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第5話-1「やばい、エロすぎる」

 目を覚ますと、見慣れぬ部屋に俺はいた。


 木造の家屋で、部屋には簡素なベッド、丸い小さなテーブル、椅子がそれぞれ一つずつ置かれている。テーブルにはカンテラのようなものが置かれているものの、仄暗い。


 窓から見える外は暗く、どうやら、夜のようだ。

 部屋には誰もおらず、ただ一人、俺はベッドの上になぜか、毛布を掛けられた状態で、置かれていた。

 

「ミスティル、いないのか?」


 不安になって、呼びかけるも、返事はない。

 まさか、ミスティルの身に何かあって、俺は誰かに奪われたのでは。

 最悪の事態が頭に過る。


 俺は居ても立っても居られず、声を上げる。


「ミスティル、ミスティル、どこだ、大丈夫か。返事をしてくれ」


 すると、


「うるせぇぞ。今、何時だと思ってんだ!」

 

 隣の部屋から、壁を叩いて抗議する声が聞こえてきた。

 俺は驚いて押し黙る。

 それと同時にドアが開けられ、


「何かあったのですか、トウヤ様」


 慌ててミスティルが部屋に入ってきた。

 その顔は少し紅潮していて、息切れしていた。急いで駆けつけてくれたのだろう。


 その証拠にミスティルはバスタオルのような布、一枚しか纏っていなかった。


 ピアノの琴線のような、細く綺麗な銀色の髪は水の球を纏い、いつもよりきらめいて見え、白地の布はしっとりと濡れていて、ミスティルの華奢な体にぴったりと張り付き、そのボディーラインを際立てさせている。


 やばい、エロすぎる。


「いや、何でもない。ただの寝言だ」


 俺の適当なごまかしに、ミスティルはよかったと胸を撫で下ろす。

 揺れるほど胸はないものの、布一枚越しとはいえ、実物の胸が上下するところを見ると、童貞の俺には少し刺激が強すぎる。


 とうとう俺は目のやり場に困り、目を瞑る。せっかくのラッキースケベを堪能すればいいものの、小物である俺には、この無垢な少女を視姦するような真似はできない。目が潰れてしまう。


「もう少しだけ、待っていてくださいね。洗濯が終わりましたら、すぐに戻りますから」


 そう言って、ミスティルは扉を閉めて出て行った。

 俺はため息をついて、


「もう少し、目に焼き付けておいたらよかった」


 後悔した。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 

 ミスティルが戻ってきた。今度はちゃんと、いつもの緑色のフード付きのローブを着ている。・・・当たり前だが。

 残念な思いで、ミスティルを見る俺だったが、ミスティルは何故だか、ドアを素早く締めた後、両手で顔を隠していた。


「どうしたミスティル」


 俺は先ほどの絶景を頭の隅に追いやり、冷静さを努めて、ミスティルに声を掛ける。


「……さっきの姿、宿の人に見られてました」


 ミスティルは恥ずかしそうに、そう呟く。

 そして、俺はここが宿であることを知った。


 駆けつけた時は、俺のことが心配のあまり、気付かなかったんだろうが、冷静になって、気付いたのだろう。

 少し申し訳ない気持ちになったが、それよりも、あんな姿でも俺が心配で駆けつけてくれたことを嬉しく思った。


 ……ただ、一番嬉しいのが、さっきの絶景だということは、男の性だから仕方ないと言い訳させてほしい。


「まぁ、ミスティル、気にするな。俺の方が恥ずかしいよ。寝言とは言え、あんな大きな声で騒いだんだから」


 俺はフォローする。しかし、ミスティルは顔を真っ赤にしながら、


「恥ずかしいものは。恥ずかしいんです。それにトウヤ様、大きな寝言を言ってたって、私にはわかりません。何せ、トウヤ様の声、私の頭の中に直接、聞こえてくるんですから」


 拗ねた口調で言うミスティル。甘えられたようで、愛しく感じる。

 だけど、それより、今、重大な新事実を告げられたような気がする。

 俺の声がミスティルの頭の中に聞こえてくるって……。


「それって、どういうこと?」

「それって、何ですか?」


 俺は頭の中に俺の声が聞こえる事について、代名詞で聞いたが、ミスティルは何を聞かれているかわからないらしく、聞き返して来たので、


「いや、俺の声が頭に聞こえるって、言うの」


 俺ははっきりと何に対して、聞きたいかを聞くが、


「トウヤ様がテレパシーの魔法を使って、私の頭の中に話しかけてきているのですよね」


 ミスティルはさも当然のように答えた。


「俺、テレパシーの魔法なんて、使ってないんだが」

 

 そもそも、テレパシーの魔法って何だよ。


「えっ、そうなんですか。てっきり、離れてもお話しできるように、テレパシーの魔法をトウヤ様が使ったのかと思いました」


 離れていても、担い手とは意志疎通できる。

 これも聖剣の力なのだろうか。


 ……俺が与えられた能力については、わかったが、それ以外の副次的な能力がわからない。

 これなら、くそ女神に会ったとき、俺の能力について聞いておくべきだった、と俺は後悔する。


「その声って、いつでも聞こえるのか?」

「いえ、トウヤ様と近くで話しているときは聞こえません。離れたときだけ、聞こえます」


 常時、頭の中にも聞こえてくるなら、近くで話しているときはステレオで煩かろうと、心配したが、そこらへんは問題ないらしい。

 くそ女神が与えた能力にしては気が利いている。


「あと、リザードマンと戦った時、魔法障壁とか、身体強化とか起こったけど、それって、ミスティルの力?俺を抜いた影響で、ミスティルの力が覚醒したとかも考えたんだけど」


 リザードマン戦で先送りにしていた力について、俺は考察する。


「いえ、私の力ではありません。さっき階段で転んだ時、魔法障壁は発動しませんでしたし、身体強化もトウヤ様を抜いたときだけ、体が羽のように軽くなるので、トウヤ様の力かと」


 つまり、魔法障壁とか、身体強化は俺を持っている時だけ、発動する能力のようだ。


 リザードマン戦では戦術上、仕方なく俺をわざと手放したが、今後、戦闘する際は俺を手放すような戦術は控えておいた方がよいだろう。

 あの俺を手放した状況。本当なら、剣でもリザードマンはミスティルを殺せたのだから。


 それはそうと、


「階段で転んだとこ、痛くないか。大丈夫か」


 俺は転んだというミスティルを心配する。


「えっと……」


 ミスティルはぶつけた箇所を確認して、


「大丈夫です」


 と答える。


 ただ、俺はそんな言葉、耳に入っておらず、固まっていた。

 

 ミスティルはロングスカートの裾を摘まむと、下着が見えるギリギリのラインまで上げて、太ももを見て答えたのだ。

 その真っ白で、艶やかで柔らかそうな太ももは、太ももだと言うのに太くなく、スラリとしていた。


 それにだ。たくし上げたスカートの奥から、少し白いものが見えたので、もしかしたら、下着まで見てしまったかもしれないと考えると、もう駄目だ。どうにかなりそうだ。


「トウヤ様、どうしたのですか?」


 そう無邪気に答えるミスティルが、恐ろしい魔性の女のように感じた。


 だけど、おそらくこれって、俺の事、男と思っていないだけだよな。


 剣だから、仕方ないとは思うが、こんな可愛い女の子に男と意識されないのはかなり残念だ。


 だから、俺は言う。


「ミスティル。すまんが、俺は今は剣の身だが、元は男だ。そういうことは少し……慎んでくれたら助かる」

「えっ……」


 ミスティルは裾を上げたまま、固まった。

 しばらくすると、顔が見る見る赤く染まり、わなわなと震え出し、そして、


「ツッ……」

 

 両手で顔を隠しながら、無言で部屋を走って、出て行った。


 俺の言うことを信じてくれて、男と意識してくれたことは嬉しいが、流石にドア全開で去られるのは困る。俺が盗まれでもしたら怖い。


「おーい、戻ってきてくれ。頼む」


 俺は早速、ミスティルの頭の中に話しかけて、戻ってきてもらうことにした。

 あと、せっかくのいい機会だ。少し俺たちのことについて、話そうではないか。

明日は投稿できるか不明です。

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