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〜まことに華麗な百合の花〜  作者: 閃軌
第一章
9/135

9 =ゴッスろりろり= 《新人戦1》

 麝香撫子じゃこうなでしこ、個人新人戦で快進撃を続け決勝まで登りつめた期待の新人。

 だった…はずだった…。

 勝ったら妹にしてなーちゃんと呼べという無理難題を突きつけられ、素直に応援できない理沙りさ


 撫子なでしこ決勝の相手はアマゾネスの血統と名高いコング美佐子。

 我が校の制服が絶望的に似合っていないマッチョ女子だ。


「あれ強いね」

 理沙りさがそっと相手のステータス評価をミソに指示する。

 ランクAの評価ステータスが並んでいる。


「前回の試合を観ましたけど、やっぱり見た目そのままの強さでした」

 柚子ゆずも気になっていたのだろう、対戦相手の試合を観戦した評価を素直に述べる。


「なんだか、お近づきになりたくない方ね」

 筋肉女子が苦手なレイ。


「召喚獣はなんなの?」

「ゴリラです」

「…いまなんと仰ったのかしら?」

「だからゴリラです」

「なんで意思疎通出来ちゃったんだろうね…」

「ルックスがゴリラ好みだったんじゃない?」

 さらっと酷い事を言うレイ。


 試合開始前、召喚されたゴリラがバフを開始した。

 表示されたバフをみて理沙りさが言う。

「あれマズイね、軽傷も通りそうに無いよ」

「そういえばロリ子が召喚獣を手に入れたって噂を聞いたような」

「へえそれは楽しみ」


 撫子なでしこが召喚を開始した。


 大鎌を、頭上で回転させると魔法陣のような模様が浮かび上がった。

 どろりとした粘液のようなものが陣から流れ、鮮血の色合いを帯びてスパークを起こす。


 そして召喚されたものを目撃した会場がざわめく。

「人だ…」

「どういう事だ、人間の召喚は成功例が無いんじゃなかったのか!?」

 動揺が広がり人々が疑問を口にする。


 この世界では人型は極めて稀である。

 人の精神構造が複雑で、生前の魂を再構築する事が困難とされ、召喚した場合は狂化する事が殆どで邪法と呼ばれる部類に該当する為だ。

 完全な人の召喚例も歴史上報告はあるが、かつて聖女様と呼ばれ神格化されるほど強い精神性と純粋な人格をしていた方の血縁が成功させたと記録されている程度だ。


「あれはネクロマンシー…」

 レイがつぶやく

「レイ様、あれをご存知なのですか?」

「知識としてだけで実物を見たのはわたしも初めて。

 死者を蘇生する古代の呪術と聞いたことがあるけれど、あの子のアレンジが加わってるわ。

 聞いているのはもっとシンプルで誰が見ても死体って解る筈だもの」


 召喚されたものの正体は『ダンピール』吸血鬼とのハーフだ。

 生前、ダンピールだったから召喚の儀式において魂の再生が血統によって補助され現世への再構成を可能としたのだろう。

 見た目も若々しく生気が漲っている。

「あんなもの戦争でもない試合でコントロール出来るのかしら…」


 周囲の心配を他所に撫子なでしこが笑みを浮かべながら声を掛けた。

「じぃちゃんおはよう!手伝って」

「なんじゃ、なーちゃんジジィをこき使う気かぇ?」

「せっかく若返ったんだからお願い!」


 敵はあっちとばかりに指差す。


「こりゃ、なーちゃんの若い生気で呼ばれたお陰じゃな。仕方ない、孫のお願いでは一肌脱ごうかのう」


 ダンピールの瞳が妖しく輝いた。


 再び会場がざわめく。


「お姉さま、今なんかおかしな会話をしてましたよっ!?」

「あの娘…血は薄いけど本物なのだわ。吸血一族ってまだ生き残りが居たのね」

「迫害されて滅びたんじゃなかったけ?」

「目の前に生き残りが居るなら滅びてないんじゃない?」


 一昔前なら即捕縛されて殺害されていてもおかしくない事実、現在では、法的にも問題なく実害が確認されていないので処罰される様な事もない。


 コング美佐子は激しく動揺していた。

 じじぃ(と名乗った)の視線で恐怖を刷り込まれたのだ。

 召喚獣のゴリラも格の違いを肌で感じて怯えている。

 ゴリバフも解除されてしまった様だ。


「すごい強力なデバフだよ恐怖で動けなくなってる」


 チャンスを逃さず撫子なでしこが襲い掛かる。


「やぁ――――っ!」


 Zugyaaaaaaaaan!!


 大鎌を回転させてあっという間に軽傷10ポイントを奪ってしまった。

 勝利を確定する表示が示され優勝が決まる。



「勝っちゃったよこれは参った」

「何と言うか驚異的な奥の手を持っていたみたいね」

「ぐぬぬぬう…」

 約束を思い出して唸る柚子ゆず


 撫子なでしこは会場から理沙りさを見つけると、スカートの裾を摘み片足を引いてお辞儀をした。


「ヴァンパイアの血統って知ってしまうと、ああいうのが凄く似合って見えるから不思議だね」

「見た目通りの年齢なのかしら」

 素直な疑問である。


 ショックから立ち直りきれない空気の会場を、サッさと後にして撫子なでしこ理沙りさの元に駆け寄った。

「御覧になって頂けましたでしょうか、理沙りさお姉さま」

 にっこりと笑いかける。


「はあ、凄いよ。その…じぃちゃんだっけ?見た目が若いから違和感あるけど」

「おほおおおおぉ―――!美人じゃのうぅ」

 興奮して理沙りさの匂いをクンクンしている。


 ―――無表情で渾身のデコピンを放つ理沙りさ


 Zbishyiiii!!


「ぐはあぁああ!!」

 浄化されかける若じじぃ。


「喋れる召喚獣って怖いですね…」

 どん引きする柚子ゆず


「少々苦手ですわ、召喚解除して還して下さらない?」

「そっちのブロンド美人はつれないのうぅ――!ん、じじぃとイチャイチャしてみんか?」

「お断りします!」


 Zpam!!


「おふぉぉぉ―――――っつ!!」


 青筋を立てて、股間に正確な膝蹴りを見舞うと悶絶しながら浄化されていった。


「あ、じぃちゃん消滅した」

「どうせ呼んだらすぐ来るんでしょ?」

「そうですけど…」

「強いのに呼びたくない類の召喚獣ね」


 その場の全員がその意見に賛同していた。


 こうして撫子なでしこは約束通りに理沙りさの妹分にすっぽり納まってしまった。

 地団駄を踏む柚子ゆず

 更なる厄介ごとの出現で頭を抱えるレイ。

 色々諦めてしまった理沙りさ

 彼女達の日常はまた賑やかさを増していくのだった。

ようやくルビの使い方が解ってきた気がする閃軌せんきです。覚えると便利で面白いですね。私は、HPを文字入力して作成していた時代が懐かしくなるおっさん世代です。

今日は夜勤なので投稿分をチマチマ修正して置こうと思っています。

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