう。リュースの治癒術のおかげでギリギリ生きてはいるが、虫の息。生き延びられるかどうかは分からない。


 士官学校時代からやたらフーシェンを意識して絡んできた先輩だったが……色々迷惑も受けたが……武人としては優秀だし、このまま死なれるのも目覚めが悪い。さっさと目の前の敵を片付け、例え無駄でも少しでも治療してやる必要がある。


 フーシェンの槍は身分相応の高級品、様々な魔術も付与され貫通力と剛性に優れた業物だ。魔力を込めれば並みの鎧や盾なら簡単に貫く威力を持つ。しかし、流石に人間大ほどの鋼の躯体を穿つのは無理だろう。


 本来ならば対魔導聖鎧の定石、つまり操り手を倒すのが先なのだろうが、それをやるには人数が足りない。ならば……。


「起動:『倶利伽羅焔矛』」 


 今度は発動を察知し、フォンヤァがフーシェンの前で盾を構え受け止めるが、鉄でなく革製の盾であったため、数瞬で盾がもたなくなり、放り捨てることに。


 それでも部下が稼いだ僅かな時間を元に、フーシェンは童子に向かって槍を放つ。貫通の魔術を起動させつつ狙うは膝、人力で破壊できるのはやはり関節部しかない。

 

 ブンッ! ゴッ!


 鈍い風切り音と共に、童子の関節が人間であれば有り得ない曲がり方をして、盾が槍に間に合う。速度でやや劣るところを可動性で補っているようだ。しかも盾も並みの代物ではないのか、表面しか削れていない。


 ブォォン!


 そうして童子の右手首がやはり人では有り得ない回転を見せ、三又槍が円弧の残像を描きつつフーシェンに襲いかかるも、フーシェンは槍を合わせ何とかいなした。


「くっ…」


 しかし槍から思った以上に凄まじい重みを感じ取り、フーシェンは顔をしかめた。総鉄製の巨大な三又槍は、それだけで人間一人ぶんほどの重さがありそうだ。少し間違えただけでこちらは鎧ごと潰されて終わるだろう。


 何合か槍を合わせるが、機甲童子の圧は凄まじく、徐々に後ろに下がらざるを得ず、腕が痺れ始める。そも普通の技量なら二合と保つまい、それほどの重量差がある。耐えられるフーシェンも尋常の武人ではないのだ。


 とはいえ消耗も激しい、長くはもたない。こうなれば、一か八かやるしかない。三又槍をもつ童子の右肘のほうに狙いを定め……。


「起動:『降魔(ごうま)羂索(けんさく)』」


 相手に機先を制された。童子の盾の中心から錘のついた縄が打ち出され、フーシェンに巻きつこうとする。ただの縄ではなく魔術か仙力かで軌道制御されているようで、避けたはずが方向を変え槍に絡みつこうと……。


「ちぃっ!」


 フーシェンは槍を振るい縄を撃墜する。注意が一瞬逸れたその時、仙人たちから丸い球のようなものが複数放り投げられ、フーシェンとフォンヤァの前で爆発した。

 

「……かはっ!?」


 赤い煙幕が広がる。それは、香辛料やスンウェンの力で作られた毒物を撒き散らす仙丹の一種だった。機甲童子には影響なく、相対する人間にだけ効く。視界を奪い、呼吸を苦しめ、感覚を麻痺させる。


 ごおっ!


 後ろにいたリュースがとっさに風の魔術を放ったため、2人が煙幕に(さら)されたのはほんの一瞬だけで済んだ。だがそれでも目と喉にひりつく痛みが走り、動きが鈍る。


 そこに先ほどの縄が蛇のように飛びついてきて、フーシェンの両腕に絡みつき、動きを封じた。


「閣下! ……くうっ!」


 フォンヤァが苦痛の中駆けつけようとするが、童子の三又槍に払われ、骨が砕ける鈍い音と共に弾き飛ばされた。リュースのほうにはランドーから仙丹が投げつけられ、彼がそれに対処している間に……。


 スンウェンの両手が印を結ぶ。

 機甲童子の盾の表面に刻まれた輪宝の模様が回転し、封じられた力が起動する。それは童子の作り手のウーダオが仙力と魔術を組み合わせて再現した太古の術式の一つ。


南莫(ノウマク) 薩縛(サラバ) 坦他蘗帝幣(タタギャテイビャク) 薩縛目(サラバボッ)契幣(ケイビャク)……』


 奇怪な呪文のような文字列と紋様が浮かび上がり、童子の胸部が青白く輝く。そしてフーシェンのほうに向かって。


「起動:『不動明王(ふどうみょうおう)火界咒(かかいしゅ)』」


 轟ッ!!


 人体を瞬時に炎上させうるほどの灼熱の炎塊が胸の部分から生み出された。さらに先ほどの仙丹には可燃物質も含まれていて、周辺に散らばったそれらにも引火。炎は爆発的な大波に変ずる。


 童子から吹き出し、さらに地面からも燃え上がって迫り来る業火の波。


 得意の槍を封じられ、視界もろくにないところに襲いかかる絶体絶命の危機に対し、フーシェンは皇帝より授けられた切り札を繰り出す。


「おおおおおっ!!」


『天神器・イルダーナハ・定常駆動・構成『斬甲怜剣(フラガラッハ)』』


「なに!?」


 それを目にしたランドーが驚愕に目を剥いた瞬間。


 ──閃光が走る。


 フーシェンの三本目の腕(・・・・・)に握られた神器(・・)の光刃が炎よりも速く伸び、いかなる鎧も断ち切ると詠われる伝説を再現。機甲童子を炎波ごと断ち割った。

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