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〜まことに華麗な百合の花〜  作者: 閃軌
第一章
1/135

1 =開幕= 《大会個人戦1》

初投稿となります。

拙い文章で読みにくい点等、有るかと思いますが楽しんで頂ければ幸いです。

また、何か気になる点や、誤字脱字が有りましたらお知らせ頂ければ、修正して行きたいと考えております。


擬音等は、海外雑誌から気に入った表現を引っ張って来ています。

では、宜しくお願い致します。


※冒頭プロローグ追加 2019.10.21

三点リーダーのルールとか、今頃、思い出しました。気が向いたら直します…… 2020.01.21


せんき

 今日の僕のクラスの授業は選択科目『お嬢様語』になっている。


「ではこの例文から、『あら、こんなお肌で私に勝てるとお思い?』はい、皆さんご一緒に」


『あら、こんなお肌で私に勝てるとお思い?』


「最後の『お思い?』は上に上がるトーンで、いかにも勝てるわけ無いでしょ感を出すのがコツです。宜しいですか?」


『はい』


「大事な事は話すスピードを一定に保つ事です。そのように話す事で相手に対し、私は余裕があるのよ感を演出する事が可能なのです」


「上級者になりますと『あら』を『あ~るぁ』と巻き舌で発音する事で、優位性を高めて高圧的な視線と共に、使い分けたりもしていますよ」


「では、次に『ごめんあそばせ』の応用である『ごめんあさぁ~せ』についてです。

 あえて『そ』を『さぁ』に崩す事によって、上位者である雰囲気を作りだし相手に優位に立つ事に繋がります」


「ここは試験に出ますからね!」


『はい!』


 僕はこの授業、ちょっと苦手だ。

 この口調に慣れて居るので、お嬢様語は少々難しく感じるのだ。


「それでは百合車ゆりぐるまさん、52ページの例題2 可愛い洋服を褒める言葉をひとつ答えて下さい」


「はい、『あら、素敵なお召し物ですこと』です」


「よく出来ました。最後の『こと』が大事ですね。

 スピードを落として『お召し物です・こ・と』と、強調すると相手に私は見てますわよ感を強める事が出来るので憶えておきましょう」


「そろそろチャイムが鳴りますね。それでは皆さんごきげんよう」


『ごきげんよう』


 終業の挨拶を済ませた先生が、ふと立ち止まる。


「少々、思い出しました。百合車ゆりぐるまさん、貴女は次の代表戦が明日でしたわね?」

「はい」


「係の方と打ち合わせがありますから放課後に会議室まで来るように」

「解りました」

 返事に満足すると先生は戻って行った。



理沙りさ様、応援しておりますわ」

 クラスメイトが口々に声を掛けてくれる。

 大会も勝ち進み順調だ。


 明日はいよいよ強敵のレイと当たる。

 僕はワクワクしながら会議室へと向かった。


 そこには明日対戦予定のレイの姿もある。いつもは一緒に居るが、今日はお互い意識して別行動だ。大まかな説明が終わって質問の時間になるが、僕もレイも個人戦参加は2度目なので特に質問もなく終了となった。


 レイと目が合う。

 お互い闘志を漲らせながらも瞳で会話する。

 お互い頑張ろうと。



 ▼△▼△▼△▼△▼△▼△



 そして二回戦が始まる。



 キャー!お姉さま素敵ぃ――!!!


 Gyaaaaan Kiiin!!


 相手の攻撃を全て軽くいなして息も切らさず静かに間合いを計っている。

 長い黒髪をまとめ上げ、皇都グラヴィオ女学園 クラス選抜の個人戦に出場する凛々しい姿。モデル並の端正な顔立ちに整ったスタイルで太刀を振るい対戦相手を寄せ付けず二年間無敗を誇る百合車理沙ゆりぐるまりさ


 相手は、細身の剣を高速で繰り出す刺突しとつの名手と言われるレイ・リナリア。

「流石ね、今年は二回戦で当たってしまって残念」

「組み合わせだけはどうしようも無いね。僕もキミとは決勝で当たりたかったよ」

「嬉しい事を…」

 不敵な笑みを浮かべながらレイが突撃体勢を取る。

 上空の雲が切れ、レイの美しいブロンドヘアーに日差しが掛かり、一際、輝いている。


 Huuu


(一点集中加速4か…)

 理沙りさの横に控える狼が、理沙りさを見上げると目の前に情報が表示され始めた。

 この狼は召喚獣で、転生前の繋がりの深い相手のところに魂が呼ばれ獣の意思で従い主に能力を授ける。

 理沙りさの強さの秘密は、相手の状態が『ステータス表示』されて見えること。

 いわゆるバフ、デバフが視えているので相手がやろうとしている事や、疲れてたり、弱っているのに強がりで効いていない振りをしているのが判ってしまうのである。

 無論、身体強化系バフも備えているが必要と判断していない為か、理沙りさに掛けることなく静かに見守っている。

 相手から闘志は感じるが、敵意は向けられていない為に攻撃的支援を見送っているといった所だろうか。


 そして本物の戦闘と違って試合中は召喚獣が戦闘に直接関与する事はない。

 ルール上、バフ、デバフはある程度認められているが直接攻撃に類する毒やデス等は当然禁止だ。



 対するレイの召喚獣は鷹の姿をして上空を舞っている。

 レイに加速と獲物を捕らえる目、集中力を付与してきた。


 鋭い目つきで狙いを絞ったレイの足元から土煙が舞う。


果断勇進疾風迅雷カダンユウシンシップウジンライ…ハッ!!」

 一足飛びで間合いを一気に詰めて突っ込んでくるレイ。

 剣先に気流が巻き起こり、唸りを上げながら迫ってくる。


 Syaaaann!!


「ぐ、、予想より速くて重い。でもこれなら!!」


 手首を捻り受け流しながら回避しつつ、太刀の握りに近い部分を相手の剣に衝突させ剣先を上に跳ね上げ胴を打ち込む。


 Buhooouuuuu!!

 Guooo

 Dou!!


 レイの剣先は理沙りさの髪を数本切り払い首の横を抜けていく。

 理沙りさの太刀がレイの胴を捕らえ衝突判定の閃光が発生し試合を決める。


 【試合はポイント制、軽傷判定であれば1、重傷判定で戦闘続行可能なら3、致死性の攻撃なら10のポイントが入り

 10ポイント先取したほうが勝ちとなる】


 わっと会場から割れんばかりの拍手が降り注ぐ。


「これでもまだ届かないのね……」

「突きに磨きが掛かっていて驚いたよ。どれだけ修練を重ねたのか想像もつかない」

「あなたの隣に立つのに相応しくなるまでよ」


 お互い微笑みながら見つめ合う。

 目を逸らす事無く武器を収めグラブを外した手が触れ合おうかという時に


「こら――っ!!そこのくりくりブロンド!どさくさに紛れてお姉さまをナンパするなぁ。こんな所でふたりだけの世界を作ってるんじゃなぁ~い!!」


 =ピー!サポート員は競技エリアに入らないで下さい=


「きぃ―――!邪魔よ、止めないで。じゃまじゃま!!」


 同時に振り返るふたりの先で興奮しながら取り押さえられてる少女は緑葉柚子りょくはゆず

 理沙りさと学園で姉妹の契りを結んだ妹分だ。


「あの子も相変わらずですね」

「まあ、色々と監視されちゃって大変だよ」


 笑いあう二人


「終わったらカフェのあるプレミアム街で待ち合わせましょう」

「解ったじゃあまた後で」


 試合後の形式的な挨拶を交わしてお互いに別れる。

 応援の観客席に手を振りながら戻ってくるお姉さま。


「お姉さま!何をお話していたのですか!?」

柚子ゆずは可愛いねってさ」

「まあああぁぁああ!!オネエさまったらまあああああぁぁぁ!!」





「……だまされません!」


 ふくれっ面で上目遣いににら柚子ゆず


「まあ、まあ、可愛いってのは本当だから」

「まあああぁぁああ!!オネエさまったらまあああああぁぁぁ!!」

 真っ赤になってもだえる柚子ゆず



(ちょろいな…)

 ほくそ笑む理沙りさだった。



 ▼△▼△▼△▼△▼△▼△



 有名ブランド店の立ち並ぶプレミアム街を並んで歩く三人。

 各店それぞれ品良く整然と並ぶ様子は混雑の中にも落ち着いた雰囲気をかもし出していて治安の高さを物語っている。

 左にレイ、右に理沙りさ、真ん中で理沙りさに腕を回してしがみついている柚子ゆずという配置だ。


「ところで……何故、このコブ娘がここに居るの?」

「うっさいくりくり!お姉さまと逢引しようとしてもダメだ。べーっ!!」

柚子ゆず、慎みなさい」(やや呆れ顔で)

「はいお姉さま!」(にっこり)

「いつもの事だけどごめん」


 ため息混じりに謝罪する理沙りさ


「まあ、桃スライムみたいにまとわり着いているのは想定内ですから」

「人を卑猥ひわい生物と一緒にするなっ!!」


 桃スライムとは、粘液に媚薬効果びやくこうかわずかにあり取り付いた相手を発情させて、理性を奪い動けなくなった所を捕食する厄介なスライムである。


(発情するかはともかく、取り付いて捕食しようと狙っているのは、あながち間違ってないかも……)


「お姉さま!何か失礼な事を想像されてませんかっ!?」

「あ、わかる?」

「もぉー、わたしの愛情はプラトニックですのに!!」


 絶対違うと心の中で否定するふたり。


「あら、あちらを見て。仕立ての良さそうな皮製品だと思わない?」

「この手袋は良いね、人差し指の付け根部分の厚みも親指の厚みも剣を握るのに十分に見えるよ」

「あっちの剣帯はレイのサイズにぴったりじゃないかな」

「お姉さまのは専門の職人の仕立てですよね?」

「あぁ、太刀はこの地域では珍しいからね」


 ちなみに柚子ゆずは二刀流でエストックを操る


「あちらにアクセサリーを扱ってるお店があるわ」

「素敵、お姉さま早く!」

「解ったから引っ張らないで」


 急かされ苦笑しながらも楽しげに向かう理沙りさ

(妹って可愛い……僕のお姉さまもこんな気持ちで居てくれたのかな)


 今年、在学中でありながら第五都市のジークルーネ隊に選抜された姉を想い空を見上げる。

 読書の好きな物静かな人柄で槍術に長け、シャム猫の外見をしていて尻尾が3本ある召喚獣を連れていた。

 長い髪を左にまとめ上げ、お団子から長い尻尾のように一房垂ひとふさたららした特徴的な髪型をしている姉だった。

 いつもひざの上を占領しているその猫とのワンセットが絵画の様でいつまでも見つめていたいと思っていたものだ。



 姉と良く通ったお気に入りのカフェテラスに辿たどり着き三人で軽食を頼みお茶を楽しむ。


「ところで理沙りさの次の相手ですけど例の鞭使いですのね」

「あぁ、技術云々よりも召喚獣の見た目がちょっとね……」

「まんま蛇ですもんね、お姉さま爬虫類はやはり苦手ですか?」

「それほど苦手って意識は無いんだけど、前回、あの蛇のお腹を触っちゃってふにっとした感触に鳥肌が止まらなかったの」

「……あぁ、それは無理」

 身震いしながらうんうんと全力で肯定するふたり

「召喚獣に触るなんてレアケースだし大丈夫だと思う」

「期待してるわ」

「お姉さまの勝利で間違い無しです!」

「ありがと頑張る」


「そういえばお姉さま、団体出場の噂が有りましたけどあれはどういう経緯であのような話が出てきたのですか?」

「あれはね……」



 ▼△▼△▼△▼△▼△▼△



 騎士科の各クラスでは選抜試合の人選を進めていた。

 例年、個人の技量と召喚獣の能力の総合値で選抜されるが、今回も例に漏れずそのような人選が行われていた。

 ただ、理沙の場合は個人出場とするか、団体競技のほうに回るかで少々クラス内で意見が分かれた。


「やはり今年は、個人戦を別の方にお任せして理沙りささんに纏めていただいた方が宜しいのではないでしょうか?」

「個人のほうは、それこそ強豪揃い。理沙りささん以外のどなたが出場して勝ちあがれるというのです?」


 理沙の技量はかなり高く、出場予定選手の中でも優勝候補に数えられる実力の持ち主だ。


 今年に限って、中々、纏まらなかったのは理沙りさのクラスが、昨年の団体で苦戦し成績が振るわず勝ち星に恵まれなかった為に。今年もそれで良いのかという声が少なからず出た為である。

 理沙の欠点とも言えるのは、騎乗出来る程に育った召喚獣では無い為に、団体戦に必要な機動性という面で不利になるという点。それ故、個人競技に集中したいと本人も考えていた。

 団体戦は、戦闘競技ばかりでなく趣向を凝らした難関突破や、長距離移動する借り物競争のようなもので

 交渉術も問われる内容が含まれていたり、少々、理沙りさが苦手としている分野があったりする。


 個人競技だと召喚獣の介入はバフ等の間接支援に限られるが、団体は直接運用も認められているので、ミソがどこまで通用するのか試してみたい気持ちも無かった訳ではない。


 前年実績から、周囲に期待され団体側を希望されたが結局辞退することに決めた。

「推薦して下さる皆様の声は、とても嬉しく思うけれどやはり僕は個人戦で手堅く行こうと思う。いいかな?」



 代わりに選抜された団体代表は、馬の魂から転生した召喚獣を持つ者を中心に編成された。

 首都近衛第二隊は、儀丈隊ぎじょうたいの側面を持っていて転生馬持ちが優先採用されるので馬持ちはアピールのチャンスでもあるのでやる気も違う。

 昨年振るわなかった彼女達の出番を奪ってしまっては、のち禍根かこんを残すことにもなり兼ねないので良い選択肢だと考えている。



「ほほほ、皆様よく解っていらっしゃるのね。百合車様ゆりぐるまさまにも得手不得手が御座いますわ、ここはワタクシにお任せ頂きたいと思います。」

 自信たっぷりに矢羅礼八子やられいやっこはバラを片手に胸を張った。(何故かバラの花びらが舞い散る、そのバラはいったいどこから……)


「そうですわ!八子様以上に団体戦指揮者に相応しい方はいらっしゃいませんもの」

 不敵に笑いながら鳥薪英子とりまきえいこが続く。

「ふふふ、勝利はうたがいありますぇ〜ん」

 双子の鳥薪とりまきニコも何故かバラを咥えて自信満々だ。


「あ、あぁ…是非、頼むよ。僕もそうしてくれると助かるから」

(うちのクラスが人材不足なのは認めるしかないな……)

 彼女らを見ながら理沙りさはため息をついた。



 ▼△▼△▼△▼△▼△▼△



「そんな事があったの……」

「うん」

「クラスの違う私が言うのも変なのだけどそれで団体戦は大丈夫なの?」

「なんとかなる、と思いたい。……なるのかなぁ、自信ない」

「苦労してるのね」


 心から同情するレイだった。

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