高校3年生の思い出。
高校3年生の時。誰にとっても人生の分岐点に違いない。大学にいくもの。専門学校にいくもの。就職するもの。父と母もこの風に吹かれ、迷い苦しんだらしい。
父は母子家庭で母と兄に育てられた。高校生ながらバイトをたくさんし家庭にお金を入れていたと聞いた。
母の家も家庭内別居の夫婦で育ったらしい。それ以上のことは僕に語らなかった。
そんな2人は、この分岐点に一緒の道を歩くことになる。夜間の大学に別の学部だが同じ大学に通うことを決めた。その決定を2人は奇跡ではなく、必然に感じていた。
しかし2人の仲は友達以上恋人未満の関係から恋人以上の関係へと行ったり来たりを繰り返していた。その間の恋人の関係は2人には無かった。
母は「あの時お父さんは、何もかも包み込んでくれた。苦しみをわかってくれた。」と。
父はもういない。その悲しみは、死への悲しみではなく理解者がこの世にいない苦しみだと感じられたのである。
2人には純愛などはなく、青春らしいラブストーリーはない。キスをする事もなければ、手を繋ぐことすらなかったと聞き驚いた。その後何年も何年も経ってもそれが続くらしい。
文化祭のリベンジも高校3年生で叶ったと父は生涯このことを忘れなかった。僕が小学生の頃に行った旅行で酔った時に
「母さんと文化祭を楽しんだ高校3年生が1番楽しかった高校の思い出。高校生になったらそんな人を見つけなさい。」口うるさく聞かされる武勇伝が嫌で嫌で仕方なかった。言うまでもなく、母は嫌がりながら照れて嬉しそうだった。
娘には難しい話であるが、真剣に聞く娘をみて後悔をした。僕も娘のように聞いていればよかった。娘にもっともっと話してあげなければと。
いつも父は言っていたあの話。今更だが、僕も照れながら嬉しかったのかもしれない。2人が幸せそうなのが。
続