思考実験における無人島モデル
社会上の概念などを考える際に、無人島ならどうなのかを考えると色々と理解が進む気がします。
例えば人権とは何か、人殺しは悪なのか?
飛行機事故で無人島に漂着したアナタ。
どうやら助かったのはアナタだけらしい。
さて、アナタの人権は誰が守ってくれるのか?
日本国憲法で保障されている基本的人権ですが、無人島でそれを守れと天に向かって叫んでも聞きいれてはくれませんよね。
喉が渇いたと訴えても、誰も冷たい水を持ってきてはくれません。
腹が減ったとわめいても、ハンバーガーをくれる存在はありません。
だって無人島ですもんね。
仕方ないですよね。
アナタは喉の渇きと空腹を我慢し、夜を迎えます。
遠くで肉食獣らしき鳴き声が聞こえ、恐怖に駆られました。
眠気は一辺に吹き飛び、ガタガタと震えて朝を待つしかありません。
もしもその肉食獣がアナタの前に現れたとしたらどうします?
生存権を尊重しろと語りかけますか?
とりあえず足元の石を拾い、投げる素振りを見せますか?
それとも、背中を見せずに後ずさりして距離を取るのか?
何にせよ、言葉の通じない獣には、人権を訴えても通じないのは確かです。
自分の命は自分で守るしかありません。
生きのびる為の数々の努力が実を結び、アナタはどうにかサバイバル出来ていました。
そんな中、もう一人の生存者と出会います。
どうやら助かったのは自分だけではなかった様です。
互いに生きている事を喜び、今後は協力していく事を選びました。
当然です。
肉食獣はいつ襲ってくるか分かりませんから仲間がいた方が安心ですし、独りでは難しい事も二人なら楽に出来る事もあります。
それに、独りでは寂しい!
初めは協力して島で生き延びていた二人でしたが、待てど暮らせど救助はやって来ません。
やがて二人は焦燥感からか絶望からか、段々と自暴自棄になっていきます。
イライラが続き、些細な事で衝突しがちになりました。
そんな中、ふとした弾みでアナタはもう一人を殺してしまいます。
殺すつもりはなく、突き飛ばしただけなのですが、転倒した弾みに石に頭をぶつけてしまったのです。
脳内出血を起こしてしまったのでしょう。
さて、殺人を犯したアナタは裁かれるのか?
無人島で起きた人殺しは悪なのか?
アナタの他には誰も残っていないのですから、逮捕される訳も裁かれる筈もありません。
自分で自分を裁くかもしれませんが、崖から身を投げますか?
怖くて出来ないなら、それまでです。
もしも悪い事とはこれっぽちも思わなければ、寧ろ清々するかもしれませんね。
まあ、協力する相手がいた方が生き延びる可能性は確実に上がりますので、早死するだけかもしれません。
それが罰と言えば罰になるのでしょうか。
また、寂しさこそが罰かもしれないですね。
とは言え、人殺しを悪だと感じる他者がいて、裁く存在があるからこそ、人殺しは悪となるのではないでしょうか。
以上、ごくあっさりとでしたが、思考実験における無人島理論の説明でした。
発展形としましては、漂流者が流れ着いて共同体になっていくとか、慣習法が出来ていくとか、そういう展開も出来るかと思います。