二十二話
翌朝になり、十分に休息を取った僕達はゲオルクを倒す為の作戦を十分に話し合い、万全の体制で不死王退治に乗り出した。
『まず、私の部屋から移動魔法陣を用いて街のど真ん中に全員で跳びます』
ヘルメスの研究室には街の各地に繋がる移動魔法陣が用意されており、僕達が骸骨犬に案内されてきた墓地もその移動ルートのひとつだった。
全員が魔法陣の上に乗ると自動で外にワープし始める。移動した先はヘルメスが言っていた通り街の中央の大通りに位置する場所だった。
通り中を死人達が徘徊しており、昨日僕達を逃してからずっと総出で捜索していたのだと思われる。死人には疲れも何もないので一晩中動き回っても動きが鈍る事は無い。
「ワオオオオーン!!」
骸骨犬がその嗅覚を持って周囲を嗅ぎとる。
『アイザックはゲオルクの匂いを覚えています。彼の先導に従って進んでいけばやがてゲオルクの元に辿り着けるでしょう』
アイザックの鳴き声に反応し周囲の死人達がこたらに群がってくる。
「ピピ、出番だよ」
「クエエエッ」
成体に進化したピピは2~3メートル程浮かび上がると、両翼を激しく羽ばたかせる。するといつもの衝撃波が円状に広がって死人達の群れを押し出していく。
「ギャアアアッ」
「オオオオォッ」
呻き声を上げながら死人達の身体が燃え上がり、更に浄化されていく。
『鳳凰は聖獣の一角です。その炎には聖なる力が込められており死人にとってはこれ以上の脅威はありません』
炎属性と聖属性、アンデッドの弱点であるこの二つを同時に突ける鳳凰の炎は対死人の最大の切り札だった。
僕達は迫り来る死人達の群れをピピの衝撃波で薙ぎ払いながらアイザックの後をついて行く。ゲオルクを追っていた骸骨犬が急にその足を止めると、地響きが鳴り響いた。
「こ、これは!?」
「どうやら自分から出てきたようですね。死人達はゲオルクにとっても大事な戦力、このまま私達に好き放題されたら全滅させられると踏んで出てきたのでしょう」
「だからといって本人が出てきた所で結果は同じでありますよ!」
割れた地面からせり上がってきたのは、人間ピラミッドよろしく隊列を組んだ死人達の塊と、その頂上からこちらを見下ろす不死王リッチーだった。
「飛んで火に入る夏の虫、でありますよ!」
レンカがそう叫ぶと片刃剣に炎を灯しゲオルク目掛けて解き放った。
しかし、ゲオルクの身体の周囲を覆う暗いオーラのようなものに炎は弾かれ掻き消されてしまった。
「!?」
「あれは闇の衣……不味いですね」
驚愕するレンカと状況の不利を悟るヘルメスをゲオルクはせせら笑う。
「クククッ、この闇の衣の前にはアンデッドの弱点である炎も光も効かぬ」
そう言ってヘルメスがやっていたように両手で印を組む。すると、不死王の足元に固まっていた多数の死人達が融合増大していき、ゲオルクの身体も飲み込んで闇の巨人と化した。
「グオオオオオオオオオォォォォン!!!!」
巨人の口から凄まじい雄叫びがあげられた。街じゅう全てが振動する程の大音量で、レンカが堪らずひゃあっ、と怯んだ。
ピピが上空に飛び上がると、両翼を羽ばたかせて衝撃波と炎を放つ。闇の巨人は両腕を使い防御体制を取る。
巨人を覆う闇の衣はピピの炎すら防いでしまった。
「クエエ~~!」
そんな~! とピピが情けない声を上げる。このままではこちらの攻撃が通らない。僕はヘルメスに助言を乞う。
「ヘルメス、どうにかならないの!?」
「闇の衣を破りさえすれば……どんなに小さくてもいい、小さな穴を開けられれば、そこにピピさんの炎を集中させれば空いた穴から炎が侵入して中のゲオルクの身体は蒸し焼きになるでしょう」
「穴……か」
どんなに小さくてもいいっていうなら……。僕は急いで道具袋の中から各種の魔石を取り出すと空中に放り投げた。
「何をしようと無駄だ! 握り潰してやる!」
ゲオルクが巨人の腕を伸ばして妨害しようとしてくる。
「クエエエッ!!」
ピピがそうはさせないっ!! と叫び全身の羽根に炎を纏うと火の鳥と化して一直線に巨人の腕を貫く。
しかし、貫かれた穴はすぐにじわじわと狭まっていきやがて元通りに塞がってしまった。穴を開けるだけで精一杯で中に炎を放射するまでには至らなかったのだ。
だが、問題はない。
既に準備は整った。
「炎の赤、風の緑、水の青、土の茶、光の黄、闇の黒、無の透明、混じりて虹の源泉と為せ
七色の光」
空中に放り出された各種の魔石を触媒に六種の魔力を融合、増幅させ一筋の光の矢と変えて放つ。
光の矢は闇の衣の防御を易々と貫き、小さな穴を開けた。
「ピピ、今だ!」
「クエエエエッ!」
合点承知! とピピが両翼を羽ばたかせて聖なる炎を闇の衣に空いた穴目掛けて放った。
「グオオオオアアアアアッ!!」
闇の衣と巨人の身体の僅かな隙間を聖なる炎が駆け巡り焼き払っていく。蒸し焼き状態にされた巨人は動きが鈍り再生する様子も見られない。
「まだ終わりではありませんよっ!」
ヘルメスがそう叫ぶと骸骨犬の背に乗り跳躍。
七色の光により穴が開けられた場所、心臓目掛けて懐に持っていた薬品を投げ込んだ。
カッ! と太陽の光のように眩しい光が視界を埋め尽くし染め上げた。
「グギャアアアアアア~~~~~~!!!!」
ハイエリクサーが放つ光によって内側から闇の衣は消し飛び、巨人の身体を構成していた死人達の身体も消滅する。
残ったのはゲオルクの身体と、その中心に位置する賢者の石。
その賢者の石もハイエリクサーの効果によりヒビが入り、砕け散ろうとしたその時、追い詰められたゲオルクはとんでもない行動に出た。
賢者の石が砕け散ったその瞬間、隠し持っていたもう一つの賢者の石を心臓に突っ込んだのだった。
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