十三話
「Dランク冒険者の僕がSに昇格って……どういう事ですか?」
「まあ、詳しい説明もギルド長への詰問も後にしましょうか~今は優先させる事がありますから」
「そうですね。一刻も早くブラッドアントの残党を滅ぼさないと」
僕の口から出た『ブラッドアント』という単語に再び周囲がざわめき始める。セラフはそれを制するようによく通る声で叫んだ。
「静粛に! 今聞いた通りネフタル郊外の洞窟内にブラッドアントの巣が確認されました!
幸いテイル様と相棒のピピ様とレンカお嬢様の活躍により女王は倒されましたが、まだ洞窟内には兵隊蟻達が生き残っています」
普通に喋ろうと思えば喋れるんだな……当たり前だけど。
「ブラッドアントって……絶滅指定種かよ」
「でも女王を倒したって」
「信じられねえって言いたい所だけど、鳳凰だからな……」
冒険者達はいきなりの事態に驚きを隠せないが、女王が既に倒されたという事を聞いて最悪の自体は既に過ぎ去っているという事実にどこかホッとしているようだった。
「そこで、冒険者ギルドネフタル支部は私がギルド長代理として只今を持って緊急討伐クエストを発令します。この場にいるB級以上の冒険者達はもれなくブラッドアントの討伐に参加して下さい。これに逆らった場合冒険者の資格剥奪となります」
「ゲェッ まじかよ!」
「資格剥奪って……逃げらんねえじゃねえか」
「いやでもブラッドアントだぞ……放置してたら王都が滅びちまうよ」
「やるしかねえか」
若干まだ戸惑いはあるものの、それだけの非常事態だという事を理解した冒険者達は、緊急討伐クエストへの参加を受け入れたようだった。
そうしてすぐに討伐隊が編成され、ブラッドアントの巣へ冒険者達が乗り込み無事に残党を全て狩る事が出来たのだった。
◆
新たにギルド長(代理)となったセラフを部屋の主として執務室で僕は彼から詳しい説明を受けていた。
「実はギルド長の悪さは前からギルド本部は把握していたんですよね~」
「え? ならどうして放置してたんですか?」
「いや~テイル様には本当に迷惑を掛ける結果になって誠に恐縮なのですが、あえて泳がせておいたんですよね~。
逃げようのない失態を侵すまで」
セラフの説明によると、ギルド長の父であり先代ギルド長であったバルギルダ・バラム氏の親の七光りを利用してやりたい放題していたんだとか。
「もちろん即刻罷免して罰を与えようとする動きもあったんですが、彼は亡き先代ギルド長の忘れ形見でありますので~
現ギルド本部の職員にも先代の世話になった方が大勢いらしてですね~まあ大目に見てあげようじゃないか、的な意見が多くて、強硬姿勢が取れなかったんですよ」
「それが今回は通ったと?」
「レンカお嬢様のお陰ですね~。お嬢様がゼンランド家の隠密部隊に臥竜鳳雛の調査をさせていたのはご存知で?」
「ええ、まあ……」
レンカが長年調査させて溜め込んだ資料をギルド本部に提出して僕の冒険者ランクが不当に下げられていると直訴したらしい。それが動かぬ不正の証拠となって一級監査官であるセラフが動いたのだという。
「私はゼンランド家とは前からご縁がありまして~貴方様と臥竜鳳雛の事はよく伺っていたのですよ。私が動けば他の連中も傍観は出来ません。」
つまり実際はレンカの訴えにセラフが耳を貸してくれたお陰で僕は助けられたという事だ。それを話すと彼はいえいえ、と首を横に振り否定した。
「それは好意的に解釈しすぎですよ~私は前から貴方様の臥竜鳳雛での扱いもレンカお嬢様から聞いて知っていたのですから~
まあ、今回の件はそれに対する私なりの謝礼の一つという事で~」
暗にそれは彼が善意だけでは動かないという事を示していた。一級監査官ともなると色々なしがらみがあって思うようには動けないのだろう。
「それにしても、謝礼の一つって……?」
「ええ、実はまだまだあるんですよ~」
そう言うと彼は懐から一つの宝玉を取り出し机の上に置いた。透明かと思えば黒く、黒かと思えば真っ白に、全く色味が固定されない不可思議な宝玉だった。
「これは?」
「進化退在の宝玉と言いまして、これを体内に取り込む事で成体に進化した魔獣を幼体の姿に戻せるのです~もちろん再び成体の姿にもなれます。自由自在という事ですね~」
「それは凄いですね。でも何故?」
「ピピ様のお身体はちょっとサイズが大きすぎますから、そのままだと入れない場所が出てくるでしょう~? 幼体なら今まで通りに入れますから」
確かに今のピピの身体のサイズだと大きすぎてギルドの建物の入口を通れない。なのでレンカにピピを預けてきたのだ。
「それにSランクモンスター鳳凰ですからね~。伝説の存在と言ってもいい。それが実在ししかも契約されていると知れば悪巧みに利用しようとする輩もたくさん現れるでしょう」
鳳凰自体を操れなくてもテイマーである僕を何らかの方法で言う事を聞かせてしまえば幾らでも悪事に利用出来るという訳だ。
普段は幼体の姿で有事の際に成体に進化させるのがベストだろう。
そういう訳で僕は有難く進化退在の宝玉を受けとったのだった。
「あとこれも渡しておきます~」
「これは?」
セラフが机の上に置いたのは、かなりサイズの大きい宝石だった。あれ、これどこかで見た事が……
「女王の核です」
「ブラッドアントの女王の……?」
そういえば、女王が兵隊蟻を収容していたあの腹の宝石によく似ている。というかそのものだった。
「それだけ消滅せずにあの場に残されていました~。恐らくそれは核であり卵です」
「卵って……まさか」
「ええ、しばらく経てば次世代の女王が卵から孵るでしょう。」
「そんな……!」
「しかもブラッドアントの系譜は世代を重ねる事に進化します~。より凶悪で厄介な能力を持つ新種に。ブラッドアントは第4世代。女王の位階はAですから、次に生まれてくる次世代の女王はSランクになるでしょう~」
空いた口が塞がらない。そんなに凶悪な性質を持っていたなんて、そこまでは知らなかった。
「だから貴方様に託すのですよ~貴方様なら契約出来る筈です。」
「僕が……次世代の女王と契約……」
「貴方様のスキル『強存強栄』ならばそれを可能にします。あれは、Sランクモンスターとしか契約出来ない代わりにいくらでもSランクモンスターと契約出来る、そういうスキルなんです。所謂縛りスキルというやつですね~。」
「いくらでもって……」
僕が契約出来る枠は一つしかないと思い込んでいたけど、Sランクモンスターしか出来ないというなら出来なくて当然だ。しかも、Sランクモンスターなら無制限に契約出来るって……とんでもないスキルだ。
「それだけではありませんよ~。魔獣が契約した魔獣使いから加護を得て強くなるように、強存強栄は魔獣使いも魔獣の加護を得て強くなるのです。
Sランクモンスターの加護ですから。今の貴方様の身体は凄まじい強化を受けている筈です」
「僕の身体が……?」
全然実感出来ていなかったけど……。後で鑑定してステータスを確認してみよう。
「あ、それとあともう一つだけ。貴方様のSランク昇格に伴い臥竜鳳雛の名を現臥竜鳳雛のパーティーから剥奪した上で貴方様のパーティーに譲渡しますから」
「ええ!?」
「貴方様が抜けた現臥竜鳳雛パーティーにその名を名乗る資格はないと判断致しました。なので彼等はAランク降格と共に臥竜鳳雛の名を剥奪されます」
Sランク昇格だけでなくて臥竜鳳雛の名も……実は密かに臥竜鳳雛の名は気に入っていたから僕がまたその名を名乗れるのは嬉しいけど……。
「これは謝礼ではなくてお嬢様へのプレゼントです。お嬢様とパーティーを組んだのですよね?」
「ええ、彼女は非常に有能ですし、パーティー結成を拒む理由がありませんから」
本当は一度断ってるんだけどね。
「ありがとうございます。レンカお嬢様をどうかよろしくお願いいたしますね」
そう言ってセラフは僕に頭を下げたのだった。
いっぱいご褒美を貰っちゃいました
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