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第114話 第二次特別講座その弍 名称と単位は揃えよ

「終わらせるといっても完全に消える、ということではないそうですよ。あの幻魔王が言った通り、世界の飢えに対する手当ては必要なので」


 世界の飢え。魂が必要というやつか。


「ただ、一度終わらせることで、在り方を作り変えられるようになるそうです。もう少し人間が対処しやすい形態に変えることを我が王は望んでいます」

「例えばどのような?」

「無辜の民に害が及ばない、戦いたい者だけが戦うような形態にする、と。それ以上は私も存じませんね」


 どうも胡散臭い。そんな都合のいい状態にどうやったらできるというのだろう。


「その条件達成には、あなた方に頑張ってもらわないといけない。うちの一般騎士たちがこちらに来るというのは、ほんとに最後の手段でしょうからね。というかこっちに派遣する余裕なんてないですけどね、冥穴としてはあっちのほうがこっちより大きいので。私がこちらに出発する前に、この数ヶ月で既に十万体近く幻妖を狩ってましたわ」

「は? ……十万?」

「毎日千くらい湧きますの。100日あれば十万ですわ。こちらであなた方が狩ったのは、今のところ全部あわせてせいぜい千いかないくらいでしょう? 桁が違うのですわ。向こうは忙しいのです」


 いくらなんでも十万だなんて、話を盛って……。……ないんだろうなあ、これ。怖い。


「まあこちらも向こうほどでなくとも、最盛期になれば毎日百や二百は湧くようになりますわ」


 やめて!


「それでも西よりは少ないでしょう。長らく封じられていたせいで、西方に負荷が偏っているのですよ、この歪も是正されねばならない。北方冥穴と南方冥穴も封じられたままですし。まあこの二つは元々小さいし無視でいいですけどね」


 北方? 南方? 初耳なんだけど。


「ですので、あなた方帝国の仙力使いにはさっさと経験を積んで己の仙力を極めて幻魔王を打倒してもらいたいのです。期限は残り二年弱ですが、まず、経験を積める状況にすること、戦っても死なないように、最低限の練度まで引き上げる必要がある」


「打倒といっても、経験以前に先程は、何をどうやられたのか、全く分かりません」

「あれは幻魔王の仙力、【壊伝(バベル)】と呼ばれる異能です。あれは通常、優れた仙力使いであっても、予備知識無しには耐えるのは困難です。とりあえず後であれへの対策も教えますから、よく聞いておいてください」


 確かに本来ならこんなのは望ましくはないのですが、と長耳幼女は続ける。


「あなた方に最初に指導したのはリュースですが、彼の事だから割と原則にこだわったでしょうね。あなた達に教えるにしても、基礎のみを教えるから、応用は自分で見いだせとでも言ったでしょう?」

  

 確かにそういう事を言っていたと思う。


「彼自身が時間をかけて自己流を磨き上げた万能型(オールラウンダー)ですからね、それを理想とするのは仕方ありませんわ。同時に何十人もに教え、生存性を重視するなら基礎重視も解でしょう。ファスファラスでも平時はそうしています」


 今は平時ではない、か……。


「ただ仙力とは本来属人特化したもの、そして訓練も個別に特化させないと使い物になるまでの時間がかかりすぎます。そして此度は事態の展開が速い。私も最初はもう少し時間をかけてと思っていましたが、それでは間に合わないことが分かりました。基礎から底上げしているだけの余裕はありません。短期間で実力を上げるには、少々無茶なこともしなくてはならない」


 少々で済むならいいのだけど。


「そこで、です。あなた達を助けた代償として、二つやってもらいたい事があります。どちらもあなた達の力を上げるのに繋がりますので、悪い話ではありませんよ」


 悪い話というか、力を上げるのならむしろ有り難い。……だからこそ、額面通りに受け取っていいものか怪しい。


 仙力持ちが貴重なのはそうだろうが、帝国の仙霊機兵よりも、クンルンのほうがまだ質も量も上のはず。……こいつら、クンルンとはかつては敵だったというが、今はどの程度の関係なのか?


 何かしら裏があると考えるべきかもしれないが……分からん!


「一つは今から私がやる施術を受けること。霊力に方向性を与え、特に得意な属性を高めるものです」

「属性、ですか」

「霊気属性の分類も色々流派がありますが、ここでは崑崙のやり方に合わせましょう。五行属性分類で、最も素質のある属性に特化してもらいます」


 リュースが手紙に残していた陰陽五行のことか。ロイもまだ殆ど訓練できず、扱えていないが。


「その、仙力だとか霊威だとか、同じ力なのに、流派だの分類だの呼び名などが色々あるのは何故で? 属性というのも流派によって分け方が違うのですか? 正直、混乱するし面倒なのですが」


 さすがグァオ先輩、言いにくいことを平然と聞いてくれる! そこはちょっと尊敬する。


「人間の認識限界と文化差異によるものですわね。人間の脳は抽象化しないと霊気のような複雑なものを理解できないのです。ですので今から言う属性というものも、あくまで便宜上のものに過ぎません」


「実態はもっと複雑なものだと?」

「例えば虹の色数も、地域によって違いますわ。こちらでは五色でしょうが、西の島では七色と見なしています。そして文化によってどこまでを赤や青と見なすかも、どれほど細かく色を分けるかも違う、それと同じです」

「虹の色数って五に決まってるんじゃなかったの!?」

「北方だと六色らしいよ」

「南には四色と言ってる人達もいる」

「マジで?」


「ですから霊気も『同属性』であっても、実のところ、内部には細かい差があるのです。そこをいちいちやっていては話が進まないので、簡略化しているのですわ。そのしきいが、文化によって違うだけです」

「めんどくせ、世界中全部同じになればいいのに」

「まあ、さすが大陸に覇をとなえんとする帝国の方らしい発想ですこと。違いは違いとして……」

「でも揃ってないのは面倒なんだよグリューネ、再現したネジが嵌まらないあのイライラ分かるかな? わっかんないだろうなあ。ヤードポンドの残滓は宇宙に出た時点で消すべきだったと思うんだよご先祖様方、性懲りもなく方舟時代ですらかなりの分野でメートルと並立してたってもうアボカド!」

「はあ?」

「……失礼、これも文化の違いですわね」


「霊気の属性は未熟なうちは殆ど影響がないと聞きましたが……」

「地道に修行で目覚めさせようとすると時間がかかりますからね。そうして目覚めたほうが使い勝手はいいのですが、時間効率が悪すぎます。使い物になるまでに二十年、三十年かかってもおかしくないですから」

「ではどうするのです?」


「これからあなたたちに施術して、各人が一番向いている属性に対して強引に方向性づけを行い、目覚めさせます。そうすれば自分の属性を霊撃や霊鎧に載せることができ、また己の属性の仙術を霊力を使って扱えるようになるでしょう」

名称と単位については正直統一すべきだったと思うところです。作中の東西や時代で異なるので書いてるほうも正直面倒で……。



コロナにかかり頭痛が酷く、続きが書けていません

ちょっとしばらく更新が不定期になるかもしれません

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