1話「ケンカはほどほどに」
僕の名前は社樹。7人兄弟の5番目だ。兄弟は上から肇、双葉、三郎、紫葉、僕、睦葉、菜々子だ。だが、今はそれはどうでもいい。というよりそれどころじゃない。
「樹兄、むっちゃんがなっちゃんの玩具盗ったぁー」
「違うよ。なっちゃんがむっちゃんの盗ったんだよ!」
違う、違うよと言い争いが収まらず睦葉にケンカの仲裁役として引っ張り出された訳である。
堪ったもんじゃない。
縁側で猫のクロと涼んでいた僕のリラックスタイムは突然に終了した訳である。
「……で、どっちが先に手を出したんだ?」
「「あっち!!」」
どっちだ。
違う、違うよとまた言い争いが始まる。言い争いに加えて実力行使が始まるから更に堪ったもんじゃない。
睦葉が本棚の本を宙に浮かし、菜々子も負けじと玩具箱に入っていた車を浮かす。そう、二人共『能力』がもう発現しているのだ。普通は7、8才頃に変化が始まるから相当に早い事になる。僕は遅かった。いや、遅かった所かこの二人の妹に触発されて『能力』が発現した。兄としては複雑な気持ちである。
「「いっけー!!」」二人の動かした物達はお互いがお互いに向かって飛び交い始めた。
「ちょ、ちょっとやめなって!」
僕は二人の間に入る。ボコボコと本や車が僕にぶつかる。正直、結構痛い。
「むっちゃん、むっちゃんが姉ちゃんなんだから今回はなっちゃんに譲ってやりな。」
「やだ!樹兄前も同じ事言った!」
しまった。今回はなっちゃんの番だったか。相変わらず車が後ろから飛んでくる。
「じゃ…じゃあ、兄ちゃんが遊んでやるから今回は譲ってやりな。」
「やだ!!!」
……。傷付くぞ。
「むっちゃんばっかりずるい!!」
「そうか!なっちゃん、兄ちゃんと遊ぶか?」
「やだ!!!」
……。なんなんだ、この姉妹。……傷付くぞ。
一体、何がしたいんだ。…仕方ない。最終手段をとるか。
「むっちゃん、なっちゃん……。」
フッと空気が変わったのを感じたのか二人共投げるのをとめた。
「これ以上続けるなら……」
「肇兄、呼ぶぞ!!!!!」
「「…。」」二人は顔を見合せ、そして
「「樹兄のバカー!!!」」
そう言って二人は一斉に僕に向かって投げつけ始めた。一体、何したんだよ……肇兄。
その場にいては堪らないので逃げる事にする。『能力』の恐ろしき事かな。逃げても逃げても追いかけてくる。縁側を駆け抜け、門の外へ脱出!
「……失敗か。」
僕の体が門の下で見える。どうやら、帝都から帰ってきた二郎兄にぶつかったらしい。ぶつかった拍子に僕は『また』抜け出てしまったらしい。それにしても流石、二郎兄。タイミングが最悪である。
「おーい、樹。帰ってこーい!」
二郎兄があさっての方を向いて呼び掛けている。違う、そっちじゃない、此方だ。それに、帰れるなら直ぐに帰ってるよ。魂は門の上、体は門の下。……僕の『能力』は『幽体離脱』。日常生活においてもかなり困りものの『能力』であり、厄介体質である。