一話
一度コテコテのテンプレ追放ものをやってみようと思い連載を始めました。よろしくお願いします。
ざまあ要素は十三話あたりまでお待ち下さい。
6/7追記
主人公の名前をルイン→テイルに変更しました。同じ題材で主人公の名前が一文字違いの商業作品を見つけてしまったので
2023 8/10
ライザ・ブリューナク→ライザ・ブランドルに変更しました。
「テイル、今日で君はクビだ」
「そんな……!」
Sランクパーティー「臥竜鳳雛」のリーダー、金髪碧眼、長身痩躯で彫刻のように整った顔を持ち氷雪魔法を操る魔法剣士、
「氷の勇者」マグナス・レインが冷たい声音で僕にそう告げる。
「ハッキリ言ってな、お前らは足手纏いなんだよ!」
パーティーの切り込み隊長、大剣を背負い荒々しい緑髪を逆立てた鋭い目付きの大男、
「旋風の剣」ライザ・ブランドルがこちらを睨みつけて叫ぶ。
「対して役に立たないし~無駄飯喰らいだし~無能に払う金はないってゆうか~?」
様々な攻撃魔法を操り敵を駆逐する凄腕の魔術師
「万象の魔女」シルヴィ・ギエムは自身の腰まで伸びた黒髪の三つ編みをほどき手入れをしながら気だるげに言う。
「皆、僕たちを追放するのに賛成なの……!?
ね、ねえ……ノエル、君もなの?
君まで僕が居なくなればいいと思ってるの?」
銀色の髪と瞳を称え修道服に身を包んだ治癒魔法と光魔法の使い手
白銀の巫女ノエル・スプライドはこちらに目線を合わせずぼそりと小さな声で「ごめんなさい……」と呟いた。
呆然としていると壁にかけられた鏡には、歳の割には低身長で童顔の茶色い髪の少年……つまり僕の真っ青な顔が映し出されている。
告げられた事実のあまりの衝撃に僕は揺らめく。ぼふ、と柔らかい感触が僕を受け止めた。
「ピピィ……」
僕が契約した唯一のモンスター、ピピが心配そうに僕を見つめている。
どうして、どうしてこうなってしまったんだ……。
◆
Sランクパーティー・臥竜鳳雛は今から4年前に結成されたパーティーだ。
魔法も剣も使えるマグナスに卓越した力と剣技を誇るライザ、後方から様々な攻撃魔法で支援するシルヴィに回復と対アンデッド役をこなすノエル。
そして魔物と契約を交わし支援する魔獣使いである僕、テイル・スフレンクス。
同じ村の出身である僕とノエルは王都で仲間を探していたマグナス達と意気投合しパーティーを結成した。
パーティーの名前、臥竜鳳雛の意味は伏せている龍と鳳凰の雛、それぞれ、まだ世間に知られていない傑物と、将来が大変有望な若者を指している。
駆け出しの僕らだけど将来は必ず才能を開花させ頭角を表していくという決意を込めた名だ。
その名前の通りにパーティーは破竹の勢いで快進撃を続けていった。僕はそんな彼らに付いていくので精一杯だった。
魔獣使いは魔物と契約を交わし使役する職業だ。人により契約出来る数はまちまちで生まれ持った数が変動する事はない。僕は一体しか契約できる枠が無かった。
だけど魔獣使いという職業自体が珍しく滅多にいない職であり、契約する魔物が強ければ別に何も問題はなかった。
ピピはパーティー結成の祝いとしてマグナスから送られた鳳凰の卵からかえった雛だった。マグナスが旅の商人から買い取った物を僕にくれたのだ。
本当にそれが鳳凰の卵なのか確証は無かったが、もし本当に鳳凰の雛がかえるのなら僕に使役させた方がいいだろうという判断だった。
そうしてピピが生まれ僕と契約を交わし将来は鳳凰に育つのだとパーティーの期待を一心に背負っていたのだ。
でも……ピピは未だに雛のままだ。
どんなに戦闘に参加させても、どんなに餌を与えても一向に成長する兆しが見えなかった。それでもピピは子供の魔物としては規格外の強さを持っており旅の序盤から中盤にかけては頼れる壁役として活躍出来ていた。
しかし敵が強くなるにつれ成長しないピピはだんだんパーティーでの居場所を失っていき、
その不足を埋める為に僕は買い出しや料理、荷物持ちに斥候、ありとあらゆる雑用をこなした。
そんな身を削るような努力もどんどん成長し先に進んでいく彼らにとってはあまり意味を為さないものだったのだろう。
そうして僕はマグナスに呼び出され最後通告を受けた訳だ。
「テイル。今聞いた通りだ。君たちの残留を望むメンバーは一人もいない。もうこのパーティーに君たちの居場所はない」
「………………」
「だが、君が今まで私達に着いていく為に色々な努力をしてきた事は知っている。それに、魔獣使いが貴重な職というのも事実だ」
「………………」
「だから、1つ提案だ。ピピと契約を解除して新たな使える魔獣と契約を交わすんだ。そうすればパーティーに残留してもいい」
「それは……」
それは僕にとっては悪魔の提案だった。魔獣使いは契約できる魔物の数が限られている。(僕の場合は一枠限り)その枠の中でなるべく強い使える魔物と契約を交わそうとする。しかし、実際には契約してみないと分からない事も多い。敵として戦った時は強く思えたのに仲間にしてみたら使えなかったという例もあるのだ。
だからそういう時の救済措置として魔物との契約を解除する事が出来る。マグナスはそうして契約の枠を一つ自由にしてからまた別の魔物と契約を結べと言っているのだ。
ただしそれには、契約した魔物の命という対価が支払われる。契約とは魔物の命を魔獣使いに捧げる行為。そして、契約が解除されるとその命は元の身体に戻らず消滅するのだ。
つまり、ピピを、僕の相棒を見限って殺せと言っているのだ。
思わずピピの顔を見る。
「ピピ、ピピィ~……」
魔獣使いは契約した魔物と言葉を交わす事が出来る。今ピピは自分と契約を解除しろと言った。
僕の未来の為に、自分の命を犠牲にしろと言ったのだ。
ピピ……それは出来ないよ。
そんな事をする奴は、魔獣使い失格だ。
僕は意を決して口を開いた。
「せっかくの提案だけど……僕は辞退するよ」
「そうか……残念だ」
そうして、Sランクパーティー臥竜鳳雛から僕は追放された。
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