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紙ヒコーキ

作者: こじぽん

 A4のコピー用紙に、丸や三角を書きなぐっていたら、ただの黒い紙ができた。

 「今の私の気持ち」を表そうと書いていたのに、なんだこれは。こんなもの幼稚園児だってかける。シンプル、イズ、ダサい。ぐしゃぐしゃにして、そのまま机下のゴミ箱へ捨てる。私の気持ちもこんなふうに簡単に捨てられたらいいのに。

 カツンと、部屋の窓に何かが当たる音がした。やれやれ不審者かい。それならちょうど都合がいい、私を殺してみやがれだ、とか思って窓を開けたが、不審者の姿はなく、窓枠に紙ヒコーキが横たわっていた。窓を少し開けて、そいつを取り出し、部屋が寒くならないように急いで閉める。

 紙ヒコーキの翼には「純ちゃんへ」と書いてあった。どうやら私宛のものらしい。果たし状みたい、と思って面白がりながら開けると、そこには絵が描かれていた。

 雲の上で、神様がゲームを楽しみ、チョコレート?の雨をふらせている。そして、真ん中にはどでかい白黒のパンダが、陽気なサンバを踊っている。

 なんだこの絵は。という感想のすぐ後に、どれも私の好きなものだ、ということに気がついて、むず痒い気持ちになった。いったい誰がこの絵を書いたのだろう、そしてどんな気持ちで書いたのだろう。

 わからない問いを考えるのは疲れる。でも、むず痒い気持ちはどんどん体を登って行って、やがて脳内を裸足で駆け回った。やめて、やめて。「やめるもんか、答えを出すまでやめるもんか」

 この絵を、黒で塗りつぶしたい衝動に駆られる。いや、これは衝動というより本能に近い。今の私にはそれしか思いつけないから。

 数十秒もしないうちに、絵は全て真っ黒になった。右手には黒、左手にはオレンジのクレヨンが握られている。二刀流、そこまでですかい、私。そしてまたゴミ箱へ、ぽい。

 このゴミは、どこへ行くのだろう。他のゴミと一緒になって、ゴミ収集車に連れて行かれて、そして燃やされて行くのだろうか。何千万という、他の、ただの、ゴミと一緒に。

 もしも黒じゃなく、赤だったなら。情熱に溢れただれかが途中で見つけて、元気になってくれたかもしれない。もしも、黒じゃなくて、白だったなら、再利用したい人の役に立って、私の行為は無駄にならなかったかもしれない。わかっているさ、なのにどうして黒なのかな。

 ふと、気になって、再び窓をちらりと見ると、慌てて逃げる人がいた。

 ねえ、会いに来て。私はもう、使い物にならないけれど。

 ケントくん。あなたなのでしょう? あの絵を書いてくれたのは。私の色はあなたが一番知っている。だから、あなたしかいないの。私の色をあなたで塗って、それでも私の色を覚えて。

 ああ、赤。私はあなたの赤が好き。





ー終ー

ケントくんの代わりに、こうして文章にすることも一つの生きていく術だと思います。




ん〜、もっと面白い話を書きたいのだけれど、根気が足りませんのー。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 独特の空気感ですね。私は好きでした。
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