2
朝起きてカーテンを開けると外は雪で真っ白だった。早い時間のせいか青白く光って見える。
そんな景色を眺めていると蒸発した親のことやこれからの自分たちのことを考えてしまう。
「やめた、お湯沸かそう」
ヤカンが鳴る頃には楓は起き出していた。眠そうに目をこすりながら訪ねてくる。
「これ何?」
「プレゼント」
前に欲しいと言っていた文庫本だ
「ありがとう」
「そうだ、ケーキ貰ったぞ」
「でかしたぞお兄ちゃん」
朝から二人でケーキを食べていると楓が何か思い出した様子でスマホを取り出した。
「ほいこれ、お兄ちゃんにプレゼント」
「ん、なんだ」
「一等当てた」
「すごっ!」
2035年現在、ハガキは名前だけを残して実態は電子メールになっている。紙媒体より安易なので応募数は昔より増えているらしい。つまり、倍率もそれなりに高い。
景品は新作のVRマシンとソフトだった。届くのは発売日以降になるとのことだった。
売ったらいくらになるか考えながら臨太郎はバイトに向かった。
1月某日、お正月もひと段落していつものバイトが始まった。この職場には高校の先輩の山下瑞穂先輩が働いてがいる。
「先輩、あけましておめでとうございます」
「あっ、臨太郎あけましておめでとう」
新年らしい挨拶を済ませてパソコンを立ち上げる。このバイトは動画編集のバイトで資格も取れて時給が高い。しかし、慣れが必要で拘束時間も長めである。
割り振られた仕事を片付けお昼休憩に入ると、山下先輩がすでに休憩していた。
「お先〜」
「山下先輩仕事早いですね」
「まあね」
「好きこそものの、ということなのかもね」
「それに私動画配信部部長だし」
「なるほど」
臨太郎は話題の提供も兼ねて今朝の話をする。
話の途中で惚気話につい真顔になっていた瑞穂は当たったのが今冬発売のゲームと聞いて顔色を変えた。
「それで、えーっとタイトルは確か」
「言わなくても分かるよ。こんな時期に発売されるゲームなんてアレしか無いし」
「True Tactics Online でしょ」