七十四話
兵隊蟻&ストーンスライムの連合軍が編成され、兵隊蟻四体にストーンスライム一体の五体編成を1チームとし、総勢10チームを送り出す事になった。
送り出す兵隊蟻の数は大体全総数の八割程度。つまり今現在チィが率いるビルドアントの兵隊蟻は凡そ六十体程もいる。
チィの腹の宝玉から延々と出てくる蟻達の数にクアンゼは仰天していた。無理もない。
「ふと思ったんでありますが……」
「ん?」
顎に手を当ててレンカが再び思案顔になっている。また何か考えているのだろうか?
「私達や蟻達はヒヒイロカネの現物を見た事がないでありますが、どうやって見つけるでありますか? 表層部分に露出しているとは限らないでありますし」
言われてみれば確かにそうだ。僕達はヒヒイロカネがどんな色形状をしているのか知らないし、洞穴の壁や転がっている岩の中に含まれているのだとしてもそれを見分けられる保証はない。
僕達が見分けられないなら蟻達は尚更見分けられないだろう。ある程度の当たりをつけられなければ、兵隊蟻達が確保した場所に僕達が乗り込んだとしてもヒヒイロカネが見つけられないという骨折り損のくたびれもうけという事態にもなりかねない。
「心配するなぜや。ヒヒイロカネの現物なら持ってる。ワシのご先祖さまがこういう時の為に原石を一つ残しておいてくれただや」
そう言ってクアンゼが背負ってきた荷物の中から一巻の巻物とヒヒイロカネの原石と思われる石の塊を取り出して見せた。
「ヒヒイロカネは通常の金より更にその輝きを増した黄金だや。ヒヒイロカネを含んでいれば少しでも光が当たればこうやって発光するぜや」
「なるほど、これなら一目瞭然でありますな」
「そして、ご先祖様が残してくれた巻物によれば、海神の洞穴の奥深く、清浄な水の泉の底にあるらしいだや」
「泉の底に……?」
「海神の洞穴はかつて海の神クラーケンが根城にしていた場所だや。クラーケンは清浄な水を好み、海神の巫女と共に湧き出た地下水の泉で度々身を清めていたらしいぜや」
思わずシズクに視線を向けてしまうが、シズクは何食わぬ顔をしてそうなんですか~! と驚いたフリをしている。
シズクの正体とクラーケンが同行している事についてはクアンゼには伏せているのでこの事を口には出来なかったのだろう。クラーケンの分身体も今は顕現していない。
周囲に落ちていた枯れ木を回収し火をつけ松明にして兵隊蟻達に持たせる。明かりさえあればヒヒイロカネは見つけられる筈だ。
「海神の洞穴はあちこちが水没してるらしいから、松明が濡れて火が消えないように気を付けるだや」
クアンゼの注意を受け兵隊蟻達がコクリと頷く。ビルドアントは喋る事は無いが普通に意思疎通出来るだけの高い知能は有している。想定外の事が起きない限りは彼等自身で対処してくれる筈だ。
そしてもしもの時はストーンスライムを通じて指令を送ればいい。
ライムが子供達に指令を送れる距離には限度があるが、その事も考えて上手く伝言プレーを送り回せる(指令を受信するだけではなく中継地点として他の隊にも伝達出来る)ように各部隊を配置して突入させる。
その為のスライムである。
現状のライムの体のサイズでは10匹生み出すのが精一杯だったので、1チームに1体という配分になった。
10体も子供を産んだライムの体は赤ん坊くらいのサイズまで収縮してしまった。出産はだいぶ体力を消耗するらしく、眠たげに目を擦りながら宝玉の中に入っていった。
宝玉の中のアジトで餌を食べエネルギーを補給し眠りに着くのだろう。復活するまでは通信が出来ないので少し時間を置いてから出発する事になった。
そうして準備が整い、蟻とスライムの連合部隊は続々と洞穴の中へと身を進めていった。なるべく戦闘は避けて、奥深い場所にある泉を確保するのが目的だ。一度目星が付けばストーンスライムとの通信で位置を特定し僕達が後から乗り込んで合流する。
蟻達が中に入ってから数時間が経過した時、ライムが過剰な反応を示した。
「テキ……! オオキイ……ツヨイ! オウエン、イル」
「ライム、直ぐに他の隊を集合させて防御体制に! 僕達が行くまで持ち堪えさせるんだ」
「ワカッタ……! ミンナ、ガンバッテ!」
ライムがストーンスライムを通じて他の隊を集めさせる。急いで僕達も中に向かう。
ライムの道案内を受けて全速力で奥へ突き進む。道中襲いかかってくる魔物達を蹴散らし、一時間程で最奥へ辿り着いた。入り組んだ構造故に進みずらいが最短距離を進めばそこまで深くはないらしい。
そうして何とか追いつく事が出来た僕達が見たのは、兵隊蟻達と戦いを繰り広げる巨大な八つ首の龍、ヤマタノオロチの姿だった。
いきなりヤマトノオロチ登場……!




