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ADAM  作者: 流風 生海
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たたかい。(1)

 定刻13時ジャストに蒔司はハンガールームにいた。

 早速ペガサスを装着し、屈伸運動など柔軟体操をしてみる。

 なるほど、昨日とはまるで違う。動きがスムーズで「着ている」という違和感が格段に減っている。

「どうですか?」

 整備の人。

 そう言えば名前聞いたことなかったな。ま、今更必要ないだろう。

「うん。格段に良いよ。ありがとう。それで装備の方は?」

「それなんですけれど、カメラなどの調整はもちろん十分です。ですが、元々下腕内蔵式の標準装備のダイヤモンド刀はそのままです。模擬刀はこちらのボックスに入っていますのでこちらをお願いします。」

 模擬刀を取り出す。

 うん。指定通り握りの部分が拳4つ程長く作ってある。反りも程よい。

「それで・・・言われた物ですが・・・これでいいんですか?」整備員が聞いてくる。

 そこには鉄パイプらしき物が。長さは模擬刀とほぼ同じ長さに切ってある。

「うん。OK。面倒かけたね」

 パイプを掴むと腰のアタッチメントロックに挟み込む。

「はぁ。それで・・・感度設定とかオプションとかも言われたとおりやっておきましたが・・・大丈夫なんですか?」

 心配そうな顔をしている。

「ん。ありがとう」

 全ての装備を確認し、模擬刀を携えてエレベーターのドアに向かう。

「じゃあ行ってくる」

 そう言い残すとドアが開き、後ろから「B2訓練場にお願いします」との声を受けながらエレベータに乗り込む。

 

 B2訓練場はちょっとコンパクトな部屋だった。といってもカメラによる測定距離で直径450mの円形ドームではある。

 

 壁際にいるのはミーシャだろう。そして中央にいつもとはちょっと違う形状のBBS。おそらくアンネだ。葉月の姿というか機影は見えない。

 

 歩を進めアンネの前に立つ。

 

「何か雰囲気違いますね、重装備ってやつですか」

「そうね。予定外に隊長ともやることになちゃったからそれなりの装備にしてあるの」

 シンプルに言葉を返すアンネ。

「それだけ隊長は手ごわいということですか」

「まあね、ケダモノだから・・・」

 その時派手なエンジン音がドームに響く。

「あ、来た」「おいでなすったか」とアンネ、ミーシャの言葉につられて音のする方向を見るとなにやらスノーモービルっぽい形をした乗り物の上に立つ人影。両肩に切れ目の入った白いマントを羽織り、切れ目から両腕を突き出し、その手で2mはあろうかという大剣を杖のように突き立てている。が、BBを着込んでいるにしてはコンパクトな体型のように見える。

「ボストックじゃないんだな」

「うん、隊長のは特別製。私にはあれは装備できない」

 アンネの言葉が緊張しているようにも見える。

   

「揃ったな。全員準備はいいか?」

   

「はい」と言葉を返す3人。

   

「それでは、最初の5分はお前たちにやる。3人総がかりで私を攻めて見るのも良し、まずはお互いにやりあってみるのも良し。好きにしろ」

   

   

「どうする?」

 バディ専用チャンネルでミーシャに問うアンネ。

「アダムを味方につけても邪魔なだけだろう?それよりも予定通りアダムを攻めるどさくさを狙ったほうが良いだろう」

「やっぱりそうだよね。OK。じゃあ作戦どおりに」

 そう言ってアンネが無線ををオープンチャンネルに切り替える。

   

  

「アダムちゃん、多少しんどいけれど、これも訓練だからね。私の動きをよく見て。大丈夫。怪我はさせないように気をつけるから」

 アンネの言葉に「気遣い感謝する」とだけ返す。

   

  

 蒔司は深く息を吸い、細くゆっくりと吐き出す。

 ・・・俺の心が再び冷たくなっていく・・・。

    

  

(ほほう、3機で向かってくるかと思ったが・・・何か作戦があるのか?)そう思った葉月ではあったが、余計なことは言わない。

   

  

「それでは模擬戦闘を始める!5秒前!」葉月が発する。

   

 ミーシャが銃を構える。アンネが間合いを取る。そして蒔司はペガサスのアクティブバインダーを展開させ両腕を広げる。

   

「始め!」

   

 その瞬間にペガサスが後ろへジャンプで飛びずさり、両壁にそれぞれ3点バーストで撃ち込む。

「何やってんの?」

 アンネが問う。訳がわからないといった風だ。

「いや、ライフルチャンバーに実弾が残っているかもしれないと思ってね」

「そんな心配は当てられる人がすることよ!」

 言うが早いかアンネが飛び込んでくる。

   

 それに合わせて更に後ろに飛ぶペガサス。

 そしてその機体後部から白い煙が発生する。

「スモークは赤外線が使えるBBでは意味がないのよ!」

 更に飛び込むアンネだがペガサスは更に下がっている。

(案の定足の速さでは俺のほうが上らしい)

「逃げるなぁ!これじゃ訓練にならないでしょっ!」

 アンネの言葉を無視して走り始める。

 スモークを撒き散らし、ミーシャのいる側の反対方向へと縦横に。

 壁際までは走らない。ドームの中央部分にスモークを盛りつけるがごとく走っている。

 方向転換する瞬間はアンネの間合いにも入る。

 だが、攻撃しようにもタイミングが合わない。

「5分逃げ切って隊長の参戦まで持ちこたえるつもりよっ!ミーシャ!」

「了解。アダムの足を止めよう」

 ミーシャは言うが早いかペガサスの右の膝関節の隙間に狙いを定めトリガーを引く。

 が、外れる。

(ん?)

 予想外の事態にミーシャが首をかしげる。一瞬アダムのサーモグラフィの画像がぶれたのが気になる。

(やっぱり感度A++は速射だと銃口のブレが大きいか)

 そう思うと機体のアンカーを展開し、関節を固定する。

(しかし、愚かな選択をしたもんだ。スモーク越しではこちらの銃口の向きは予測できんだろうに)

 火薬を使わず高圧空気で発射されるペイント弾。当然サーモグラフィには感知されにくい。

 つまり、ペガサスのカメラで銃口の向きを捕捉するのは実質的に不可能だ。

 そう思うミーシャであったが何かが引っかかる。

 今アダムは左に向かって走っている。サーモの解析データがそう告げている。左足の関節を今度は狙う。

 タンッ!という音と共に発射されたペイント弾がペガサスの腰のアクティブバインダーによって阻止される。

 {アクティブバインダー作動。命中阻止}コンピューターからの音声が流れる。

(何?!なぜアクティブバインダーが動く?!)

 おかしい。今のは確かにヒットしたはずだ。ペガサスのカメラではこの弾道は予測できなかったはず。 なのに何故。

 次はわき腹を狙ってみる。腕が前に出るタイミングで一発。だがこれもバインダーに止められる。おかしい。

(ええい!)と膝周りに飽和射撃を放つ。だがいつまでたっても{命中判定}が下らない。

(アダムのやつ何を仕込んだんだ?)


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