八十一話
ヤマタノオロチとの繋がりを断ったのが功を奏したのか、ミコトの体調は安定しており、長旅でも問題なく着いてこれた。
旅の道中で僕達はミコトと親睦を深め合い、クアンゼ同様ミコトは臥龍鳳雛のメンバーの多種多様な構成やその力量に驚いていた。
ミコトはずっとツクヨミの里で巫女として鎮魂の舞いを踊っていた事もあり、一般人よりは鍛えられた身体と恵まれた運動神経を持っていた。
また、ミコト自身の気性的にも動き回っていた方が性に合っているらしく、出会った頃の貞淑な雰囲気はどうやら意識して作っていたと思われる。
戦闘の経験には乏しいが少なくとも無茶な行動をして足を引っ張るという事はなく、護身用にクアンゼが与えた杖(落ちていた枝を加工して作成)を持って自身の身を守る事に徹していた。
ミコト自身は戦える訳では無いのでヤマタノオロチとの戦闘の時はどうするのかという懸念があったが、ツクヨミの巫女としてヤマタノオロチとの戦闘時には封印術を駆使してサポートしますと意気込んでいた。
長年オロチの魂を封じ込んできたという事もあるし、何も効果がないという事も無いだろう。彼女の舞いがオロチに通じる事を祈る。
そうしてツクヨミの里を出立してから十日が経ち、予定通りに僕らはヤマタノオロチが潜んでいると思われる洞穴を見つけ出した。
中を少し探ってみると、深さはこの前の海神の洞穴と同じくらいありそうだが道は一本道で入り組んでいるという事はなさそうだ。
「今回は蟻とスライム達を先行させる必要はなさそうでありますな」
「そうだね。この前みたいに先に戦闘を始めてブレスを受けてしまっても困るし」
「炎のブレスでありますか……対策を練らねばならないでしょうな」
レンカが腕を組んで唸る。あの強烈なブレスに何の対策も成さずに飛び込めばまた甚大な被害を被事になるだろう。
「ふむ。炎のブレスなら儂が跳ね返してやらん事もないぞ」
「本当に!?」
これは有難い。シェイランがやる気になってくれるのなら怖いものなしだ。
シェイランの立ち位置は未だに半ゲストといった所で、前に比べれば積極的に協力してくれるようになったのだが、それにばかり頼っていては他のメンバーが育たないしいずれは三行半を突き付けられてしまうだろう。
なので、シェイランから言い出さない限りは頼らない、という不文律が出来上がっていた。
「じゃが、本当に怖いのはブレスでは無い。酸欠じゃ。戦場の広さにもよるが、仮に狭い空間で炎のブレスを連発されたら空気が無くなってしまうぞ」
「酸欠か……」
それは考慮してなかった。海神の洞穴での対決の時はそれなりの広さがあったから酸欠に陥らないで済んだが今回もそうなるとは限らない。
どうしたものか、と考え込んでいたら今度はプリメインさんが助け舟を出してくれた。
「なら、酸素の供給は僕がやろう。風の力を上手く使えば、入口から奥まで空気を送り込む事も出来ると思うよ」
「おお!」
「ただ、あまり曲がりくねった道だとそれも難しくなるから、蟻達に協力して貰いたい」
「協力って?」
「入口から奥まで通じる空気穴を掘って貰いたいんだ」
なるほど、蟻達にまっすぐ空気を通す穴を掘って貰えばそこからプリメインさんが風を送ってくれるという訳だ。
「策は成ったようじゃな。あと今のうちに言っておくが、ヤマタノオロチとの戦闘の時にはワシはブレスを防いでやるだけじゃからそう思っておけ」
「分かった」
「? シェイランさんは物凄く強いのだからもっと戦って貰った方が良いのでは?」
まだシェイランの事をよく分かっていないミコトが不思議そうな顔をしている。
「強すぎて下手に動かれたら洞穴が崩落する危険性があるんだよ」
と言ったら絶句していた。そんなミコトが姿を見てシェイランは呵呵大笑した。
「ハッハッハ! そういう事じゃ! 強すぎるというのも辛いものじゃのう」
実に機嫌の良さそうなシェイランの笑い声が洞穴に響いた。
そうして作戦はまとまった。概要はこうだ。まず、僕達メインメンバーが先に入りオロチの居場所を突き止める。その後僕達のいる位置まで入口から蟻達に穴を掘り進んでもらう。
十分な広さがあれば空気穴を掘らなくても酸素が尽きる事はないだろうが念の為に確実に掘っておく。
オロチとの戦闘が始まったら、炎のブレスはシェイランに防いでもらう。プリメインさんも空気を送る役目があるのでそれに専念してもらう。
残ったメンバーでオロチと対峙する。ミコトは後方に控えていてもらう。オロチの体力を削り弱ってきたらミコトにも参戦してもらい、あわよくば封印術で更に弱体化させる事を狙っていく。
ヤマタノオロチが潜んでいる空間の広さによっては対峙出来る人数が限られてしまう可能性もあるので優先順位も決めておく。
まずは火の勇者であり炎に強い耐性を持つレンカは外せない。次いで同じく炎に強いピピにも出てもらう。ただし成獣状態だとかなりの大きさになるので広さがあれば、の話だ。
その後に魔獣使いであり魔獣達に指示を与え攻撃の起点となる僕。
ライムは炎に対しては相性が良くないので今回は宝玉の中で待機。状況に応じてストーンスライムを送り出し指示してもらう。
他のメンバーは適宜広さに応じてチィの宝玉から出てもらう事になる。
「よし、それじゃあ僕達は先に行くから、後はよろしくね」
そう言って僕は居残り組の兵隊蟻達に声をかけた。ギィィ、と元気の良い返事が帰ってきた。
さぁ、山の神退治だ。
僕達は洞穴の奥へと突き進んでいった。
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