二話
僕は、パーティーを追放されたその足で宿泊していた宿から出た。彼等と同じ宿で一夜を過ごす気にはなれなかったからだ。
幸い、幾らかの食料と金、道具は持たされていた。Sランクパーティーの彼らからすれば端金、大した道具も入っていない。自分達が使わないゴミを僕に処分させたようなものだ。しかし一人と一匹になった僕たちには大事なアイテムだ。ありがたく使わせて頂こう。
外に出て、最後に宿の方を振り向くと宿の窓からこちらを見ていたノエルと目が合った。だがすぐに、マグナスが優しげな微笑みを浮かべて彼女の肩を持ちその場から離れていった。
ああ、そうか──
ノエルはマグナスと──
同じ村の出身で幼なじみのノエル。選定の儀によって職業が判明した時、僕達は冒険者になる事を誓った。頑張って頂点のSランクを目指そうと。
優しく健気に僕を支えてくれる彼女に僕はいつしか仄かな恋慕を抱いていた。
けど、所詮それは身の程知らずの高望みでしかなかったのか。世界に3人しかいないと言われる聖女の認定を受けた彼女には、同じように世界に4人だけと言われる勇者がお似合いだ。
所詮僕には……。
「ピピィ……」
悲しく切なげな声でピピが鳴き頬を擦り寄せてくる。泣かないで、と言っているのだ。
「ありがとうピピ。行こうか」
僕はその場を離れた。彼らと同じ街に留まっていては鉢合わせしてしまうかもしれない。今の僕にはそれは耐えられそうにない。夜中ではあるが僕は街を離れ魔物達の蔓延る外界へ足を踏み出した。
◆
気配感知スキルを使って敵と遭遇しないように気を付けながらしばらくピピの背中に乗って移動し(ピピは子供だが僕を乗せられるくらいに大きい)手頃な寝床を探す。
荷物の中にテントがあればそれで一夜を過ごしても良かったのだが、残念ながらなかったので代わりの寝床を見つけなければならない。
この辺りは大きな山脈が連なっており自然に出来た洞窟があちこちに穴を覗かせていた。その中の一つを見つけると、ピピの脚力と微妙に身体を浮かせられる程度の羽根の羽ばたきで断崖絶壁の横穴の一つに入り込んだ。
地上からそれなりの高さがあるし普通の魔物では入って来られないだろう。道中の森で拾った枝で入り口を塞ぐ。こうすれば魔物が侵入して来ても音ですぐ気付ける。
パーティー時代はよくこうやって野営や野宿の準備をしていた。途中からは僕だけの仕事になっていたな……。
余計な事を考えるのは後だ。今はやるべき事をやる。
ピピの柔らかい羽根は寝床代わりに使える。あと用意するのは明かりくらいだろう。このまま寝てもいいが今のうちに荷物の中身を確認しておきたい。
ランプに炎魔法で灯りをつける。ちなみに僕は魔獣使いではあるが途中からスカウトなどの色々な仕事も併用していた為にそれなりのスキルを持っている。
ただしこれらは本職ではないのでレベル2~3、つまり初級程度のスキルまでしか使えない。僕は割と器用貧乏のきらいがあり、様々な職業のスキルを使う事が出来た。これが無かったらもっと早くにパーティーを追い出されていただろう。
「ぐうぅ……」
大きな腹の音が洞窟に響く。横を見るとピピが恥ずかしそうに顔を伏せていた。
「お腹が空いたのかい?」
「ピピィ……」
恥ずかしい……と言っているが腹は鳴り続けている。身体は正直だ。ピピは子供の癖にとてつもなく身体が大きく3メートル近くある。人間の頭ですら丸齧りに出来るくらいのサイズだ。よって食べる量も半端じゃない。
パーティー時代はピピの食費が悩みの種だった。財布の会計帳簿も任されていた僕はあの手この手を使って節約に励んだものだ。
「二人だけになっちゃったからこれからは食費をどうするかも考えないとだな~ピピ」
そう言って荷物袋の中にあった乾燥食を全てピピにやった。ピピはあっという間にそれを平らげてしまった。まだちょっと物足りなさそうだが今はもうこれ以上は与えられない。明日まで我慢してもらおう。
ピピはテイルは食べないの? とでも言いたげにつぶらな瞳で覗き込んでくるが今は正直全く食欲が湧かない。
荷物袋から中身を一つずつ取り出し確認していく。
2000ゴールド
初級傷薬4個
中級傷薬8個
毒消し草2個
水2L分
ランプ1個
ナイフ1個
鍋と食器セット1つ
毛布一枚
魔石各種2個ずつ
(炎、水、風、土、光、闇、無属性)
本当に最低限のものしか入ってないな。まあ1人で使う分には大丈夫だ。足りない分はスキルで補填できる。
よし、全部確認したし戻すか、と袋を開けたら中にまだ一つ残っていた。取り出して確認してみるとそれは虫眼鏡のような分厚いレンズが嵌め込まれたモノクルだった。
「これ……使い方が分からなくてずっと放置してた奴だ」
確か古代遺跡の奥の宝箱に入っていて特殊な魔導具かと期待して鑑定したけどよく分からなくて売るにも売れずそのままになってたんだよな。
マグナスも使用用途が分からないし使わないから僕に押し付けたんだな。
「鑑定スキルがもっと高ければ何か分かるのかも知れないけど……」
まあいいや、取っておけばいつか分かる日も来るだろうとそれを中にしまうと僕はピピの身体を枕にして寝るのだった。
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