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第153話 三千世界の烏を殺し

 西の先后は話を続ける。


『仙力と呼ばれているものは、単なる特殊能力や異能ではないのです。根源に近い高階梯の力ほど万能に近い。いえ、敢えていうなら、仙力とは本来は万能なのです』


「万能……というには、制約が大きくて、一人一人の違いが大きすぎるように思います。魔術のほうがずっとそういう意味では万能に近いような……」


『そうですね。そも、この世界における魔術とは、無数の仙力の集合体なのですから、それも(むべ)なるかな、ですわ』


「集合体?」


『そこの(レダ)の仙力は知っていますね? 【再演(アンコール)】……現象を再現、再演する仙力ですが、この世界における魔術とは、『魔導機構』と呼ばれる超大規模霊子式神に魔素(マナ)という道具を介して接続し、術式に指定された通りの現象を細かく組み合わせ【再演】させている、と考えるべきものです』


「魔術が……仙力によるもの?」


『過程や出力は人間の放つ仙力とはだいぶ異なりますが、本質的には仙力、仙術の産物です。本来なら莫大な演算力と霊力が必要なところを、魔素と魔導機構、そして龍脈に肩代わりさせることで、仙力の素質がない者でも奇跡を使えるようにしているのですわ』


「その代償が、冥穴に捧げる生贄だということですか?」


『そこは因果が逆です。世界維持という龍脈の本来の目的のために優れた魂と生贄が必要だから、その代わりに生贄とその家族に与えられた祝福、かつ生贄を逃さないための呪いが、魔術なのです。そして複写元の仙力の記録、つまりは死者の情報が龍脈に無数にあるために、一般的魔術はバリエーション豊かなのですわね。精霊術だけは少し毛色が違いますけど』


「では、魔術衰退というのは……」


『25年前に魔導機構がある事をきっかけにだいぶ損壊してしまったので、完全に壊れないよう、だましだまし使うために、出力制限をかけて運用するようになったのですわ。そして魔素の薄い者からの要請は無視するようになりました。それがいわゆる魔術衰退です』


「魔素や魔力を『視』ても、霊気は感じられないんですが……」


『魔素はどちらかというと工学的技術の産物ですからね、人類よりも遥かに高度な技術を持っていた存在の遺産です』


「その、魔導機構というのは、そのうち直るようなものなのですか? もし万全に直ったらまた魔術の時代に戻るんでしょうか」


『放っておいても直りませんし、娘も直すつもりはなさそうですね。それに、万が一直ったとしても、個人の持つ仙力には価値があります。魔術はどうしても魔導機構を介するぶん発動が『遅い』うえに、再現する要素をある程度限定していますからね。何でもできるようでいて、天井も壁も決まっている。ただ、確かに個人の仙力は規模面で魔術に劣ります。それは人間という種の、一人一人の魂の限界です』


「魂の限界……」


『一人一人では限界があるから、束ねるのですよ。彼の仙力のように』


「ああ、なるほど」


「話を戻しましょう。仙力は本来、太古の宇宙開闢の根源の頃、魂が集まっていた状態……即ち『原霊(プネウマ)』の頃では、限り無く万能に近かったはずなのです。しかしそれはその後、宇宙の膨張に伴って隅々まで拡散してしまった。今、個々の命に宿るそれは、根源から遥かな時と空間を隔てた結果、劣化し、欠けていった果ての残滓になってしまっています』


 ちょっと待って。

 宇宙かいびゃく? ぼうちょう? どういう意味? よく分からないんだけど。


『ですが、量子力学において情報が不滅であるように、霊子情報も真には消えない。どの欠片であろうと、そこには根源の情報が残っていて、復元は不可能ではない』


 りょうしりきがくって何? 情報が不滅ってどういう意味? とリェンファは思った。まずい、だんだん分からないことが増えてくる。


『ゆえに、個々の才能とは単なる燃費の違いでしかなく、一見凡庸な才能であっても、無限の霊力が供給できるのなら、理論上はいかなる奇跡も起こせるのですよ。霊気術……いえ、仙術ですね。あれもその方面からの成果ですし、神仙術などもその延長です。よって燃費を無視するなら……』


「ええと、すいません、その『ねんぴ』というのはどういうものなのでしょう?」


 さすがに分からないままでは困りそうな概念については質問せざるを得ない。


 現在の東方では、石油などは利用されていない。油といえば植物油か鯨油くらいで、それらも直接燃やすことは余り無く、大抵は石鹸や蝋燭、肥料などの加工品の原料として使われる。燃やすための燃料といえば大半は木材だ。


 木材系燃料にしても、主用途は暖をとるためか炊事などになる。何かを燃やして動力と為す、という概念がまだ存在しない……というか、失われて久しい。そのため燃費といわれても何の事かよく分からないのだった。


『(ぶつぶつ)あれえ? 言語概念が、念話なのに通じていない? ……そうか、肉体を介して、肉体ある子向けへ念話する場合、この辺りの処理にも脳と知識の制約が発生して翻訳されないのか。久しぶり過ぎて忘れていたわ。……同時にやっている隣の子(ニンフィア)と前提の知識と文明レベルが違い過ぎるのも原因か……』


「??」


『……すいませんね。燃費とは燃料消費率……同じことを為すために必要な労力、効率の違い、でしょうか。魔術でも、甲級術師と丁級術師とでは同じことをやるのに疲れる度合いが違うでしょう、あれを東方では……えー、魔力費率と称しているんですね、それと似たようなものです。それの霊力版なので、仮に霊的燃費と呼ぶことにしましょう』


「わかりました」


『その、霊的燃費の違いが洒落にならないのです。例えばあなたが、そこのニンフィアさんの破壊の力や、ロイ君の霊撃を再現しようとしたら、同じことをやるために、彼らの数万倍の霊力が必要になるでしょうから』


 そんなに。

 いや、まあ自分には無理だとは思っていたが。


『先ほど見せた物質具現も、それに特化した才能のほうが霊的燃費は軽い。実際に物質的変化を伴うものは、【啓示】の持ち主が派生として使おうとすると、どうしてもコストは高いほうになります。向いていないことを無理やりやるのは、人の身では真面目に考えるような事ではない、と普通なら思えますが……』


『あなたにとっては最後の手段として、心に留め置くべきことです。霊力の量はともかく、【啓示】とその派生の霊的燃費だけなら、あなたは私よりも優れていますしね』


「ええ!?」


『私のこの左目は、生まれつきではないもので。【啓示】も本来の能力ではありません。これは世界に否定され、生まれるはずもなかった私を世界につなぎ止めるために兄様が私にくださった楔なのです』


「生まれつきでない……」


『それがどういう意味か、あなたにはわかるはずです』


「……はい」

 

『では改めていいましょう。【啓示】の本質は情報を制することにありますの。物事の本質と変遷を見過ぎるほどに見て、あるべきものを見定めること。これを他の仙力でやろうとすると、その差は数万倍ではきかないのです。事実上、この眼を持つものしか、同じ事はできません。そして今現在、人間としてこの天の啓示(アポカリプス)を知りうるのは、あなただけです』

 

『完全な消滅とはこの現世にはほぼ(・・)有り得ない。存在が燃え尽きてただの灰と熱になりはてたとしても、混沌(・・)の中に鍵が埋もれたとしても、私の持つような奇怪な仙力で消されたとしても、情報が、消えない手掛かりがどこかに残るものなのです』


『ただ、そこに隠された真実を見るだけでなく、砂漠の中の特定の一粒を見つけ出すこと、そしてそれがかつて如何なるものであったかを思い出させ、蘇らせること。例えそれが万に一つ、億に一つ、果ては那由多(なゆた)に一つの彼方にあろうとも、その可能性が皆無でないならば、この眼は復元の糸口を、誰よりも早く見つけられます。……その担い手が誰であるかに(・・・・・・・・・・)関わらず(・・・・)


「それは……」


『つまりこの眼を真に使いこなせば、生と死すら不可逆ではなく、死して三日後に蘇るなんて芸当も不可能ではない。あとは必要な演算力と霊力さえあればよい』


『ですから、仮にあなたが、既に在り得ざる夢を見たとしても、そこに何を見たとしても。それを覆す術はあなたたち(・・)の中にあります。分かりましたね?』


「……はい」



『ただ、このように改変を望んだとして、その眼に映る現実は、必ずしも持ち主の意図した通りにはなりません』


「といいますと?」


『遥か古の物語に、『猿の手』というものがあります。猿の手とは願いを叶える力を持つ呪物であり、偶然それを得た者の物語です』


『その者は、猿の手に、大金が欲しいと願った。すると確かにお金が手に入った……大切な息子を喪失した対価として。次に喪失した息子の復活を願った。すると確かに彼は復活した……動く屍という形で』

 

「それは……」


『要は、宿命をねじ曲げる行いには相応の報いがあり、分を越えた奇跡は人間の都合の良いようには動かない、という寓話ですが……』


『この眼は、その猿の手とも少し似ています。この眼のもたらす変化は、持ち主が無意識に抱いている常識や期待に沿ってくれません』


『あなたが願えば、あなたが視れば、世界はそのように変わります。霊力を引き換えに。しかしその願いに曖昧さがある限り、世界は勝手に願いの外の要素を補完します。その補完に人の価値観、人の認識は関係ありません』


『だから本来、観察を超えた改変は、具体的に全てのパラメータを指定できない人の身では、扱うべきでない力なのです。人間は全てを見続けられるほど強くなく、虚構を伴わなければ生きていけません。そして己を成立させている虚構や設定を、多くの者は自覚していない。自覚なければ指定もできず、神の眼はそれを汲んでもくれません』


『あなたも、よくその眼で人の心の不純なるを見ているでしょう? 人々を知りすぎるのは苦痛でしかないでしょう? 知らないほうが良かったのにと思ったこともあるでしょう? そしてそれを正しいと思ってしまったら、それは本当にそうなってしまい、覆せない。あなたの偏見は、世界にとって現実になりえる。その言葉は誰に対しても通じる異言(グロソラリア)となりえる。【啓示】はとても恐ろしい力です』


「……少し分かります。では、ではどうすればいいんですか」


 もし、自分が現実を無意識に変えていたのなら。

 もしかしたら、人の心さえ、変えられるのなら。

 もしかしたら……。


『彼本人には効きませんからご安心を』


「なっ」


(くすくす)『初々しいこと。もっと図太くなくてはいけませんわ。そう、短い人生、後悔しないためには自分からぐいぐいといくくらいで』


「ぐいぐいと」


『そうです、私もそうやって押し切りましたから』


 何を押し切ったのか。だいたい分かるが、分かってはいけない気もする。


『そも、この眼の力は、多くの者にとって客観と錯覚できる現実を創りえますが、強い霊力を持つ個人の主観や内面まで塗り替えようとすると、抵抗が激しいのです。特に彼の霊的防御力は既に人外の域にあります、あなたの無意識の操作では力不足でしょうね。意識していても無理かもしれません』


「う……」


『しかし殆どの方には効きますので、つまり実態は別として、客観的既成事実(偽)を作ることもできます、そうやって外堀を埋めて追い込めば例え鋼の理性をもつ朴念仁(にぶちん)であろうと覚悟を決めるというもの。あ、これは個人の経け……いえ感想です、悪しからず』


 余り不穏な事を言わないでください!?


『そうそう、品行方正な優等生よりちょっとくらいケダモノのほうがよくありませんか? 相手のそれをうまく引き出しつつ適度に手綱を握るのが醍醐味というもので』


 いや、その、あの。反応に困ります。


『彼は強欲なくせに理性も強いタイプのようですし。まあ【救世】の主は内包する数多の『大罪』を抑えこむためにか、そういう性格になりやすいらしいですけど。真面目に考えすぎても、前に進みませんわよ? 一つ、自分を見つめ直してみてはいかが?』


 ……確かにまあ、その、ここ半年くらいの自分はおかしい、と自分でも思ってはいるのだ。本来の自分なら、あいつとつきあうにしろ、離れるにしろ、もっとさくっとした関係でやっていけると思っていた。


 ニンフィアが現れたこと、自分たちの周囲の環境が大きく変わったこと、変な夢をみたこと、そして……。あの時の唇の感触を思い出して、赤面する。


 全くこんなの、私らしくないと思うのに、本当に心とはままならない……。


(くすくす)『これがじれったいというやつかしら? まあ、真面目な話に戻りましょう。この眼の真価は、あまり使うべきでない、しかし扱わねばあなたは戦えない。されど扱うにしても正攻法では、霊力も、演算力も人の身では全く足らない。世界の勝手な補完も回避できない。ではどうするか──そこで、裏技(・・)の出番です。少々『勇気』は要りますが、あなたに『覚悟』はありますか?』




「だいたい分かった、と思います、が……」

『何か?』




「仙力を使う前の詠唱みたいなものは必要なんですか?」




『格好良くありませんか?』



「え?」


『発動に必要か否かであれば必ずしも必要とは言えません。しかし格好良さもあるべきではないですか?』

「そ、そうかもしれません、が……」


『仙力とは魂の力なのですから、こう、己の魂からの叫びが連動しても何もおかしくはない、そうですよね?』

「…………」


 西の先后は頬に手をあてて首をかしげる。権威と高貴さ、時に悪戯っぽい余裕を伴っていた美貌が、何故かこの時だけはひどく幼く見えた。


『機能面での効用としては、仙力仙術の場合、念じるだけですと一瞬の気の迷いで誤作動する、ということも無きにしもあらず。そこで効果が危ないものについては起動条件を設定して、それをやらないと発動しないように自己暗示をかけるわけです』

「な、なるほど……」

『従って、内容はなんでもいいのです。言葉でも、仕草でも、何となく格好良いポーズでも、自分が覚えていられるものならご随意に。先程のは、私の一族は私も含めて代々こういうのがいい、という者が多くてですね』


 ……代々か。大丈夫なのか西の島、いやこの世界、ヤバくない? とリェンファの脳裏に不敬な思いがよぎったのを誰が責められようか。


『娘がまだ子供だった頃、こんなのはもうやめようよお母様恥ずかしいと言われたのですが、あの娘もその後同じような事をやっていたので、やはりあれも私達の娘であると思うのです。だからあなたも気にせず真似したければどうぞ?』

「……ハイ」




  「ごふっ!!?」

  「どうした。霊気が乱れているぞ」

  「何かがもう無いはずの心臓に刺さったような、黒歴史が追いかけてきたような感覚がする」

  「? 別に外部からは何もないぞ。……おい、演算を止めるな、ここで止まると星核の釣り上げに失敗するぞ」

  「きっとあいつが私の邪魔をしようとしているのだわ、おのれ天外神め。()くなるうえは、我が平穏なる朝寝の為に、三千世界の(からす)の一切、悉くを滅尽滅相の淵に落とし、殺し尽くしてみせましょう」

  「お前のセンスはどうも分からんな、あと変なポーズ付けてる暇があるなら休むな」

  「はいはい」

 次話はニンフィアのほうの話になります。

























量子力学において情報が不滅、とは

 量子力学では世界は波動関数の情報で記述される。この場合の『情報』とは何か。

 例えば黒炭とダイヤモンドは同じ炭素原子でできている。その違いが何で生まれるのかといえば、原子の並び方の違いでしかなく、即ちそのように並んでいる、という情報の違いでしかない。

 そもそも炭素などの各種原子自体、その物質固有の何かからなっているのではなく、クォークやレプトンなどの素粒子は共通であり、それらの数と並び方が異なっているに過ぎない。よって、あらゆる物質は同じもので、違うのは情報だけとして記述できる。


 一冊の本は、紙という形に並んだ素材上に、インクが特定の順番で並んだものである。人間とは、そのような形に各物質が並んだものである。本に書かれた情報は、本が粉々になろうが、燃えようが『消えない』し、人間の情報は、その個人が死んでも『消えない』


 どういう事かというと、本が燃えて灰になったとしても、人間が死んで火葬されたとしても、それは灰や二酸化炭素や熱などに並び方や在り方が変わっただけであるから、それらを記述する各情報は存在し続けている。単に人間の能力ではその変遷を計測して復元しきれないだけである。

 ゆえに、情報とその変遷を完全に計測し、その計測を現実として【具現】できる観測者がいるならば、過去の万物を復元できる。

 

 そして過去がわかれば未来の変化を予測もできるはず……と、そこまでいけば、それは即ちラプラスの悪魔である。ただし作中世界はラプラスの悪魔が完全成立する超決定論を是としていないので、予測側は限定的なものにとどまる。

 しかし全くできないわけではなく、予測可能性についてもある程度までは妥当である。他ならぬ【啓示】による現実の書き換えのような仙力による変更も、一部の例外を除きその履歴は残るので、やはり復元と予測は不可能ではない、という設定。


 そしてここでセラフィナが言っているのはつまり、死とはそのような情報の変化に過ぎず、それは真の消滅ではなく、【啓示】の眼を持つ者はその変化を認識できるので、そこから人体錬成も不可能じゃないよ、ということ。


 そしてこの世界にはその一部の例外、真の消滅に至る仙力も存在する。前作で使われた【神滅】もその一つ。





天の啓示 アポカリプス

 アポカリプスの語源はギリシャ語のアポカリプシス、隠されざるもの、の意。それがそのうち真実を暴く、という意味になり、やがて真実を告げる天の啓示、という意味も持つようになった。そしその啓示、すなわち神の示す未来(=黙示)の記録が黙示録である。


異言 グロソラリア

 聖書において、聖霊から言葉を授かったものが話す言語、常ならぬ言語のこと。あるいはそれはバベルの神罰によって乱される前の原初の言語なのかもしれない。ここでセラフィナは誰にでも真実を押し付ける【啓示】の力をそのように表現している。

 なお異言という言葉には「言語のようで言語でない意味不明な謎の発声」とか、「知らないはずの外国語を流暢に話すこと」などの定義もあるが、ここではそれらの意味ではない。






『格好良くありませんか?』

 だめだこのいちぞく、はやくなんとかしないと


 西の先后セラフフィナは能力は高いが、微妙にポンコツであり、かつ救いようのないブラコンなうえ、やたらと格好付け(本人主観。客観的には厨二病(びょうき)の域)を楽しむ傾向がある。その度合いがいかなるものかは次話からのニンフィア編で遺憾なく発揮される……はず。

 

 なおセラフイナが金と蒼のオッドアイなのは、この厨二病(びょうき)のせいではなく、片目を兄と交換し、それを【非在】の効果で消えてしまわないための現世への楔としているから。【啓示】はそれに付随する兄からの借り物の力のため、余り得意ではない。

 片目の交換であるから、兄のほうは左右逆の蒼と金のオッドアイになっている。

 そして現時点で、彼らの本来の肉体はそれぞれの両目しか残っていない。逆に言えばそれだけは残してある。そしてそれがグリューネのいう「中途半端な現世との繋がり」であり、これがある限り完全な神にはなれない。しかし無くしてしまうとだんだん現世から乖離して地上の存在と会話しにくくなっていくので、現状敢えてそこに留めている。 




 普段セラフィナが黒い影体なのは? 

 「だって私は破壊神ですもの、それっぽく在らないといけないでしょう。宇宙が私にもっと黒に染まれと囁いているんです。誰もが魂奪われていく、私完璧で究極の死神(リーパー)♪ という感じで(背景に怨念や死霊を従えつつキラッと闇魔法かっこいいポーズ)」

 「ソウダネーカワイイヨー我が(つま)よ。……だがちょっと待って欲しい。そのセンス、一族以外の者に通じるとは思わないでくれよ?」


 


三千世界の烏を殺し

 高杉晋作の作とされる有名な言葉。いくつかの解釈が知られているが、男、ないし遊女の立場から、一緒に朝もゆっくりといたい、いい女、ないしいい男に対しての恋文、あるいはリップサービスを唄ったものとされる。いずれにしても烏は皆殺しだ。むごい。

 忙しさにキレかけた魔人王シアが、もうやだー私はあなたとゆっくりしたいのー! という意味でこれを引用したのだが、龍種である夫のほうはそんな太古の人間の逸話を知るわけもなく、通じなかった。

 ちなみにシア自身は黒歴史と思っているがそんなわけなく自覚なく現在進行形である。やはりだめだこのいちぞく、はやくなんとかしないと。

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