表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

7年目の約束

作者: ひろきち

思い付きで書いた短編です。

続きも書けそうですけど、とりあえずは短編で。

神奈川県の中心地である大都市横浜

から、数駅進んだ各駅停車の小さな駅。


「懐かしいなぁ~」

小学校3年生まで過ごした俺の生まれた町。

高校2年の春。俺は7年ぶりにこの町に帰ってきた。


親父の転勤では本当あちこち行った。

大阪、鹿児島、沖縄に各1年。そして急に海外でアメリカに4年だ。

親父の任期はあと2年あるんだけど、日本の大学に通いたいという俺の想いもあり

俺だけ一人日本に帰国したわけだ。

そして、生まれ故郷近くの高校に編入。今日がその始業式だ。


家は、学校近くに1DKマンションを借りていた。

初の一人暮らし!今から楽しみでしかたがない。


そして、学校へ向かう道。

流石に7年も過ぎると街並みも変わっていた。

近くに大きなショッピングモールが出来たのも影響しているのかもしれないけど、

昔よく遊んだ駄菓子屋やゲームセンターも閉店していた。

あの駄菓子屋におばあちゃんはまだ元気なんだろうか。。。

ちょっと寂しい気はするけど、町は変わっていくんだよね。


閉店した駄菓子屋のシャッターを見て、ふとあのころを思い出した。

そういえば、あいつはまだこの町に居るのかな・・・・

--------------

以前住んでいた家のお向かいさん。

生まれた病院も誕生日も同じで、小さいころからいつも一緒だったあいつ。

いわゆる幼馴染というやつで、面白い事に俺が転校する小学校3年生まで

クラスも全て一緒。もちろん仲も良かった。

ただ、あいつは俺にとって大きな壁でありライバルでもあった。

勉強にスポーツにゲームに喧嘩etc 何をやっても毎回あいつに勝てなかった。

いや別に俺が頭が悪いとか運動神経が悪いとかではないよ。むしろクラス

ではいつも上位だったはず。それでもあいつはそれ以上で。。。

そして、毎回「私に勝とうなんて10万年早いわ!」と言い放たれるんだよね。

何だよその10万年ってとか思いつつも反論できずに過ごしてた。

そんなあいつだったけど、俺が親父の仕事の都合で引っ越すことになった時

は泣いてたんだよね。

いつも強気なあいつが泣いてるのなんて初めて見たし衝撃だった。

そして、最後に言われたのは「待ってるから、絶対戻って来いよな!」だった。

------------------

という事でだいぶかかったけど約束通り戻ってきたんだよな。

今頃あいつは何をしているのやら・・・・


と学校へ向かう道を歩いていると何やら路地裏から物騒な声が聞こえてきた。


「放せって言ってるだろ!」

「お前を連れてかねぇと俺たちが殴られるんだよ。ごちゃごちゃ言わず着いてこいや!」


ポニーテールの気の強そうな女の子が腕を捕まれ、その後ろではショートボブの小柄な

女の子が震えている。

不良どもは学生服を着たいかにもな感じの男が4人。


『う~ん 転校初日から面倒ごとはなぁ~ でもあの子ちょっと好みかも・・・』

等と考えながら見ていると不良君の一人と目が合ってしまった。


「おい てめぇ何見てんだよ。」

とこちらの返答も待たずにいきなり手を出してくる金髪の不良少年A。


『はぁ結局巻き込まれるのか・・・』

と相手のパンチをかわし、ボディにパンチをお見舞いする。

昔のドラマで言ってたよね「顔はやめな ボディーだよ」的なw

反撃があるかと思ったら、思った以上に貧弱で1発でダウン。

弱すぎるぞ不良少年Aよ。。。


残りの3人は一瞬驚いた顔をしたけど「ふざけやがって!」と一斉に殴りかかってきた。

というかこいつら動きが遅い。。。

1人目の不良少年Bをかわし脚をひっかけ転ばせ、後から来た2人目の不良少年Cにはボディに一発。

一瞬ひるんだ3人目の不良少年Dには蹴りを食らわせてやった。

結構加減したつもりだったけど、4人とも涙目。。。

弱いぞお前ら。。。

そして、お約束の「覚えてろよーーー!」の一言を残し逃げ去っていった。

『誰が覚えてるかよ

  でも あの学ランってこれから行く俺と同じ学校の制服だよな。

  進学校のはずなんだけど、、、はぁ~初日から面倒そうだ。。。』

と立ち去ろうとすると、絡まれてた女の子から声を掛けられた。

可愛い子達だけど、正直これ以上巻き込まれるのは面倒だ。


「あの~」

「ち 遅刻するから早く学校行けよ!」


と投げやりに言い放ち、俺はダッシュでその場を立ち去った。


「あ、行っちゃった。

  お礼言いたかったのにな、、、

  ねぇ楓、強いしちょっとカッコよかったよね あの人」

とショートボブの女の子


「う~ん 強かったけどカッコよかった?」

とポニーテールの子


「ふふ 楓はケンちゃん一筋だもんね。」

「け 健吾はそんなんじゃないし・・・

  でもあの人、うちの高校の制服だったよね。あんな人いたっけ?」


*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/


川野辺高校。

この辺りでは比較的偏差値が高く進学校として知られる公立高校だ。

その2年A組。俺が編入されるクラス。

担任の後をついて教室の前まで行く。


「おい静かにしろ! ホームルーム始めるぞ!

  新学期早々だが、今日からこのクラスに1名編入生が来ることになった。

  編入試験はほぼ満点で、アメリカからの帰国子女だ。皆仲良くな

  じゃ 田辺入って自己紹介しろ」

教室に入り教壇の横に立ち挨拶


「田辺 健吾です。親の仕事の都合でしばらくアメリカに居ましたが、

  元々はこの地区の出身で川野小学校に3年生まで通ってました。

  俺の事覚えてるよって人いましたらどうか絡んでくださいw」

と軽く挨拶しクラスを見渡す。

『ん? 窓際の二人って朝不良に絡まれて女の子たち なんかこっち見てる』


「ねぇ楓、朝の人って編入生だったんだね。強い上に頭も良いとかすごいね!」

「・・・たなべけんご?」

「ん? どうしたの楓?」

と少し震えながら急に立ち上がるポニテの女の子


「ケンちゃん!!」

「へ?」

「私だよ。わからないの?」

「誰?」(俺 あんな可愛い知り合い居ないぞ)

「・・・・・バカぁーーーーー!」

と何だか泣きながら教室を出て行ってしまった。

『俺何かしたのか・・・・』

すると


「あの~」

とショートボブの女の子が申し訳なさそうに声を上げた。


「田辺君って川野小で3年1組に居た田辺君だよね。

   私の事覚えてる?村田 綾子って言うんだけど」

「村田・・・あぁ楓といつも一緒にいた綾ちゃんか

   まさか高校でまた同じクラスになるとは。

   よく一緒に遊んだしちゃんと覚えてるよ!

   ってことはもしかして楓もこの高校に通ってるの?」

「うん。楓の事もちゃんと覚えてるんだね」

「当たり前だろ!あいつとは幼馴染なんだぜ」

「うぅ~そうだよねぇ~ 私も名前聞いても小学校の時の田辺君とすぐに一致

   させられなかったから偉そうなこと言えないんだけどさ~

   ・・・・・さっき泣きながら出てったのが楓だよ。」

「またまたぁ~ 楓はもっと男勝りで、色黒で・・・」

「女の子はさぁ7年もすれば変わるんだよ。。。」

「ま じ で す か・・・」

「楓は田辺君が帰ってくるのずっと待ってたんだよ。だから「誰」とか言われて

   ショックだったんだろうと思う。。。」

「・・・・・」

「とりあえず田辺君 楓の事追いかけて

   まだそんな遠くには行ってないと思うし」

「わかった。楓なら何となく行きそうなところに心当たりはある」

「うん 任せたよ!」


と俺は教室を出て走り出した。


「あのさぁ一応この時間は俺の授業なんだけど。。。」

先生ゴメン!


*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/


私は何をやってるんだろう

ケンちゃんが帰ってきたと思ったら「誰?」とか言われて気が動転して。。。

そうだよね。ケンちゃんが引っ越してから7年。

私の事なんか忘れちゃってるよね。

背も高くなってたし、喧嘩も強くて勉強も出来る。

きっと可愛い彼女とかも居るんだ。

ずっと待ってたのにさ・・・


気が付くと私は小学校の裏山にある神社の境内に居た。

小さい頃に嫌なことがあるとよく来てた場所だ。

何だかここにいると心が安らぐ。

そして、一人で座ってるといつもケンちゃんが迎えに来てくれた。

『何だか懐かしいな・・・』

感傷的になったのか何だか涙が出てきた。


「楓!」

「え?」

振り向くと息を切らしたケンちゃんが居た


「なんで?」

「楓は辛いこととかあると、いつもここに来てただろ?」

「・・・何よ!私の事忘れてたくせに・・・」(覚えててくれたんだ・・・)

「ゴメン。だけど楓の事はずっと忘れたことはなかったよ。

   ただ、こんな可愛い子になってるなんて思ってなくてさ

   綾ちゃんに楓の事聞いても最初信じられなかった」


『可愛い!!私の事?』

「ふ ふん。お世辞言っても許さないんだからね。

   私はケンちゃん見てすぐにわかったんだから!」

「それは名前言ったからだろ? 

   朝不良から助けたときは気が付いてる様には見えなかったぞ」

「うぅ~それは確かに。。。」

「許してくれないかな?」


というと楓は俺の近くまで来て、顔を赤くして照れながら俺に抱き着いてきた。


「おかえりなさい ケンちゃん」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ