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はて? 悪役令嬢なんて知りませんね  作者: 虹乃夢見
幼少編
3/3

ショタっ子が通る(営業スマイル)

 「ぅえ…? うにゅう」


 我ながら間抜けな声を出してしまった。

 あれから三日が経った。

 その間何事も無く無事に関所も抜けて今は隣領であるナグラヴィカ公爵領を移動中である。

 その間街や村に立ち寄って宿で休息を取っている。

 子供というちみっ子が居る手前、野宿なんて出来る訳が無いし。

 何日掛ろうが僕等の安全が第一なのである。


 「ぼっちゃま、おはようございます」


 まだ眠気の取れていない僕を抱き上げて着替えさせていくメイド(シャーリィ)

 (仮)みたいな括りで失礼だと思うけど、彼女じゃないと着替えが出来ない。

 ――いや普通の“男性服”を自力で着替える事は出来るよ?

 でも今から着るのはドレス。

 外出用だけど、それでも自力で着付けるのは困難なのだ。

 メイドの中でも着付けの上手な彼女はあれこれ考えている間に寝間着を手際良くひん剥いてドレスを着せていく。

 無論下着も女物を穿いている。

 いやいや、別に?

 ここまで聞くと変態と言われてもおかしくは無いが、これにはれっきとした理由が有って、ナトラディア家は女系の一族だからである。

 ナトラディアの子には男児は居ない。

 今は戦いに身を置く女性も居るがその所属は傭兵ではなく騎士団である。

 それでも実際の戦人いくさびとの多くは男性が徴収される訳で。

 つまり、『折角生まれた我が子を戦で死なせてたまるか!』と言う訳である。


 家族と一緒に朝食を済ませた後は、再び馬車に乗って移動する。


 「しゃぁりぃ? いまのあたくしのことは“おじょうしゃま”とよびなしゃいと、しゃいしゃんいっていりゅはじゅでしゅよ?」


 上手く発音できないせいで言葉がたどたどしいのは目を瞑るとして、ドレス姿で坊ちゃまと呼ばれるのはどうかと思う。

 家の方針とは言え、今の僕はナトラディア伯爵令嬢が一人『ロザリント・エルネ・オル・エリザヴェト・リア=ナトラディア』なのだ。


 「いいえ、坊ちゃまは坊ちゃまです」


 「…そえをゆーたびにおとうしゃまにいってげんぽうとかんみぬきしてあげましゅよ?」


 「――申し訳ございませんでしたお嬢様、それだけはご容赦を」


 「なりゃ、よろしぃ」

 

 ふんす、と偉ぶった顔で無い胸(当たり前だが)を主張してみる。

 尚、彼女の顔が青くなったのはどれで、だろうね?

 まぁ、本文に戻るけど家の方針とは言え、それ以上に、はっきり言えば新鮮な感じなのだ。

 言うなれば公式が認めた『男の娘』生活なのだ、前世で普通に男性として生きていた時より面倒臭さに拍車が掛ったものの、結構面白い。


 「――こんにゃかわいいこがおんにゃのこのはずがないっていわれりゅにょも、しょうわりゅくにゃいにゃ」


 「おぼ――お嬢様?」


 おっと、声に出てたか。


 「うん? にゃに?」


 こてん、と首を傾げてみる。


 「ん、ぐぅ!? …い、いえ。申し訳ございません! さぁさぁお嬢様、行きましょう! ええ、そうしましょう!」


 思わぬ大ダメージ受けえただろうシャーリィは、僕の手を取るとその場を後に部屋から出たのであった、まる。


 宿から出て馬車を走らせる事半日、遂に街道の木々の向こうから屋敷と思われる屋根が見えて来た。

 あれが、ナグラヴィカ公爵の屋敷。

 そして、運命の――


 「おお、よく来たなマイズ! ナーデも無事で何よりだ」


 「ナーデが怪我を負うなんて有り得ないわよ、貴方」


 「そう言うな。例えそうであっても血の繋がった妹だからな、心配するのが兄の務めというものだろう?」


 「ふふ、ただいま。マイル兄様、フェリゼ」


 まぁ、なんか濃ゆい人達、と思ったけどうそ!? お母様って公爵家の生まれだったの!?

 えと、じゃあフェリゼ様は一体…。


 「それもそうね。愚弟のだらしない顔が更に酷くなるとか、ホントは義姉様おねえさまに悪影響を及ぼしそうで心配したけど、何事も無くって安心したわ」


 「ひ、酷っ!?」


 ……はぁっ!?

 え、じゃあ何? 彼女は叔母様!?

 ――あ、そう言えばどことなく雰囲気が父に似ている様な。


 「そう言えばあの子は?」

 

 「誰に似たのか、呼びかけても書庫から一歩も出ようとせんのだよ。無理に連れだそうとすると魔力弾を連射してくるのでな、仕方なくそのままにして来たのだよ」


 あれま、通りでこの場に居なかったのか。


 「――コホン。まぁ此処で立ち話でもなんだ、続きは応接間に移動からにしよう」


 と、軽く旋律を憶えて呆然としている内に母に抱き抱えられて応接間へドナドナされてしまった。


 「アルバ公爵様、お久し振りです。エルザです」


 超豪華そうな(後で訊いたら幼地獣竜(ベヘモス)革製だそうな)ソファに座り姉のエルザが公爵様に挨拶した。


 「うむ、大きくなったな。将来は引き手数多の美人だな」


 と、頭を撫でる。


 「おはちゅにおめにかかりましゅ“ろざりんと・えるね・おる・えりざヴぇと・りあねーぜ=なとらでぃあ”ろもうしまゅ。ころしでしゃんしゃいににゃりましら。えうざおねえしゃまのおろうろにないましゅが、“れでぃ”ろしてあちゅかっれくれりゅとうれしいれす」


 続いて僕。

 良かった、名前だけでもちゃんと言えた!

 おっと、上司に対しては営業スマイルを忘れない。


 「お、おう――え? は? マジか!? ちょっ、マイズ!? こいつぁどう言う事だ!?」


 「どうもこうも…というかこればっかりは俺も予想外過ぎる」


 あ、頭を抱え始めた。

 …確かにこの世界じゃ絶対に有り得ない事を仕出かした自覚はあるけどさ、申し訳ないけど運命には抗えないねぇ。


 「…そうだわ、セバス。この子達を案内してさしあげて」


 「シャーリィ、済まんが二人を頼む」


 「承りました、奥様。では、行きましょう」


 着いて早々、自己紹介された瞬間退室を余儀なくされてしまった、解せぬ。

 良いや、このまま屋敷探索と洒落込もう。

補足

ベヘモス(ベヒモス)は最早定番の魔物。

此処では成長度合いで呼び方を変えており、幼竜時を幼地獣竜(ベヘモス)、成竜時を成天翼竜(バハムート)としています。

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