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Sランクパーティーから追放されたけど、ガチャ【レア確定】スキルが覚醒したので 、好き勝手に生きます!  作者: 遥風 かずら
第一章:生まれつきのスキル

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5.海底洞門と水棲の魔物


 見知らぬ少女の登場でルティは指をくわえながら腹を立てているようだ。気持ちは分からないでもないが。


 まさかミスリルの剣が少女に変わるなんて、想像出来るはずも無いしな。


「マ、マスターって。……それって、おれのこと?」

「わらわを綺麗って! そんなこと今まで生きてきて初めて言われたんだよ? 今度はどんな奴が~って思っていたけど、イスティさまこそわらわのマスター(ご主人様)なの!!」


 自分のことをわらわとか言ってるってことは、相当な年代物の宝剣なのか?

 

 複数の毛糸で織られた腰衣と薄めのシャツ。それを着ているだけでも気品は感じられる。


「もしかして、おれより年上だったりして?」

「うん! 900歳! でもでもマスターが望むままの姿に変われるよ」

「900……それはまた何とまぁ」


 レベル900が彼女の生きて来た証みたいなものか。だからといってルティのレベルとは、意味合いがまるで違うだろうけど。


 しかしこれで武器は何とかなった。これならすぐにでもクエスト(仕事)に向かえる。


「ルティ、そろそろ行くよ?」

「ぬぅぅぅ……! これはうかうかしていられない事態ですよ! そうと決まれば!」

「ん?」


 ルティはフィーサの前に仁王立ちをしてみせた。

 

 そして、


「どれだけ強いかなんて関係ありません! 強さとは結局拳なんですっっ! 剣の切れ味よりも力こそ全て!! そういうわけなのでアックさんに使われるつもりがあるのなら、役に立つことを見せてもらいますからね!」


 これはもしや、やきもち的な何かだろうか。ルティが言うようにフィーサの剣としての強さは今の時点では分からない。


 持ち主がおれに決まったとはいえだ。どんなに切れ味が鋭くても、魔物とかにどれだけ通用するかまでは未確定。


「ふっふん。赤髪の小娘なんかに負けないよ~だ! べ~!」

「むっか~!! そうと決まれば、さっさと行きましょう! アックさん!」


 もはやお揃いの剣で浮かれていたことはすっかり忘れてるな。意固地になっているのか、用意していた食事を袋に入れてズンズンと歩き出した。


    ・ ・ ・ ・ ・


 町から出てすぐの岩場から、洞門への道が見えている。受けた依頼はあくまで侵食されて出来た洞窟の調査と資源の回収。つまり、そこまで深く入れるダンジョンでは無いことが分かる。


 海底近くまで進むとなれば、おれ自身の衣服も防水鎧か何かで固めておきたいが、まぁそこまで危険な目には遭わないよな。そのはずだし気にしないことにしよう。


 歩き進んだ崖の一部には断層が出来ている。すぐ目の前では波しぶきが迫って来て、油断をしなくてもびしょ濡れになりそうだ。


「ここから内部に降りて行くから足元に気を付けて」

「水に入るのは好きですけど、濡れるのは許して欲しいです~! あぁぅぅ……」

「マスター……わらわ、濡れたくない。だからしばらく(さや)に入って大人しくするね」


 錆びることは無さそうだが濡れるのは嫌らしい。自分で剣を振る機会があれば斬れ味なんかが試せそうだが。ここで無理しても良くないだろうし、ルティに任せるほうが無難だろうな。 


 しばらくごつごつした岩だらけの洞門を進む。そこからは地下へ続く道が続いた。今のところ襲って来る魔物の姿は無く、なんてことは無い感じだ。


 武器が無くても何とかなりそうだな。

 

 それにしても、


「ここまで来ると結構体が冷えてくるものだな」

「それは大変ですっ! そんなわけで、アックさん。これをお飲みください」

「う?」

「体が温まる回復水です。温泉水は全て切らしちゃいましたので、さっき町で作っておきました! さぁ、グイッと!」

「あぁ、ありがとう」


 寒いというだけでどこも痛くは無いが、飲み物として作っていたのはさすがだ。ルティに言われるがまま、全て飲み干した。


「う、おぉっ?」と声を漏らしたが、何だかさらに力がみなぎってきた気がする。体が温まったのは言うまでも無いが内側から何かが溢れて来ているような感じだ。


 腕力どころか今ならすぐ目の前の貝殻石を破壊出来そう。


 試しにやってみるか?


「あっ、言い忘れたんですけど、アックさんの力が上がりますのでくれぐれもその辺を殴ったりは――」

「――えっ? あっ……」

「駄目です、駄目です~!!」


 彼女に言われてしまうも、おれの拳は硬そうな貝殻石にヒット。しかも運が悪いことに洞門のあちこちに見られる壁の一部に命中した。


 その直後、ズゥン――。とした鈍い音が響く。感触は確かだっただけに、壁に相当なダメージを与えたようだ。


 しかし硬い壁を攻撃したというより、軟体生物からのはね返しに似ている。


「ひぃぃえええええ!? く、崩れちゃいますよぉぉぉ!!」

「ただの貝殻石じゃないから簡単には崩れないはずだけど……」

「ひぃえっ!?」


 ルティが心配するよりも先に、貝殻石に見えた水棲の魔物が正体を現した。


「何すんのよっ!! せっかく寝ていたのに、無理やり起こすなんて! 一体誰の仕業!?」


 上半身は獣の耳に似た触角。下半身はタコやイカの足、加えて狼に似た獣が腰辺りに数匹見えている。強気の口調で姿を現したのは水棲の魔物のようだ。


 ただの貝殻石ではないと思っていたが、こんな所で魔物に遭遇するとは。


「アックさんっ、わたしが倒して差し上げますっっ!」


 さっきまで慌てふためいていたのに切り替えが早いな。


「いや、彼女は敵じゃなくて、多分おれが叩き起こしてしまっただけ――」

「こんな中途半端な場所で眠っていたなんておかしいですよ! 待ち伏せで人間を襲おうとしていたに決まってます!」


 そうとも言い切れないが、貝殻石の姿でここにいたのも謎ではある。ルティの言うとおり襲おうとしていたのか、あるいは――?


「何よ? やるつもり? 言っとくけど、この先の海底遺跡に行くつもりならキラキラ光るものをあたしに納めてから進みなさいよね! それが出来ないなら、受けた痛みを倍にして返すんだから!!」

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