8話 何もかもどうでもいいわ
…………犯された。
もう、残酷な程に。
私には後悔の念が押し寄せてきていた。確かに、街へ出て得たものは大きかった。
でも、それ以上にーー失ったものの方が大きかったーーーーー……。
「う……うぅっ……!ふっ……」
次から次へと涙が溢れ出る。
「うっうああっ……あああ!!」
止まらない。何で、どうしてこんな事になってしまったのーーー……?
「アーク!一日も何の連絡無しにどこへ行っていたの!
……これ以上私達に迷惑をかけないで頂戴。」
絶望した私は王宮に戻ってきた。けれど、何も変わらず、私に優しく手を差し伸ばしてくれる人はいなかった。
お母様の説教を受けながら、私はある一つの事を考えていた。
ーーー死にたい。
何もかもどうでもいいわ。私に生きる気力なんてない。死にたい。
その衝動に駆られ、お説教の途中だというのに私は翼を出して飛び去った。「アーク!」お母様の声が聞こえるけれど、私は無視してその場を後にする。お説教なんて聞きたくない。
ーーーーー優しく、されたかった。どうして、どうしてよ!ただ抱き締めて欲しいだけなのに……っ!いつもいつもそうっ!お父様もお母様もっ!!
……私が死んだらきっと気楽だわ。もう死のう。衝動は決心に変わっていった。けれど、冷静になって私には一つの考えが浮かんだ。
「花……」
私は生まれてこのかた、花だけは見た事が無かった。街へ出ても花なんて無かった。きっと、この魔界には無いのだろう。ならばーー……
空が青く澄み、空気も綺麗で、草木が生い茂り、「花の咲き乱れる」、世界で最も美しいと言われる場所ーー
『Angel Hearts』
へ。私はそこへ行く事へ決意を決めた。