到るまでのおはなし
俺、レオーネは幸福であったと思います。
農村のそこそこ裕福な農家に生まれて、食事に困ることのない生活をしてきました。昔から家の手伝いの後には好きに遊ばせてもらえていたし、街に連れて行ってもらうこともありました。少なくとも村のほかの子供よりは自由であったと思います。
そんな中で、吟遊詩人が村に来たんです。みんな仕事があるからとそんなに聞くことはなかったけれど、俺は演奏の間ずっと離れなかった。
感動していたんだ。こんなに綺麗なものがあるなんて、と。
その日の夜に、俺は両親に吟遊詩人になるんだ、と話をしたんです。当然なにを言っているんだという顔をされたし、まともに相手にされなかった。でも、何度も話をして本気さが伝わったときに、音楽神の神殿のことを教えられました。吟遊詩人は音楽の神さまの使途なんだ、なろうと思ってなれるものじゃないんだぞって。
それからなんとか説得して許可をもらうまでに2年かかりました。14までに竪琴を村はずれの元冒険者の爺さんに習えっていう条件で。
爺さんに教えてもらいながら仕事の手伝いで小遣いを貯めて、いつか神殿に行く日に備えてた。それで、14になったその日に両親から、神殿に行っていいぞって許可が下りたんだ。本当に嬉しくて、その日は寝られなくて。
翌日になって、父さんと村から何日かかけて街に来て、神殿に来たんです。
それが、俺がこの神殿に来た理由です。神官様。
吟遊詩人主人公のファンタジーものです。
魔王や邪悪な竜が関わる話ではなく、旅の中で自分だけの唄を作るお話ですので、好みが合いましたらどうぞ。