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百二十四話

ウラヌスside


「一体どうなっている! 何故奴らは既に我が国土に侵入してきているっ!?」


いつもは冷静な態度を(くず)さない皇帝ブラマンドラが今回ばかりは取り乱している。

無理もない。私も、まさかあんな方法で侵入工程を短縮してくるとは思っても見なかった。

ビルドアントクイーン……あんな恐るべき能力を所有しているとは……あんなのが相手では正しい戦略など立てられる筈もない。


怒鳴り散らす皇帝に対して誰も答えない。誰も分からないのだ。開戦からたった一週間で自国の領土内まで敵が攻め入って来ている理由を。


皇帝ご自慢の魔獣兵団も予定の半分、二万五千しか産み出せてはいない。予定の半分な時間で敵が来てしまったのだから当然だ。


そして、連絡兵から告げられる驚愕(きょうがく)の事実の数々は、場を更なる混乱に包んでいく。


「た、たった一日で敵軍は最南端の竜の山脈の(ふもと)に基地を製造した模様です……」

「た、大変です! 国内の主要な港のほぼ全てが敵襲により攻撃を受け壊滅! 資源も奪われました」

「港を抑えられては補給物資が……これでは敵軍基地に攻め込むまでに食糧が持ちません……」

「城内に備蓄されている水と食糧も一週間が限度、それ以上は……」


最早誰も顔を上げられる者は居なかった。皇帝だけが、気が触れたかのように笑い続けている。


「ふ、はは……フハハハハハッ! 何だ、何なのだこれは? 一体何が起きている!」


その時私が(ふところ)に持っていた携帯用通信機にも連絡が来る。


「もしもし、何!? 全滅した? アイツら全員か!?」


私が助っ人として用意した連中も全員やられたらしい。しかも、(ほとん)ど敵に大した打撃も与えられずに。私の『全滅した』の声に過剰反応した皇帝が掴みかかってきた。


「貴様だ、貴様のせいだ! 貴様が現れてから何もかもがどんどんおかしくなっていった! 貴様の力さえ借りなければ……!!」

巫山戯(ふざけ)るんじゃないよ!!」


私は掴みかかってきた皇帝を突き飛ばす。重臣達に受け止められ押さえつけられる。


「皇帝っ なにとぞ、落ち着いて下さいっ」

「貴様さえ、貴様さえ~~~~!!」


私は指の爪をガジリ、と噛みながら頭をクシャクシャする。


「クソがっ! 話を持ちかけた時は喜色満面で受け入れた癖に……不利になった途端にこれだ! これだから人間ってヤツはっ ああああああああっ!」


地団駄(じだんだ)を踏んで怒りを散らす。皇帝を除く残りの忠臣達が胡散臭(うさんくさ)げな者を見る目でこちらを伺っている。


「……何だよ? 何か言いたい事でもあるのか?」


忠臣の一人がおずおずと口を開いた。


「その……貴殿は一体何者なのだ? 皇帝から会わせたい者が居ると聞いて集まってみれば、皇帝はこの通り……何が起きているのかサッパリだ」

「馬鹿に説明したって分からんだろうが。黙って突っ立ってろ。それぐらいしか能がないんだから」

「なっ 何だと!?」

「貴様ッ 何様のつもりだ!」

「おい、誰かッ! 誰かこの無礼者をつまみ出せっ!」


ギャアギャアギャアギャアと虫共がやかましい……!


「~~~~~~! あああもうウザッてえ!! マグナスゥ!!」


私が叫ぶと同時に氷の勇者マグナス・レインが音もなく現れた。彼の眼は、この場の誰よりも、氷の大陸と呼ばれるザカンドラ帝国領の何ものよりも冷たかった。


「喰らっちまえ!! 役立たず共は全部っ! 戦力として使えねえならまだ()のほうがマシだ!!」

「…………了解」


チャキッ、と鍔を鳴らす音が部屋に響く。突如現れた男の、人間離れしたシルエットに皆怯えを隠せないでいる。


そして、惨劇が始まった。











不死王ゲオルク率いるゾンビ軍団を返り討ちにしたヘルメスは、とある作戦の為に数人の護衛を付け拠点を後にした。


三日後、彼女達はザカンドラ帝国が誇る機械兵達を何体が破壊して持ち帰ってきた。それを基地の研究所まで持ち込み、クアンゼと共に寝ずの研究にひたすら打ちこんでいった。

一週間が経ち、何も変化は無い。ビクトーヌ城から進軍が始まったという報告も無い。そろそろ食糧の貯蓄も尽きる頃の筈だが……ビクトーヌ城で何が起きているのか、調べなければならない。


その為に選ばれた人員が一級監査官セラフこと元フランベルク帝魔国右大臣ブリューナク・ウルブスだった。蛇の呪毒が解呪された今は普通に軍服を来た美丈夫である。


「よ~し、完成しただがや! 早速試し撃ちだぜや!」

「上手くいくと良いんですが……」


二人が開発していたのは長距離を飛行するミサイルだ。とあるモノを弾に込め長距離を飛ばしビクトーヌ城まで到達させるのが目的だ。

それは、ヘルメスが長距離ミサイルと共に開発したマーキングクリスタル。


これは一言で言えば転移魔法の移動先として設置した場所を術者に覚えさせることが出来るモノだ。要は、ブリューナクが跳べるように目印となるモノを置いて一発でビクトーヌ城まで転移させるのが目的だ。


そうしてブリューナクが先に城を偵察して安全を確保した後に、僕達臥龍鳳雛の本隊が突入する手筈になっている。



本来の予定ではビクトーヌ城から進軍したザカンドラ軍がこちらに向かっている間に敵の本拠地まで一足飛びに行って敵の大将を叩いてしまう予定だった。

ただ、何が起きているのかビクトーヌ城は沈黙を保っているので今のこういう形に落ち着いた訳だ。



何度かの実験を済ませ、いよいよ本番の時となる。クアンゼがミサイルの弾の中にマーキングクリスタルをセットし、ヘルメスがクリスタルとブリューナクの魔力を紐付けさせた。


「長距離弾道ミサイル、発射だでや!!」


クアンゼの合図によりミサイルは寸分違わず目的地へと到着し、ビクトーヌ城の庭先へと先端部分が突き立った。


「では、いきます……長距離瞬間移動!」


テレポートは無事に成功し、ブリューナクはビクトーヌ城へと侵入した。


そこで彼を待ち受けていたのは、夥しい量の血と、惨劇の跡だった──

自滅していく敵軍( º^º; )

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