雨の日は自主休校です
補足)これから唐突に旅人さんという謎の人物が出てきます。
旅人さん=読者さんという設定で書いておりますので、そういう設定なんだなと思ってください。
勢いで書いたために内容が破綻している所もあるかと思いますが、大らかな気持ちで読んでください。
ちょいとそこ行く旅人さん。
少し愚痴を聞いてくれないか。
今日みたいな雨の日は学校に行きたくない。
旅人さんも一度は考えたことがあるんじゃないかな。
これから話すのは、雨の日は外に出ないって決めた俺の昔話だ。
少し長くなるが聞いていってくれ。
レイン=アルバード、今の俺の名前だ。
今のってわざわざつけるのは、俺が俗にいう転生者だからだ。
日本の普通の大学生だった俺は、1時間目の試験に間に合うように走っていたら階段から足を滑らせてしまった。
おそらく、それで死んでしまったんだろうな。
気がついたら、俺は金髪碧眼の赤ん坊になっていた。
赤ん坊になったときは、そりゃすごく驚いたさ。
なんたって見たことのない巨大な外人が俺を持ち上げてるんだもん。
足のつかない浮遊感と知らないやつにガン見されてる圧迫感から俺は泣きまくった。
そんな感じで赤ん坊ライフを過ごしているうちに状況が分かってきた。
この世界が、テンプレ的な中世ヨーロッパ風の世界だってこと。
アルバード家はアクア公爵家に使える貴族だっていうこと。
親父が、アクア公爵家の騎士団長をしていること。
アクア公爵家に俺と同い年の女の子がいるってこと。
・・・今の俺もフツメンだってこと。
それからの俺は、幼馴染のお嬢様と遊んだり、大学生の知識で家庭教師から神童だと言われたり、魔力を増やす特訓をして夜更かししたり、順調に育っていった。
そして、俺が12歳のころ事件がおきた。
その日はアクア公爵家の次女、シェリル様の誕生日パーティーだった。
この国の貴族の子女は13歳から4年間、親の元から離れ王立学園に通わなくてはならない。
「これからずっとレインが私を守ってね」とか「学園で他の女の子に話かけちゃだめよ」とかシェリル様が可愛いことを言っていたのを覚えている。
パーティーが終わりに差し掛かった頃、魔女が現れて、使い魔を大量に召喚して攻撃してきたんだ。
それで騎士団と魔女との戦いが始まった。
その時の様子はすごすぎて俺には説明出来そうにないな、ただトマトが辺り一面に潰れた様に真っ赤だったとだけ言っておく。
なんとか騎士団が勝ったんだが、魔女は最後に呪いをシェリル様にかけようとした。
俺はシェリル様を庇って呪いをうけた。
あの時は、死ぬかもしれないって思ってたけど体が動いたんだよな。
何だかんだで俺もシェリル様のことが好きだったんだ。
少し惚気させてもらう。
かけられた呪いは、すぐに死ぬようなものでは無かった。
雨が針のようにからだを貫通する、こんな呪いをかけられてしまった。
かくして、俺は雨の日に外に出られなくなったわけ。
この呪いは厄介で、呪いについて新たに知るとそいつも呪われてしまうんだ。
旅人さん、そんな怖い顔しないでも大丈夫だよ。
旅人さんは別世界の人だから呪われないんじゃないかな。
仮に呪われても地球の雨なら問題ないさ。
その次の年から俺は王立学園に通うことになるんだけど、一つ大きな問題があった。
今まで話した通り、俺が雨の日に登校するのがいかに危険かは分かってくれるよな。
だから俺は雨の日は学校に行かないってきめたんだ。
でも、旅人さんと違って他の人には呪いのことを言えないんだ。
理由を言えない以上、雨の日は学園をサボるしかない。
公爵がお金と権力で雨の日に学園に俺が行かないことを認めさせてくれたんだが、きちんとした理由が無いことで俺は教師や生徒たちの反感を買っていた。
特に生徒たちからは、そんな俺とシェリル様が一緒にいるのが許せなかったようだ。
公爵はレイン=アルバード(俺)に弱みを握られてシェリル様は鬼畜最低野郎(俺)に酷い目にあわされている、というのが彼ら共通の認識だったようだ。
3年生にもなるとシェリル様はかなりの美人になっていた。
白銀の髪はシルクのように滑らかで艶やか、瞳はルビーと見間違えるほどの透き通った紅。
微笑んだ顔を見れるだけでその日が最高であったと断言できるのは間違いなかった。
彼女の身分と美貌を考えれば、俺とシェリル様がいつも一緒にいることが不自然に見えていたのは事実だった。
そういえば、旅人さんは中世ヨーロッパって怖い時代だと思わないか。
例えば、魔女狩りで何の罪もない人が集団の暴走で無残に殺されたりするよな。
魔女狩りにおいて被告人は魔女でも人間でも殺されてしまう。
思うに中世の人にとって大義名分があればそれで十分なんだろう。
話を脱線させたいわけじゃない、この話も俺に関わってくる。
魔女狩りの魔女が俺になってしまったんだ。
つまるところ、昨日生徒たちから決闘状を渡された。
決闘とは名ばかりで40人対1人の公開処刑みたいなもんだ。
あいつらは学園のガンを排除しシェリル様を救うとか言っていた。
大義名分を掲げて動き出した集団は止まらない。
教師たちも公爵のためになると考え、決闘は闘技場で行うことになった。
それで闘技場の控室で旅人さんとこうして話てるってわけだ。
これが俺の今までの話さ。
最後まで聞いてくれてありがとう、旅人さんはもう行くといい。
これから凄惨な展開が待っているからね、旅人さんと会えて良かったよ。
40人対1人の結果の見えた決闘ではあったが、闘技場は熱狂的な盛り上がりを見せていた。
レインは40人もの生徒を倒すのは騎士団長の息子で剣の腕の立つ自分でも厳しいと考えていたし、仮に倒しても観客席にいる大勢の生徒や教師が自分を無事に返してくれるようには思えなかった。
レインは大きな盾を傘にしながら覚悟をきめていた。
審判をやっている教師がレインに詰めより言った。
「レイン=アルバード、君は公爵閣下の弱みを握り学園で横暴の限りを尽くした。何か申し開きはあるかね」
「一つだけお前らに聞かせたいことがある。俺が雨の日に学園に行かないのは・・・」
レインが大声で説明を始めると雨に打たれていた生徒や教師が倒れていった。
闘技場は大混乱に陥り、逃げだした観客席の人々も雨に打たれて倒れていった。
闘技場にはレインとシェリルしかいなくなっていた。