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第33話 特別講座その伍 空の果ての座

「仙力というものは、霊輪の開く数が増えて覚醒段階が上がると最初の頃とは思いもつかない、とんでもないこともできるようになるやつがある。お前の力もそっち系だ」

「とんでもない、ですか」


 殴られて強くなる時点でとんでもないかもしれないが、これがどう変化するのだろう?


「そうだ。仙力というのは極めていくにつれ、より強く世界を曲げる力を得られる。しかし、普通の人間では能力の向上に伴って発生する霊力消費に耐えられん。そこが世界の力を借りる魔術との大きな違いだ。同じ現象を起こすために必要な力は、仙力のほうが多いからな」

「そうなんですか?」

「そうだ。だから仙力は、結果的に、覚醒段階が高くなろうとも魔術に比べ小規模になりがちだ。修行を進めていくと質的には向上しても量的にはそこまで増えん」

「確かに仙力は規模では魔術より小さいのが多いですね」

「だがそれは命数……霊力が足りていないだけだ。ではどうするか。回答の一つとしては人間を辞めることだ。だが、たまに辞めずとも一時的にそこにたどり着ける力もある」

「俺のもそれだと?」

「精進しろ、それは伊達に救世などと名付けられたわけじゃない。文字通り、世を救いうる力だ」

「……精進、といってもどうすればいいんですかね」

「基本は地道な霊操と仙力行使を、日々繰り返す事による霊気の精度と密度の向上だ。それ以上は自分で見いだせ。ただ、お前の場合一番重要なのは何かはもう分かっているはずだ。お前のそれは利他であり、他人を必要とする要他の力でもある」


 そして、ニンフィアが何故かさっきから挙動不審になっていた。

 

「なぐられる……カコ……エイゾウ……まさか?………」

「それで、問題のそちらのほうだが」

「っ! ……すいません、ワタシ?」

「迂闊に霊撃や仙力、それも魂の奥深くに干渉するものをあんたに仕掛けるのは自殺……いや心中行為だ。中身に触れた瞬間、暴走しかねんからな」

「……スイマセン、分からナイまだ、難シイ単語。ダカラ、古ダイ語で、お願いしマス」


『分かった』

『ええと……どういうこと?』

『あんたの力は調べたところ、なかなか面倒なことになっている。例えばあんたが使っている空間をえぐり取る力だが、あれは【憤怒(ラース)】より【境界(バウンダリ)】という力が主体だ。本来破壊のためではなくどちらかといえば防御よりの特殊な結界を作る力が、【憤怒】と併用されることで攻撃技に変質し、指定範囲内を消滅させる力になっているんだ』

『え……そうなの?』

『つまるところ、あんたが力の自覚と制御が出来ていないことが主因だ。あんたは自覚がないだろうが、この二つ以外にも力をもっている。それらは【境界】で封じられていて、迂闊にあんたを調べたり刺激しようとするとそれが吹き出す恐れがある』

『……ええ……』

『とりあえずそれらが吹き出さないように慎重に霊気を循環できるようにするから、しばらくは特別メニューになる。いずれあんたは、自分の中身と向き合うことになるだろう。一応いっておくが、あんた本来の力はその封じられているほうだ。【境界】と【憤怒】は、あんたの親達がそれを『治療』しようとした結果、封じる代わりに得てしまったものだ』

『……もしかして、本来の力のほうがこれより危ない?』

『可能性は否定しない』

『……せめて、その【境界】とかいうのを、みんなを守る壁として使うことは?』

『できる可能性はあるが、それは属人的なものだ。分かる人間は(・・・)いない。自分で見いだすしかない。色々試してみろ、その際何か怒りを持つと【憤怒】で歪むだろうから怒りを得ないことだ』

『……そう。あと、あの……』

『なんだ?』

『シャノンさんって、知っている?』

『……あんたが知っているとしたら、魔大公シャノン家の初代かな?』

『そう……その人の力、もしかして』

『そうだな。伝わってる限りでは、そこの彼と同じだ』

『そうなんだ……もしかして、子孫?』

『仙力持ちの子孫が仙力に目覚める場合、先祖と似た力になる確率が高い傾向はあるらしいぞ』


 臨時教官(リュース)は内心で考える。そう、確率は高い。高いが……部分的に同じだったり似た力ならともかく、魂の組み合わせを含め全く同じになる確率は、天文学的なそれだ。

 

 特に【救世(メサイア)】などは、極めて微妙なバランスの魂にしか宿り得ない力であるらしい。その使い手が過去6000年以上いなかった程度には。……そしてそこまで似ているのであれば、あるいは、ロイはリュースと同じく───。


 そういえば。あいつが亡くなる前に何か言っていたな、なんだったか……。確か、アーサー兄が……。


『……そっか。まあちょっと会ったことあるくらいで、知り合いってほどじゃなかったけれど……縁が繋がってるなら面白いかな』


(……フレディ、お前この娘に自己紹介しなかったのか……。というかティナよ、お前も娘に自分の素性話さずに逝ったのかよ……こいつ叔父のことを赤の他人だと思ってるぞ。教授も何やってたんだほんとに)


 そうして通常版の施術が始まったが、最初に選ばれた10人ほどは、平均すると皆、2、3日といったところで、霊気の認識と操作が少しできるようになった。


 そして今度はそのできるようになった者達が、やり方を教わりながら、次の連中に施術していく。そうして、霊気を感じ取る感覚『霊覚』の初歩、霊気の操作『霊操』の初歩と、それの目覚めさせ方も学習していった。


 ニンフィアも特別なやり方で、霊気を循環させ、一週間近くかかったものの、できるようになった。


 そしてロイについては、結果的に霊操を覚えるのは一番最後になった。霊覚のほうは元々できつつあったが、本人の霊気が動かすことがいっこうにできない頑固さだったため「やはりお前の能力の性質上こうしたほうがいいはずだ」ということになり……。


 ロイは思う。

 どうしてこうなった。


「……それじゃウーハンとエイドルフとレダか、お前ら霊撃を今できる全力で打ち込め、制御も遠慮もいらん。それに俺が上乗せするから」

「よし待ちかねたぞ。友よ、俺のこの新しい力が貴様の息の根を止める。安らかに眠れ」

「止めるな!」

「往生せいやああああ!」


 思いっきり助走して跳び蹴りをしてきたので受け止めようとしたらその瞬間に【転移】……背後に突如出現され、かわしきれず背中に食らう。


「………ぐはぁっ!」


 仙力なかったら普通に大怪我案件だぞっ!?

 くそ、そのうちお前のも気配読み取って避けられるようになってやる……!


「今こそ非モテの恨みを込めル!」

「ま、待て、誤解だ。話せば分かる。まだモテてはいない……これからだ」


 そう、そのために頑張ってるんだって、これほんと。そして真の英雄に俺はなる! なんてな。


「……何という妄言。我これより修羅に入らんとス」


 え? なんか口調はともかく表情が真剣すぎるんだけど?


「……おお、拙僧は頓悟いたした。これなるは今や少女たちの想いから目を背け純情を弄ぶ外道、されば情けを捨てかつての友を滅するものナリ」(ギリギリギリ)

「ちょっ、わけ分からんことを、いや待て、だから話せば分かる。やめろ! 自分に【賦活】が勝手に発動するほど力を込めんじゃねぇ!」

「問答無用!」

「あぎゃああああーっ!?」

「ウーハン、さっきの借りるよ」

「レダ、お前もかはあああーっ!!」

「あ、わたしも参加させて?」

「私もスル、協力!」

「……うわやめっ」


 痛ええええ! ……体の中にみんなからの霊力が入ってきたのは分かる、分かるが滞留していて動かし方が分からない、苦しい、今の器では破裂しそう……。


「よし覚悟はいいな。それを使って果てまで打ち上げて(・・・・・)やるから、ちょっと座まで逝ってこい」


 額を指で突かれ、霊輪が弾けた。


「ひでぶっ」


 体が歪んで破裂した、そう錯覚した。


 昇る。

 昇りゆく自分。

 肉の殻を脱ぎ捨てて、空に昇る。

 空の果てを越え、宙に至る。


 あ あああ ああ


 圧倒的な開放感。

 そうか、そうだったのか。

 刻が見える。


(うわちょっとこれヤバくね?)

(表情が完全に逝っちゃってるよね)

(笑顔で白目怖っ)


 遙か彼方に太陽の輝き。

 目前には巨大な球。

 遥かな星空(そら)のもと、海碧(コバルト)に光る球が……。


 その球を背景に、半透明の神殿のようななにかが浮かんでいる。壁がなく星ぞらがすどうしの、変なたてもの。


 そこには黒い剣をせおった、半とう明の銀ぱつの女がいた。女は奇みょうな無すうの画めんときかい、本だなにかこまれていて……。


 「……あれ? 確かあなた、トリーニのやつが言ってた……んー? まだ自力で神座(こんなところ)に来れる覚醒段階じゃないでしょ?」


 なにか言っている よくわからない

 ひかるたまのなかを きんいろのながれが めぐって


 「あー。リュースの仕業か、わざとこっちに送ったわね? 全く、いくら硬くてパス通すのが難しいからって……下手すると虚空に溶けちゃうでしょ、どっちが博打(ばくち)打ちなんだか……」


 りゅうみゃく りゅうの みゃくどう……

 いのち はてる ところ 


 (あれ? 息とまったんだけど?)

 (ん!? まちがったかな……)

 (え? ほんとに往生した?)

 (拙僧が殺めたのダ)

 (待ってよ、起きなさいよバカ!)(パンッ! パンッ!)

 (ダメ、帰ってキテ、ロイ!)(ガクガク) 


 ああ りぇんふぁ にんふぃあ おきる かえ る 


 「仕方ないなー、もう。いいから早く自分の体に戻りなさい。その前に……っと。救世の魂魄樹(セフィロト)……うんやっぱり私には取り込めないな。……はい、パスは通してあげたわ」


 あ ながれてる おれの中で、命が


 「私はここしばらく外宇宙の稀神(アウターゴッド)ども相手にしてて忙しいの。あなたもこれから色々大変だけど、できるだけ自力で頑張りなさいね、救世主の卵さん」


  …………


 気がついたら涙目のニンフィアにつかまれて「Don't(置いて) leave(いかな) me!(いで)」とよく分からない言葉と共に頭をガクガクと揺らされていた。同じく半泣きのリェンファ。心配かけたのか……ごめんな……。なんかいてえ……頬に平手の跡があるんだけど……。


 何か変な青い球をみたような気がする、誰かいたような……よく思い出せない。とりあえずそんな臨死体験を経て、ようやく霊気を動かす感覚が分かるようになった。


 そして。分かってたけど殴り倒す異能だと思っていたら違ったようです。むしろ殴られるのが一番速かった。しかも味方から。


「……どうしてこうなった?」

12/29 表現微修正

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