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〜まことに華麗な百合の花〜  作者: 閃軌
第一章
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2 =別れと転生= 《過去編1》

 犬の吠える声が聞こえてゆっくり起きる。


 理沙りさは、その朝目覚めた時から言いようの無い嫌な予感に襲われていた。

 それは言葉にならない、もやもやした予感だった。

 何なのか解らないまま着替えて朝食を済ませ庭に出る。

 朝のランニングついでに犬の散歩をするのが彼女の日課だった。


 輝く栗毛くりげの中型犬が、彼女を見付けて大喜びで尻尾を振っている。

「ミソおはよう!」

 ふと違和感を感じる…ひもが外れていた。

(あれ、なんで取れてるの?)

 不審ふしんに思いつつ、繋いであった紐を見るが特に不自然な点は見当たらなかったので、そのままランニングに出ることにした。


 近場に畑が広がる河原があるので、そこで犬を放して一緒に走る。


 ミソは放たれると喜びを爆発させて疾走する。

「速いなぁ」

 理沙りさは、ミソの走る姿を見ているのが好きだった。

 自由になった喜びにあふれ全力で遊ぶ姿が愛しかったのだ。


「僕も走ろっと」


 河川敷から畑に繋がる道は、往復5km程度なので軽い運動に丁度良かった。


 運動を終えて帰る事にした彼女はミソを呼ぶ。


「帰るよミソ!」

「ワン!」


 それに応えてミソが駆け足で戻ってくる。

 何も無かった事にほっとしつつ帰路についた。



 ▼△▼△▼△▼△▼△▼△



理沙りさ帰ったのね。あなたの制服が出来てるって、連絡があったから取りにいきましょう」

「お母様すぐに着替えて用意します」


 ミソを繋いですぐにシャワーを浴びる。


 制服を受け取るのはとても楽しみだった。

 やっと入学が決まった皇国グラヴィオ女学園騎士科、フラグランス皇国女子憧れの学園である。

 皇国の上流階級や富裕層の子女が通う。

 皇室近衛兵として採用される率が非常に高く、学園出身者が要職ようしょくに採用される事も多いので、親も入学させようと必死だ。

 卒業後、軍籍を目指さなくとも学園で得られた人脈を生かして事業を立ち上げたり家督を継いで、領地経営に役立てるものも居る。

 主に軍籍を目指す女子が集まる為に、近衛旗騎士このえききしの娘が目立ち最も多いのは従士階級の娘達である。


 この学園の特徴が改造制服である。通常、特定のデザインで体型のみ合わせるが、この学園は指定デザインから逸脱いつだつしていなければ、あらかじめ申請したデザインを選んで着用する事ができる。

 この変わったルールが女子受けして、本来の学校としての格の高さもさることながら人気も高く入学が非常に難しい難関校として知られていた。


 僕は希望デザインに、長めの丈のスカートにスリットを入れて大人っぽさを主張してみた。

 本当は恥ずかしかったが背伸びしてみたかったのだ。出来栄えにはとても満足した。

 深い黒に銀糸ぎんしで縁取りされた洗練されたもので、生地も肌触りが良く、若干、伸び縮みして動きやすく出来ている。

 上腕に校章が入り胸に皇国章がデザインされていた。


 早く邸宅に帰ってもう1度姿見で確認するのが楽しみで仕方ない。


 支払いを終えた母を急かして帰路に着く。

 外はもう夕方になっていた。


「ただいま!」


 邸宅に着いて玄関を通る時にその違和感に気がついた。

 いつも反応するミソの声がしないのだ。


 すぐに庭に回りこむ。


 …繋いだ紐が切れていた


「え、ミソどこ?」


 焦って周囲を探すが見当たらない。その日は、夜遅くまでいつもの散歩道や森の近くまで探したが見つからないので仕方なく邸宅に戻った。


「すぐに帰ってくるわ」

 母に慰められ、自分も納得しないながらもきっと帰ってくると思って眠りに就いた。



 ▼△▼△▼△▼△▼△▼△



 次の日の朝、悪夢が待っていた。


「ミソが見つかったけどもう息が無かったって…輸送馬車にかれてしまったらしいの」

「…そんな!」

「運んでもらって庭に居るわ」

 信じられず着替えもせずに飛び出す。

理沙りさ、ちょっと待ちなさい!!」


 お母様の呼び止める声を無視して外に駆け出し、庭にある白い布を見付けて動きが止まってしまった。

「うそ…」

 動けなくなった、布をまくる勇気が出ないのだ。

 白い布にはわずかに赤い血がにじんでいた。

 思わず震えながらそっと布をまくると、死んでいるとは思えないほど静かな横顔をしたミソが居た。


 そのまま泣き崩れ、暫く周囲もはばからずわめいた。その後、どうしたのかは憶えていない。


 その夜、お母様に呼ばれてリビングに出るとじっとこちらを見てお母様は言った。

「あの子、貴女あなたの召喚獣になれるかも知れないわ。とても繋がりが深いもの、きっと成功すると思うの」

「…召喚獣?」

「えぇ、皇国の騎士様にも従えてらっしゃる方がいらっしゃるでしょう?」

「生前、強い結びつきのある魂が呼ばれると転生して召喚獣に生まれ変わって守護してくれるのよ。」

「やる!勿論もちろんやってみるよ」


 理沙りさは生家から皇都の別邸に移り住んで間もないので、この頃は知らなかったが、この国では召喚獣は割りと一般的に存在しているものである。

 こうして理沙りさは召喚の儀式へ挑む事となった。

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