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第4話-4「うん、わかった。トウヤのこと信じるよ」

「あいつを切る際、殺したくないという思いで切るのではなく、もう戦うのはやめてって、思いながら切って。なら、きっと、殺すことなく、相手は降参するはずだから」


 俺の能力だが、何となくわかった。


 くそ女神が言ったことは、


 1つ、トロルは岩より硬い。ただし、切れ味については、一つも触れなかった。

 2つ、俺の力は願いの力。切れ味が良いとかそういうものではない。

 3つ、ミスティルのことをよく知ること。この力はミスティルと関係があると言うことだ。


 くそ女神には切れ味は関係ないと言われていたのに、どうしても、トロルを切ったという思い込みにとらわれ、俺は剣の威力=切れ味と思い込んでいた。

 それはまったくの見当違いで、俺の力はくそ女神が言った通り、願いの力。

 





 ミスティルが願ったことを発現する力。

 





 だと思う。


 確証がなかったので、リザードマンの拘束を解く際は使わなかった。

 もし、違っていたら、展開が変わって、あの策ができなかったかもしれないからだ。


 だけど、俺の推測は大方あっていると思う。

 ミスティルがトロルを切った際、思っていたことを聞いて、ほぼ確信した。


 ミスティルはこっちに来ないで、と願って切った。


 だから、文字通り、トロルは本当にこっちに来ず逃げたのだ。


 てっきり、切られた胸を抑えていたので、痛みで逃げたのかと思ったが、あのとき、俺の刀身には血一つ、ついていなかったことを思い出した。


 切られた箇所は手で抑えられていたため、見えなかったが、抑えていた箇所には、傷一つなかっただろう。そうとしか、俺に血が付いていない理由を説明できない。


 そして、岩やリザードマンが切れなかったこと。


 岩はたぶん、ミスティルが元々、切るつもりがなく、何となしに俺に言われるまま、当てたからだと推測する。

 本当は岩を試し切りした時に思っていたことを、聞きたかったが、リザードマンに邪魔されたので、これは推測でしかないが、たぶん、切る意思は少なくともミスティルの中になかったのだと思う。


 リザードマンは、はっきりと殺したくないと思っていたと、言っていたので、切れなかった理由は明白だ。ミスティルが願った通り、俺はリザードマンを殺さなかったのだ。


 だから、戦闘を放棄して欲しいと願って切れば、おそらく無力化できると、俺は考えている。これは俺の推測を試す、いい機会だった。


 リザードマンは明らかに衰弱している。簡単に切ることができるだろう。

 この機会を逃すと、次はもっと強い敵との戦いで、試さなくてはならなくなるかもしれない。


 生憎、俺はミスティルほど、優しくはない。

 リザードマンはミスティルを殺そうとしたし、さっきまで本当に殺されそうだった。

 それもこの戦いは、向こうから仕掛けてきた。


 仮に推測が外れて、本当に切り殺してしまっても、少しは自責の念が沸くかもしれないが、殺してしまったことを、後悔することはないと思う。


 なぜなら、俺は決めたのだ。


 ミスティルを絶対に殺らせはしないって。


 ミスティルは俺の説明を聞いて、少し考える様子を見せるが、


「うん、わかった。トウヤのこと信じるよ」


 吹っ切れた顔をし、俺を握り、構える。

 その返事にはありありと、俺に対する信頼が満ち溢れ、俺も絶対に推測は間違っていないと自信を後押しされる。


「いけーーーーーーーーーー、ミスティル」

「はい!」


 俺の号令と共に、ミスティルは力強い返事を返すと、一気にリザードマンとの距離を詰める。


 そのスピードはリザードマンに体当たりしたときより速く、満身創痍のリザードマンでは反応することすら、できるはずがなかった。


 その勢いのまま、リザードマンの胸に俺を突き立てる。









 これが普通の剣なら、貫いていただろう。

 しかし、俺は普通の剣ではない。


 聖剣だ。


 世界最強の能力を持った聖剣だ。


 ミスティルの尊い願いが叶わないことなんて、あるはずがない。









 俺の刀身はリザードマンの胸を貫くことなく、剣先が少しだけ、リザードマンに触れるぐらいで止まっていた。


 リザードマンは気持ち悪い笑い声も上げることなく、ただそこで静止している。


「やったか」


 ついフラグを立てる声を上げる俺に、リザードマンは震え始める。


 そして、リザードマンは、


「俺が悪かったんご。もう魔王軍に加担することはしないんご。田舎に帰って、実家の農作業継ぐんごーーーーーー」


 と、謝り、涙を流しながら、去っていった。


「あっ、こけた。大丈夫かな」


 去り際、まだ体調が悪いのか、足がもつれて、こけたリザードマンを心配するミスティル。


「ミスティル」

「何でしょうか?」


 俺は嬉しさのあまり、泣きそうな気分になったが、ミスティルに気付かれると恥ずかしいので、ムードに欠けたどうでもいいことを口走る。


「あいつ、かなりダメージ受けてたけど、何喰わせたの?」


 俺が昨日見た限り、食べられないものは石ぐらいしかなかったが、七袋ぐらい食わせていたので、他にも食べられないものがあったと思う。

 ミスティルはう~んと、思い出しながら、答える。


「火打ち石、プルルの実、薬草、ハンカチ、お金とか、あっ、それとハロハロです」

「ハロハロ?」


 確か青色でプルプルしてて、丸くて素早くて、愛らしい生き物だったか。

 アレ、袋に入るぐらいの大きさなのか。


「はい、ハロハロです。もしかしたら、ハロハロが効いたのかもしれませんね」


 あれ?ハロハロって、食べると毒なの?

 てっきり、食用だと思っていたんだけど。


 最後に大きな謎が俺の中に残ったが、とりあえず、この謎はまた今度、解決することにする。なぜなら、俺はかなり眠いからだ。ずっと、夜中起きていたせいだろうか。


「悪いミスティル。少し寝る」

「はい」


 ミスティルの元気な返事を子守歌にして俺は眠りにつく。前にいた世界でも味わったこともない、最高の気分で寝れるので、今日はいい夢が見られそうだ。

明日も投稿します

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