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8.彼女たち、努力させる!?


 神殿で賢者テミドに遭遇してしまった。


 これ自体は驚くほどでも無かったが、あの男だけで何をしていたのかは気になるところ。Sランクパーティーのあいつらは、常に三人で行動していたはずだからだ。


 しかし荷物持ちの時に思っていたのは賢者だけは独断で動いている――という点だ。そう考えれば崇め恐れられているのは、勇者と聖女の二人だけということになる。勇者は短気な賢者とは考え方も違って、冷静冷淡に攻撃を仕掛けてくるはず。


 だからこそおれはテミドを泳がした。勇者たちがまだラクル周辺にいるのならいくらでもやりようはある。まずはテミドだけ単独行動をさせ、あの二人だけが町を離れているのであれば、おれとしても確実な強さを身につけておかなければならない。


 ・ ・ ・


 神殿から脱出し、おれたちはラクルに戻って来た。テミドのことは置いといてまずは落ち着く――そう思っていたが、彼女たちは収まりが利かなかったようで、様子が違う。


「まったく、全く~ですよっ! 何なんですかあの男は!! アックさんにあんなことを言って、挙句の果てに攻撃をしようとしていたんですよ! 腹が立って仕方ないです!!」

「いや、待った。何でルティが怒る――」

「本当ですわね。あたしが見逃していたばかりに、アックさまに嫌な思いをさせてしまいましたわ」

「それはスキュラのせいじゃな――」

「マスターが止めなければ、わらわだけでも動いたのに~!!」


 ――といった感じで、おれ以上に彼女たちの闘争本能に火がついてしまった。


 スキュラはガチャをして得られた仲間じゃない。それなのに怒りを露わにして何とも頼もしい限りだ。スキュラが強そうなのは何となく分かるし、フィーサの剣としての強さもきっとすごいはず。


 そうなるとおれが出来ることといえば、彼女たちを成長させつつおれ自身の力を上げまくることだ。勇者たちのレベルとどれくらいの開きがあるのかは、サーチスキルでもない限り調べようがない。それを気にするよりも、成長しまくってあいつらに泣きを見せてもらうのが最短かつ最強へのやり方だ。


「アックさん! わたしに考えがあるのですが、聞いてくれますか?」

「うん?」

「わたしの故郷にお連れして灼熱温泉に浸かってもらいたいです! そうすれば、アックさんは生まれ変われますよ!!」

「故郷って、火山渓谷の……?」

「はいっっ!」


 生まれ変わりか。まさか赤子まで戻るとかじゃないよな?


 レアガチャでルティを仲間にしたのはいいとして、ロキュンテはラクルと真逆の大陸だ。どうやってそこに行くんだってことになるし移動に時間がかかった場合、勇者パーティー(あいつら)を調子に乗らせる恐れがある。


「ルティの気持ちは嬉しいけどロキュンテは遠い。キミの努力は別の形で受け取るよ」

「そ、それならっ! もっと即効性のあるドリンクを作らせていただきます! 頑張りますよ~」


 そういうとルティは樽を抱えてどこかに走って行ってしまった。最初の頃よりも愉快な彼女になってしまったが、それはそれで楽しいからいいか。


「マスターは決して弱くないの。だからわらわが選んだんだよ! 怪力だけの小娘だと強さの底が上がらないから、マスターさえよければわらわが剣の特訓をしてあげるっ!」


 ルティが言ったことが気に入らなかったのか、フィーサが興奮気味に張り切っている。


「具体的にはどうやって?」

「たくさん倒すだけだよ!」


 単純な答えが返ってきたな。


「きっとすごく強くなるよ! だから一緒に成長しよ?」

「そうか、そうだよな。ルティにつられて拳で何とかしようとしてたけど、魔法とか剣で倒しまくれば強くなれるってことなら、そうするしかないかな」


 ガチャで彼女たちを引き、ここまで駆け足で上がってきた。それでもおれは、まだその辺の敵と戦ってもいない。戦わないと成長しないならそうするしかなさそうだ。


「あらアックさま。それならば、魔法を覚えてみませんこと?」


 今度はスキュラか。


「魔法スキルが無くても覚えられるのか?」

「いえ、ガチャスキル……魔石を使いこなしているという時点で魔力は十分に備わっておりますわ。アックさまはまだ何も知らない赤子のようなもの。可愛がって差し上げ……ではなく、素質は間違いなくありますわ」


 少し危ない気配を感じたがそこはスルーしとくとして。魔石によるガチャスキルは生まれつきのもの。それ以外のことをしてきたことは無かっただけで、おれが属性結晶を使えたことは意外だった。


 聖女からの状態異常に耐えて生き延びたのも、耐性がすでに出来上がったことを意味している。次は攻撃的な魔法を使えるようになる――それだけだな。スキュラは属性魔法に長けていそうだし魔法は彼女に教わるとする。


 Sランクパーティーだとか関係ないくらい強くなって、必ず這い上がってやろうじゃないか。


「素質があるってことなら楽しみだ!」

「フフッ、それはあたしもですわ! あなたさまの最期まで、全て面倒を見て差し上げますわ」

「あ、ありがとう……」


 まずはラクルを離れて別の町に、もしくは他国にでも行ってみるかな。

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