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第171話 幕間 嗚呼、されど(2/3)


〈降魔霊装封印解放──第参式『神剣( アッキペ・グラディ)抜鞘』(ウム・サンクトゥム )


 グランニュエル=アリギエーリの合わさった掌が離れるとともに、左の手のひらから光り輝く剣がその姿を現す。その剣は見るからに美しく、誰もがこれこそは聖なる力の顕現なりと得心しそうな神々しさと荘厳さに満ちていた。


 ブンッ


 揺らめく光の剣が実体の剣と合一し、七色の燐光を帯びる。片手剣程度の大きさだった剣が、十字の柄を持つ身長ほどの大剣に変じる。その大剣を天使と化した騎士は右手のみで操り、聖なる盾を左手に構える。


 白翼がはためき、騎士の体が少し大地から離れて浮かぶ。


 ──聖なるかな聖なるかな

  ──災いなるかな災いなるかな


 魔法陣……聖山では聖方陣と呼ぶ金色の文字列と図表が剣の周りを螺旋に巡り、聖句を示す。


 ──これなる剣は()天の火(ばし)なり

  ──主は聖なる火をもって汝の罪を許したもう


 ──嗚呼、されど、汝自身が悪なるならば

  ──この火こそは汝の災いならん


 ──主は汝に剣を送ると定められた

  ──ゆえに汝はこの火に試されん


 ──これ汝は主の呼び掛けに応えず

  ──主の御声を聴かず

   ──主の前に悪行を(さら)

    ──主の(いと)われることを為すが故なり


 ──悪とは善の欠ける事なり

  ──無知とは善を知らざる事なり

   ──罪とは善に対し(あやま)つことなり


 ──嗚呼、されど、汝悔い改めるならば

  ──主は無知と罪なる者を赦したもう


 ──悔い改めてなお赦されざるならば

  ──それは信仰の寸毫(わずか)もあらざるが故なり


 ──信仰の寸毫もあらざる者とならん故は

  ──それは生の虚妄(きょもう)に充ちるが故なり


 ──虚妄にて自他と神を(たばか)らんとするもの

  ──それこそが善無きもの、即ち悪である


 ──天よ地よ、聖霊たちよ、刮目(かつもく)せよ

  ──我ここに主に代わりて悪を(ちゅう)せん


 ──主よ、憐れみたまえ(キリエ・エレイソン)、救世主よ憐れみたまえ

  ──不浄なりし者に鉄槌を、不義なるものに灼刃を



『神の御剣よ、元の姿に』



 そして掲げられた大上段の構えと共に、剣は天上に向かって伸び、長さ十数シャルク(m)ほどの巨剣と化す。それはまさに地上に現れた日輪の輝き、魔を断つ光ならん……。


(ずる)いわ、天使のこれ、以前よりそれっぽく格好良くなってますよね? ハーミーズもいい仕事してますわ、私もああいう封印解放機能実装したほうがいいかしら?』


「いえ格好よくないと愚考いたしますし、正直、御身にこれ以上は必要ないかと存じます」


『そうかしら、ちょっとこの黒い体にも飽きてきたところなの。青肌の三面六臂(ろっぴ)の鬼神あたりどうかしら? いいと思いませんか?』


「……この天使に触発されたのなら、もう少しそちらに寄せられるべきかと」


『いかにもな山羊角の女悪魔モードはもう100年くらい前にやりましたし』


〈──Vade retro satana. Ipse venena bibas──悪魔よ退け。毒を()みて倒れよ。神剣『グランニュエル』凌駕展開──祓魔刃(ラーミナ・ルキス)


 呑気に語り合う二人に向かって天空より光り輝く巨大な『神剣』が振り下ろされる。


 それは亜神の力を載せた対魔霊装であり、神聖さと裏腹の破壊そのものであった。


『我は汝らを断罪せん!』


 〈祓魔刃(ラーミナ・ルキス)──灼断形態(ディヴィドア)


 その『神剣』は城壁すら切り裂き、焼き払い、百の兵を一振りにて灰燼に帰さしめる。その暴威は平地に巨大な斬撃痕を刻み、底も見えないほどの断崖や溶岩沼を作り出す。


 そしてその刃は仰ぎ見るほど巨大にも関わらず、人の手にあるままに神速にて切り返すことが可能だ。


 長さもさらに上がある。その気になれば今のさらに十倍以上、つまりは百シャルク(m)以上にまで一瞬で変化させることもできる。


 つまりは剣というより、輝く熱塊そのものと言ってよい。これこそは御使いの閃光、神威の具現なり。


 この神剣とそれを振るう『使徒』こそ、数千の軍すら瞬く間に薙ぎ払い、焼き尽くし壊滅させうる、聖山アナトの切り札の一つ。  


 さらに塊山竜の加護を得た『神剣』は、その物理的破壊以上に強大な『破魔』の力をも持つ。それは魔の島に由来する者に対する特効であり、霊的な防御を食い破る執拗なる積年の呪詛の結晶でもある。


 ──加えてこの攻撃には、宿主である聖騎士アリギエーリの持つ【霊枷】( インカンバー )の『祝福(ブレス)』も載っている。『祝福』とは、仙力の、グレオ聖教での呼び名だ。


 そして【霊枷】は、己以外の者を弱体化する空間を作り出す『祝福』だ。


 彼の周辺にいる者は、敵味方関係なく、仙力や魔術、さらには肉体的動作に必要なエネルギーが何倍もに跳ね上がる。硬度や防御力なども低下する。


 そのため魔術や仙力は発動しないか、効果が低下し、攻撃や回避はスローモーションと化し、防御力も激減してしまう。遠距離からの矢や魔術も彼の間合い内に至ると力を失い、彼を傷つけることはない。


 彼に敵する者、いや彼に近づく者は敵も味方も悉く、総合的な戦闘力が元の一割、いやそれ以下に劣化する。


 この恐るべき弱体結界の『祝福』のために、アリギエーリは当代の聖騎士でも指折りの実力者と目されている。そしてその力を生かすために単独行動が多い。


 今回もそうだ。通常、聖騎士の遠征には十数人の部下や従者が同行するが、アリギエーリは彼らを近くの都市に待機させて単身でここにやってきた。己の技に巻き込まないために。


 ただでさえな強力な『神剣』が、この【霊枷】の効果を得たうえで炸裂するのだ。その威力は凶悪というほかない。これをかわせるもの、防げるものが、現世にどれだけいようか?


 相手がトリーニたちのような守護者の分体であったとしても、あるいは護法騎士であったとしても、少なくとも無傷で済むようなことはない。


「…?…!…」


 それ見たことか。神の刃に対処せんとする長耳の女が、油断していたのだろう、己の動きが酷く鈍いことに驚愕している。


「…!…」

『無駄だ』


 古参の魔人なら天使と神剣のことはある程度知っているだろうが、【霊枷】はアリギエーリ個人の異能だ。これは想定外のはず、この隙を逃してはならない。防御が整う前に先制の一撃を──



  ……KIHN!!



『はい♪』

  

『!?』


 断罪の巨刃は、影の女の触手一本に、完璧に受け止められた。






 フワッ……


 鋭く澄んだ音を立てて光剣は停止し、纏っていたエネルギーは霧散した。大地を切り裂くどころか、地表にヒビが走ることすらない。


 有り得ない。【霊枷】により性能が低下するのは生物だけにあらず、無生物の強度も低下する。大地もまた、神剣が伴う風圧だけでえぐれるくらいに脆くなる。


 だが、そんな様子が全くない。これでは【霊枷】と神剣の効果が余波すらも含め完全に消されたかのよう──



『甘い甘い、砂糖よりも蜂蜜よりも、若人の夢見る明日よりも甘すぎます』



(……!……)


 ──「天使」がアリギエーリに忠告する。

 魔ノタワゴトニ耳ヲ貸シテハナラナイ


 頷き、一瞬の困惑を即座に意志の力で抑えつけ、アリギエーリは次の攻撃を放つ。


 シュッ!!


 天使降臨状態の聖騎士は飛翔しながら瞬間移動と見紛う超高速での三次元空中機動を行うことができる、それを用いて一瞬で間合いを制御し……。


 〈祓魔刃(ラーミナ・ルキス)──聖絶形態(アナテマ)


 再び神剣が光を纏い巨大化する。先ほどより更に強く、大きく、太く。


 それは刃ではなかった。光の(オール)であった。光刃と呼ぶには極太過ぎた。ゆえに避けるなど、受け止めるなど不可能。これは相手を切断するのでなく、全てを焼き尽くし、約束された供物を天に捧げるための絶技──


 ヴンッ


 今度は止められる事はなかった。光塊は魔女たちを確実に捉えて。


『♪』


 そのまま、通り過ぎた。相手に一切の変化なく、何も手応えなくすり抜けた。周りの大地も変化がない、風圧も、空気が焦げる香りすらない。



『何故だ』 


 

 神剣に異常が?  ──いや、無い。正常に起動している。


 魔による幻覚か? ──いや、違う。複数の異なる感覚と計器が全て現実だと示している。


 何が起こっている? この女は何をした?



 ──『天使』には恐怖を感じる機能はない。それを降ろした聖騎士も恐怖は感じない。だが恐怖に溺れずとも、最低限の自己保存本能は有している。


『本当に甘い。その甘さに免じ、神を信ずるあなた方にも知恵(だらく)果実(りんご)を授けましょう。未熟な青果をもぎ取って、刻んで煮詰めて固めて包み、青い薬を作りましょう。赤い薬は作りません。さあてあなたは幻実から抜け出せるかしら?』


 だから攻撃に対しての防御は可能だ。それが『攻撃』であるならば。攻撃だと認識できるならば。


 そして聖騎士と天使は魔人に対して攻防共に特効を持つ。これにより例え相手が護法騎士であり、神器を用いた攻撃であろうとも即死するような事はない。聖なる盾は殆どの攻撃を無効化ないし大幅に弱め、使い手を心身ともに守る。



 だからこれは、相手が悪かっただけだ。



 影の女は歌い始めた。聖典の言葉に良く似た()れ言を。


『神は(サタン)に問われた。"汝は我がしもべのように全く、かつ正しく、神を恐れ、悪に遠ざかる者の他に世に無きことを気づきしか?"』


 アリギエーリを送り出した聖王や聖霊らも、ここにこの魔女がいるなどとは想定していなかった。


『魔は(いら)えた。"彼とて全きものならず。今あなたの手を伸べて、彼のすべての持ち物を打ちすえられよ。彼は必ずあなたの顔に向かいて、あなたを呪わん"』


 影の女は口ずさむ。詩のような、歌のような、祈りのような、嘲りのような、神を愚弄する(まじな)いを。


『神のしもべは祈った。"()らず。我は裸で母の胎より出ずるもの。ゆえにまた裸で彼処(かしこ)に帰らん。全て主が与えしものなれば、全て主の御心のままに。主の御名は褒むべきかな"』


 アリギエーリはこのままでは危険だと判断した。白翼の機能を励起する。


『魔は笑った。"おお、主は人をその獨子(ひとりご)(たま)うほどに愛し(たま)へり、すべて彼を信ずる者の(ほろ)びずして、永遠(とわ)の生命を得んためなり。ならば我は汝が真に神のしもべたるかをここに試さん』


 フッ!!


 アリギエーリは白翼による超高速機動により魔女たちから飛翔し離れた。体勢を立て直し、天使に状況を分析させる余裕を与えねば。


『──甘き()よ、来たれ。回れ廻れ回転木馬(メリーゴーランド)、けして止まらぬ恋乗せて。止まれ留まれ時の糸、けして終わらぬ愛を其処に──』


 未だ呪いを(さえず)る魔女たちを尻目に、天使は一瞬で彼女らが豆粒になるほどの高さまで飛翔する。そして改めて護法騎士たちに向け光剣を構えようとしたところで。



『あれぇ、知らなかったのですか? 天魔(まおう)からは逃げられないんですのよ?』



 背後から無邪気な声が聞こえた。


『なっ……』


 一瞬前まで地上に残っていたはずの、影は……ない。では、後ろのこれは。瞬間転移だと!


『眠れ眠れ、戦士よ眠れ。其処は終わりを告げる戦の地、メギドの丘(ハルマゲドン)のその(ふもと)。例え矢は尽き剣折れ、血も涙も枯れようと、主は汝らを(よみ)(たま)う』


『おおおおっ!!!』


 〈祓魔刃(ラーミナ・ルキス)──天火形態(カレスタ)


 彼は振り返りつつ剣を振り抜き、かつ全力で【霊枷】と天使の力を解放する。


『神の怒りに倒れぬもの無し。『神鳴天舞(コルス・トニトルイ)』!!』


 一瞬で周辺の空間が変容し、巨大な立体聖方陣と共に無数の煌めきが出現する。これこそ天火……即ち天より落つる雷の群なり。


 通常なら聖方陣を空間に刻み術を発現させるには長々とした詠唱と、そこからのタイムラグがある。


 しかしアリギエーリは違う。内在する天使に代行詠唱させつつ、【霊枷】により世界を変質させ改変への抵抗を失わせることで、彼は有り得ない速度での大規模術式構築を可能とする。単身で帝国魔術師団の儀式魔術を超える力を、しかも極めて短時間で発生させえるのだ。


 そうして産まれた雷撃の雨も神速かつ精緻、いかなる敵も逃さない。


 さらに【霊枷】による敵弱体化と神剣由来の破魔の属性を帯びた天なる雷槍は、魔人どものあらゆる防御を貫通する。これこそ、相手が例え千の軍勢であろうと一瞬で壊滅させる神威だ。


 今までどんな敵も逃さず『調伏』してきたアリギエーリの切り札といえる技だった。



 ……フッ……



 だが。


 千の雷は、発生に伴う轟音が耳に届く前に、音よりも速く影に呑まれて消えた。



『!!』



 DOGAGAGAGAGAaaaaaa!!!!!!



 一拍遅れて、音だけが虚しく空を裂いた。



『ばかな!?』



 驚愕が、天使の動きを鈍らせる。

 

 ──これは油断と言うべきか? 慢心と呼ぶべきか?

 

 ──否。そう見なすのは余りに酷だ。それは確かに万物を撃ち抜くにたる神の怒り、天なる槍であったのだから。



 実際、『神鳴天舞』は発生速度と防御貫通能力において五大仙の神仙術による雷撃すら上回っていた。あれを何回か防いだニンフィアやリェンファでも、この雷撃は防げなかっただろう。


 グリューネやルミナスであっても、かわしきることはできず何発かは食らったはずだ。


 だからこれも、彼が悪かったわけではない。


 亜光速の千の雷自体が悉く、発生と同時に万の虚無に撃ち抜かれるという事態は、天使と聖騎士の想像の埒外にあった。有り得ない、【霊枷】の範囲内にあるところ、彼以外の全ては遅くなる。対応が間に合うはずがない。


 雷槍だけでなく、手にする実剣でもまた、影体を断ち切ったはず。だが一切の手応えはなかった。


 代わりに騎士の(まなこ)に、眼前に至った影と、そこに輝く黄金が焼き付いた。


『魔は語った。"人は誰でも原罪背負う旅人の如きもの。おお、我はその罪の深きほど人を愛し尽くせり。すべて神を信ずるものへの憐れみにして、永久(とわ)堕落(ゆめ)に導かんがためなり"』


『「おっ……おおぁっ」』


 聖典の一節をねじ曲げて奏でられる、邪神の歌が騎士/天使を蝕む。そして黄金の輝きが騎士/天使の視界を捕らえて離さない。


 蒼の瞳が、魔女に兄から贈られた楔であるならば、黄金の瞳は彼女が生まれながらに持っていた呪い。視力のない、見るためでなく魅せるための魔眼。それは……。



 ──嗚呼、此処に神の御姿はあらず

  ──嗚呼、されど



『我が愛をここに。一炊の夢に溺れなさい』



  ──【邪王】(マーラ・パーピーヤス)──



 ──されど、魔はいませり


 黄金の闇が天使を捉えた。




「神か……最初に罪を考え出したつまらん男さ」


 「コブラ」や「ゴクウ」……いちいち格好いい台詞回しの多い、とにかくキャラが魅力的な世界観でした。RIP、寺沢先生



 今回も若干厨二病な幕間です。

 厨二病は今はコロナ後遺症やインフルエンザには効かないがそのうち効くようになる(ぐるぐる目)

 ……無理っす、身体だるいっす。まあぼちぼち、ごまかしながら……。



ラーミナ・ルキス

 ……ラテン語で「光の刃」


ディヴィドア

 ……ラテン語の「分割」ディヴィドから


アナテマ

 ……ギリシャ語の「天に捧げる」「滅する」から


カレスタ

 ……ラテン語の「天」から


コルス・トニトルイ

 ……ラテン語で「踊る雷」の意



Vade retro satana. Ipse venena bibas

 ヴァーデ・レトロー・サタナー、イプセ・ヴェネナ・ビバス

 悪魔退治、エクソシズムで使われる式文からの抜粋。「サタンよ退け、汝自身が毒を飲め」という意味のラテン語です。



「青い薬」

 …… 映画「マトリックス」より、真実に目覚める赤い薬と、幻想の生活を選ぶ青い薬。舐めたら10年ぶん年をとるキャンディなんてものもありましたね。



メギドの丘  Har-Megiddo ハルメギド

 いわゆる「ハルマゲドン」の語源、世界の終わりが始まる場所のこと。メギドの丘とされる地は、現在のイスラエルのメギド市街とは少しずれています。



マーラ・パーピーヤス

 サンスクリット語で、より邪悪なるもの、悪意ある死、命奪うもの、などの意。『魔』(= 麻+鬼)という漢字はこの言葉を音写しつつ意味を表すために作られたといいます。


 マーラは仏教的には悟りを邪魔するものですが天(神)でもあるため天なる魔、天魔王ともいいます。織田信長は第六天の天魔王を名乗っているのでつまり織田信長は神(あれ?) そういやこの方、オダノブナガじゃなくてオタノブナガと読むのが正しいかもという説もありますね。


 この能力の具体的説明は次話に。え? NPチャージ? 魅了耐性ダウン? そっちの愛の神の技とは無関係です、すいません。


 第166話で彷徨の魔女はこれを食らうのは堪忍やと言っていましたが、実のところ、食らった当人は「幸福」になります。客観的にどう見えるのかは別にして。


 なお、セラフィナが【邪王】の呪文として使っている聖典っぽい響きの詠唱は、ヨブ記や新約聖書黙示録などからの抜粋を、彼女なりの悪意で歪めているものです。実物とは違います。


 

一炊の夢

 中国の故事。ある若者が一生の栄枯盛衰の夢を見たが、起きてみたら寝る前に炊き始めたご飯ができあがってもいなかったという。これから聖騎士を襲うのもこれのようなものです。



グレオ聖教の神と悪魔

 作中のグレオ聖教は、創始者とされる大聖者グレオ(ニンフィア同様のコールドスリープからの覚醒者)が、大陸西方の土着宗教と、キリスト教、イスラム教などを混ぜ混ぜして作ったものです。


 そのためグレオ聖教の聖典には元の聖書にあったエピソードや表現が翻案されつつも大量に含まれており、唯一神を信仰しています。


 キリスト教では、悪魔は神に反逆した天使の成れの果て、という説のほか、神は悪魔にも役割を与えており、人に試練を与えるために敢えてそのようになっている存在である、とする説もあります。グレオ聖教では後者のような解釈が主流です。


 この唯一神が、実際に作中で何か力を振るうことはありません。グレオ聖教で神の奇跡とされる現象の「殆ど」は、竜王や神器の力によるものか、創作です。


 しかしだからといって、創世の唯一神が存在していないとは言い切れません。


 現在作中の星の守護者である魔人王や、それに影響を与えた古代の龍神もまた、真の創世の神に逢うことを追い求めています。この物語が最後までたどり着ければ、それを巡る超越者たちの戦いの幕間があるはずです。できればそこまで書きたいところです。



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