十六話
「それで、北の竜の山脈に向かうにしても、当面の目的地はどうするのでありますか?」
レンカの言う通り、竜の山脈までの道のりは遠く険しい。いきなり一足飛びに目的地までは行けないので(ピピの背中に乗って運んで貰えば出来たかもしれないが、また襲撃騒ぎが起きるといけないのでそれは止める事にした)道中のルートと立ち寄るポイントを決めて行かなければならない。
「とりあえず王都ネフタルから北に行って一番近い大きい街はノーストラダムだから、そこを当面の目的地にしよう」
「了解しましたであります」
僕達はこれからの長旅に備えて食料や水、回復アイテムや魔石などを買い込むと北の街ノーストラダム方面に向かう馬車に乗り込んだ。
ピピは幼体の姿でも3メートルはあり普通の馬車だと中に入り切らないので四頭引きの四輪大形馬車だ。
コーチと呼ばれるタイプで、人を指導するという意味のコーチの語源にもなっている馬車だったりする。
コーチには僕達以外にも乗客が乗り込んでおり、どこぞの令嬢と思われる上品な服に身を包んだ女の子にその執事、旅の老夫婦、北の街に商談に向かう商人など様々な人がいた。
4時間程馬車に揺られて最初の休息地に到着すると僕達は改めて自分達の今のステータスを確認してみる事にした。
テイル・スフレンクス LV30
職業:魔獣使い
HP408(+278)
MP402(+128)
攻撃力222(+142)
防御力454(+236)
素早さ212(+142)
魔法攻撃力238(+144)
魔法防御力379(+189)
「は?」
思わず間抜けな声が出た。何だこれは。補正値で元のステータスの倍以上強化されてる。LV30でこのステータスは有り得ない。続けてピピのステータスも確認してみる。
ピピ
鳳凰(Sランク)
鳳凰の雛が成体に進化した姿。美しい七色の羽根を見に纏い物理防御魔法防御共に極めて高い耐性を誇っている。なお成体に一度進化すると捕食スキルは消える。以降は普通に戦闘経験によってレベルアップしていく。
鳥系生物の頂点に立つ存在で鳥系の生物なら動物魔物問わず従わせる事が出来るスキル「鳥獣族の王」を所持している。
LV21
HP735(+39)
MP403(+82)
攻撃力380(+24)
防御力655(+65)
素早さ376(+21)
魔法攻撃力390(+28)
魔法防御力530(+57)
うわ、さすがSランク鳳凰。LV21でこの強さ。しかも鳥獣族の王だって? 鳥系の生物なら動物魔物問わず従わせられる? 支配者級の能力じゃないか。Sランクならまあ確かに支配者級はゴロゴロいるだろうけど。
支配者級というのは自分よりも下級の魔物や生物を従わせられる能力を持ついわばボスモンスターの事だ。大抵の場合は自分と同じ属性や種族の低級モンスターを従わせている。
「凄まじい補正値でありますな……」
横から魔導書を覗き込んでいたレンカが若干引き気味に言う。強存強栄の効果でどうやら使役モンスターステータスの4割分の数値が魔獣使いに加算されているようだった。
魔獣使いの加護は魔獣使いのステータスの3割が使い魔に加算されるから、一割分も多く魔獣使いの方が加護を得ている事になる。
二体目以降がどういう計算式になるのか分からないが、一体だけでもこれだけ化物じみた強化が施されるなんて、ヤバすぎる。
恐らく今の僕なら氷の勇者マグナスと一騎討ちでもほぼ互角の戦いが出来てしまう。
世界に四人しかいない勇者と低ステータスの魔獣使いが対等だぞ。
更に色々見てみるとピピのスキルは鳳凰の守護がLVが一つ上がってLV3になっていた。LV一つにつき一割減なので三割減だ。バリアとして考えるとなかなか使える。
更に鳳凰の守護とは別に元々覚えていた炎、氷、魔法、物理の耐性スキルが一ずつ上昇していた。
他にも虫系特攻に(強)が追加され、虫系モンスターに対して3倍の攻撃力に。鳥獣族の王のスキルにより鳥獣族のモンスターは支配下に置けるので実質虫系と鳥獣族系には無敵だ。
2種族に対して無敵とか信じられない……。
鳳凰の生態の説明に書いてあった通り捕食スキルは消えている。これはピピを幼体に戻しても同じだった。幼体を成体に進化させるには特別な手順が必要だったが一度なってしまえば二度やる必要はなくなるらしい。
「どうやらピピ殿の成体の姿もそうですがテイル殿の実力もなるべく隠していた方が良さそうでありますな……」
「うん……」
そうして僕とピピのステータスの確認が終わり、次にレンカのステータスを見ようと思ったのだが、お二人の後で私のステータスなど恥ずかしくて見せられないであります!と駄々を捏ねられて結局見せて貰えなかった。
気持ちはまあ分かるけど、戦力の把握は大事な事なのになあ……。とはいえ数字や文面だけで全てを測れる訳では無いので、後は実戦で測って行けばいいか、と自分を納得させた。
そうして休憩が終わって再び馬車に乗り込んだ僕達に思わぬ事態が発生する。
「山賊だあーーーー!!」
森の中で山賊に囲まれてしまったのだ。
ステータスの数値化が想像以上に面倒くさいので次回以降は詳細な数字は出さないようにします(¯―¯٥)
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