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八話

4つに大きく分断された大岩を横切り、横穴に足を踏み入れる。奥まで例のゴブリンのものと思われる血痕が続いている。慎重に後を追いかけていく。


血痕が罠という可能性も考慮に入れて罠感知スキルも発動させている。もちろん敵襲に備えて気配感知スキルもだ。そして気配遮断スキルも同時に発動する。


気配遮断スキルは普通は自分自身にしか発動されないが魔物使いの契約スキルの副次効果により自分自身に発揮されたバフスキルの効果は契約を交わした魔物にも適応される。逆もまたしかりだ。



これは実際にステータス画面で確認した訳では無いが、おそらくピピにも固有スキルがあり、それの効果により敵のブレス攻撃や魔法攻撃を軽減させるバリアのようなものが周囲に張られている。


何故きちんとした確認が出来ないかというと、鑑定スキルがピピには効かないからだ。魔法の抵抗値が高い魔物や人間には鑑定スキルが効かない事がある。

僕はこれこそがピピがSランクモンスターの幼体である証拠だと考えている。同時にピピがSランクモンスターの幼体だと断言出来ない証拠でもあるのだが……。



いけないいけない。今は非常事態だ。調査に集中しなくては。



恐らくこの洞窟に巣食っていたゴブリンは別の何者かによって蹂躙された。この何者かの正体を突き止める所まではやらないと任務達成とは見なされないだろう。


よってこのまま調査を続行する。索敵して危険だと判断すればすぐ撤退するつもりで進んでいく。この手のリスク管理は重要だ。そしてそれを誤った事は無いと自負している。


しかしさっきから見ていると血痕は見つかるのに死体が全く見つからない。魔物同士でも捕食関係というものは存在するので、殺しただけではなく死体を食べた可能性がある。



ピピも鳥系の魔物だけあって虫系の魔物を見ると食べようとする事が幾度かあった。

ただまあ見ていてあまり気持ちのいいものではないので食べないように躾けた。パーティーメンバーからも苦情が出たからだ。


しかし今は僕達二人だけだ。文句を言う人間もいない。気持ち悪さにさえ目をつむれば食費がそれだけ浮くので捕食を解禁してもいいかもしれない。と僕は思った。



それにしても、入り組んだ地形だ。その上どうもゴブリン達のいた区画とは様相が違う。天然の洞窟ではなく硬い岩盤を削って掘り進められたような跡、迷路のようにあちこちに伸びた通路。


僕はこれらの情報からゴブリン達を襲撃した犯人の予想が大体掴めていた。そして、その予想通りの魔物を発見した。


それは蟻型の魔物だった。ゴブリンの死体を今も引き摺りながらゆっくりと奥に進んでいくのが見える。



さて、どうするか。

見た所敵はあの蟻1匹だけだ。近くに仲間がいる気配はない。好都合だ。一匹だけのうちに急襲して倒してしまおう。


「ピピ、行くよ」

「ピピィッ」


小声でピピに声をかけると任せておけ、と頼もしい返事。ポン、と背中を押すように叩くとピピは一直線に飛び出し背後から蟻に奇襲をかける。


ピピの大きくて鋭い嘴が蟻の胴体に風穴を空ける。人間のような赤い血を撒き散らしあっさりと蟻は倒れた。蟻が弱いのではない。ピピには虫系の魔物に対する特攻スキルが(恐らく)ついている。なので幼体の攻撃でも倒せるのだ。


すぐに駆け寄り鑑定スキルを使用する。



ブラッドアント

ランクC

レベル18



死んでいるのでHPとMPは表示されていない。LV3の鑑定スキルで得られる情報は少ない。だが、それで十分だった。


僕は自分の表情がどんどん青ざめていくのを自覚した。



「なんて事だ。絶滅指定種じゃないか……」



絶滅危惧種、ではない。絶滅指定種だ。

絶滅危惧種は数が少なくて絶滅の危険性がある種の事だが、絶滅指定種は、あまりにその存在が『危険すぎて絶滅させなければならない』と指定された種の事を意味する。


蟻形の魔物だとは予想していたがまさか絶滅指定種(ブラッドアント)だとは……。名前だけは知っていたが見るのは初めてだった。



ブラッドアント。その名の通り血のような真っ赤な身体を持ち、生き物の血を啜る性質を持つ。この魔物の厄介な所は、血を吸うと身体が強化される点だ。血を吸ってない時点なら倒せても、血を吸ってレベルアップすると手がつけられなくなる。


しかも恐ろしい事にこいつらは群を成して行動する上に共食いまでするのだ。下手に手を出して追い詰めると再現なく共食いでレベルアップしていき、最終的には単体でSランクに匹敵する強さにまでなってしまう。


故に単体の強さがCランクにも関わらず絶滅指定種に指定されているのだ。見つけたらギルド総出で根絶やしにしなければならない相手だ。



「大変だ。すぐに戻ってギルドに報告しないと」


そう思って身を(ひるがえ)すと、驚く表情でこちらを除くレンカと目が合った。



「「!?」」



すぐにレンカは顔を引っ込めてしまう。


「レンカ! 待って!!」


どうして僕が気配を察知出来なかったのか不明だが、どうやら後を付けられていたらしい。


ダメだ。すぐに追い掛けたのだがレンカの姿を見失ってしまった。後を付けてきた事を怒られると思ったのだろう。だが今はそんな事を言っている場合じゃない。


一刻も早くここを脱出して冒険者ギルドにブラッドアントの事を報告しなければならない。だがレンカを1人でここに置いていく訳にはいかない。アイルが危険だし、もしレンカがやられてしまったらブラッドアントがレベルアップしてしまう。


焦る気持ちを抑えて、とりあえずピピの所に戻って合流しないと、と目を向けると、ピピは満足そうな表情で腹を抑えていた。



ピピはどうやらブラッドアントの死体を食べてしまったようだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 絶滅指定種…そんな恐ろしいものが((((;゜Д゜))))))) そんな敵を一撃で倒すピピTUEEEEE! しかも食べてる…だと!? 今度はテイルが、レンカさんを追いかける場面ですね!(。…
[一言] 更新、お疲れ様です(* ´ ▽ ` *) 絶滅指定種をさらっと一発で倒すピピ凄いですね( *´艸`) そしてレンカ、もしかして特殊スキル「ストーキ…」を発動して気配たってたのかな(;´∀`)…
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