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四十六話

僕達に声を掛けてきたのは『風の勇者』ことプリメイン・セザルーサさんだった。


涼やかに緑髪を風に靡かせながら囁くように頭上から声を掛けてくるその人は、軽装の革鎧の上からマフラーを首に巻いたその見た目は美男子で正に王子様といった風貌だ。


ただ、彼女の身長は僕とそう大差はない。それなのに何故頭上から声が聞こえてくるのかというと、風の精霊に愛された彼女は常に宙に浮いているからだ。


そして、『彼女』と僕が呼ぶように、風の勇者プリメインは見た目は涼やかな美青年なのだが性別は女性である。


風の勇者はルールや常識に縛られない自由人だ。男のような格好をしてるのも宙に浮いているのも彼女の生き様を現す一つの表現方法なのだ。



「同じ場所に勇者が三人も揃うとはね。魔王の復活も近いのかな?」



ギクリ、と身体が強ばるのが分かった。まさか、レンカの正体を見ただけで看破したのだろうか? レンカが炎の勇者に覚醒したという事が今この場でバレるのはあまり好ましい事態ではない。


「三人? どういうこった? ここに来てるのは俺とお前の二人だけだろ?」


アズガルドさんが不思議そうにそう尋ねる。するとプリメインさんはこう答えた。


「いいや、三人だよ。来ているのさ、氷の勇者が」


先程とはまた違った意味で戦慄が走る。プリメインさんの発言を受けてアズガルドさんの眉が寄る。彼にしては珍しく険しい表情だ。



「……確かなのか? それは」

「ああ。直接この目で確認した訳じゃないけど、匂いがする。近くに来ているのは間違いないよ」



プリメインさんは犬並みに鼻が利き、風に乗って流れてくる匂いから様々な情報を得る事を得意としている。その彼女がそう言うのならマグナス達がルフレ砂漠に来ているのは確かなのだろう。


「……ノコノコ現れた所で捕縛するだけだぞ。今の奴等は一級犯罪の容疑が掛けられている」

「それが分かっているから姿を現さないんだろうさ。機を伺っているんだろう」


アズガルドさんが捕縛すると断言するのならそれが冒険者ギルドの上層部の決定なのだろうが、プリメインさんの言う機を伺うというのはどういう事なのだろうか?


「容疑が掛けられているだけで確定ではない。ならば取れる手もあるさ。例えば、先に大きな手柄を立てて帳消しにするとかね」


つまり、マグナスはルフレ砂漠での緊急招集クエストで大きな戦果を上げて今までの失態を拭いさろうとしているという事か。



「後になって何をしようと、奴等が罪を冒した事実は消えねえぞ。冒険者ギルドはそこまで温くはねえ」

「だから、それが『事実』ならだろう? それが確定する前に中央の信頼を取り戻せばもみ消す事も出来る。相手が例え冒険者ギルドだろうとね」



むう、とアズガルドさんが呻く。

中央というのはつまり聖光国スピルネルの中枢だ。彼等は氷の勇者を公認し支援する事で自分達の威光を世界に知らしめてきた。


彼等としても出来るなら勇者という神輿(みこし)を利用し続けたいと考える筈だ。マグナスが以前と同じように有能であるという証拠を残せば、その力を惜しんだ中央の勢力は氷の勇者の不祥事をもみ消し無かった事にするだろう。


だが、アズガルドさんが言った通り一度確定した罪を消させる程に冒険者ギルドは甘くはない。聖光国相手であろうと介入し対立する事も辞さないだろう。


しかしプリメインさんの言った通り罪が確定する前に揉み消されてしまっては、対外的には冒険者ギルドから氷の勇者及びその後ろ楯である聖光国スピルネルに喧嘩を売る形になってしまう。



マグナスも自分達が追い詰められている事実はよく理解している筈だ。ここの所冒険者ギルド内でも彼等の悪い噂は絶えない。そしてそれが事実ならいかに勇者であろうとも処罰は避けられない。


彼等にとってはここが正念場という事だ。



「せっかくの再会だというのにつまらない話をして悪かったね。ここからはいち冒険者として楽しませて貰うよ」



そう言って彼女は人混みの喧騒の中に消えていった。言いたい事だけ言って消えた、そういう印象はどうしても残るが彼女がもたらした情報が重要性の高いものである事もまた事実だった。


アズガルドさんが冒険者ギルドを地盤として広い人脈を築き高い規律と士気をもたらしているのは周知の事実だが、どんな権力にも縛られず自由な立場から世界を周り情報を集めるプリメインさんの存在も同じくらいに世界の平和と安定には欠かせないものだ。


彼等が勇者と呼ばれ賞賛を浴びるのには相応の理由がきちんとある。


しかし果たしていまのマグナスに氷の勇者を冠するだけの資格があるのかどうか、それは彼等と再会しなければ分からない事だった。




「え~、お集まりの皆さん、長らくお待たせ致しました~」



一級監査官セラフの間延びした声が広間に響いた。歓談に励んでいた冒険者達の声が止み視線が一つに集まる。セラフの横から恰幅のいい初老の男性が進み出て後を継いで話し始めた。


「冒険者ギルドグレートマスター、ギルグ・ゴルドーである。」


グレートマスターとは全てのギルドマスターを束ねる最高責任者の事だ。つまり冒険者ギルドのトップが今壇上にいる。鋭い目と威圧感はギルドは長である事を認識させるに十分なものだった。


「ここルフレ砂漠を発端にかつてない危機が訪れようとしている。まずはこれを見たまえ」


そう言って隣のセラフに促すと、セラフが鏡の魔道具をかざし魔力を注入する。


宙に浮かんだ大鏡にはルフレ砂漠の風景が移り出される。その光景を見て冒険者達に動揺が走る。



「海……!?」

「馬鹿な、砂漠に海だと……?」



そう、彼等が言ったように鏡には青い水平線が砂漠の向こうに広がっているのが見えるのだ。しかしもちろん砂漠のど真ん中に海など有り得よう筈もない。非現実的な光景が鏡の中には広がっていたのだ。


「これは海ではない。凄まじい数のスライムが折り重なって海のように見えているのである」


ギルグ・ゴルドー氏の発言は、砂漠に海が現れる事よりも非現実的な内容だった。

砂漠に海が出現したと思ったら大量のスライムだった

何を言っているのか分からねーと思うが(ry

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新、お疲れ様です\(^_^)/ 海に見えるぐらいのスライム(o゜Д゜ノ)ノ 何匹いるんだろう((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
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