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ADAM  作者: 流風 生海
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条件(2)

 カタカタ・・・と端末を操作する音だけが部屋に響く。


 ふと、それまで激しく端末を操作していたラグノの動きが止まる。


 「何?!そんなバカな?!」

 驚いた声を上げ葉月に目線を送る。もう嗅ぎつけたのか。

 「事実だ。口にするな」

 「サリィ。そりゃ狙われるわけだよ・・・こんなもん抱えてれば」

 「済まないがそれが最重要機密だ。その件についての一切の口外を禁ずる」

 強い語気で言う葉月。

 「ふーん・・・他の民間人も知っているみたいだが?」

 エイリィのことか。

 「あのババアはこちら側の人間だ」

 吐き捨てる。

 「ババア?13歳のピチピチギャルちゃんみたいだが?」

  「・・・?!」

 その言葉に固まる葉月。

 「13歳?誰だそれは?!」

 「名木沢=マリア=華音。この前のマンション爆破の数少ない生き残りだそうだ」


 話の脈絡がつかない。


 「どういうことだ?どこからの情報だ」


 「あたしを馬鹿にしてんのかい?この位の検索朝飯前さ。ま、ソースは開かせない。ハッカーとしての暗黙の了解みたいなもんだ」

 「それを提示せよ、という命令を出しているのだが?」

 「気持ちはわかるよ。だがな、内容を言うことは出来ても、晒していい出処と晒せない出処ってのはある。この世界で食っていく上での仁義みたいなものさ」

 「その情報は・・・警察ネットか?」

 「YESとは言えないね」

  「その情報を消すことは出来ないのか?」

  「無理だ。コイツの記録は焼付けでな。後からの改変は物理的に出来ない」

  「では、その情報を否定するような、もしくは疑問がつくような情報の後付けは出来るのか?」

  「言うと思ったね。既に始めてるよ。この華音ちゃんではなく、テロで亡くなった彼女の姉が情報を持っていたという訂正を入れるつもりだが?」

  「ああ、それでいい」


 「可能な限りの不正アクセスの遮断を命ずる。私は一旦部屋を外す。しばらくしたら戻る」

 そう言い残して部屋を出る葉月。


 頭が沸騰している。疲労に加えてこの状況。

 私が知らない、誰かが機密情報を知っている?

 内通者によって情報を外部に渡すために載せてあるのか?

 そもそもどうやってその人物が蒔司の正体を見抜いたのだ?

 内容によっては「処分」も検討せざるをえないのか?

 相手はまだ子供だぞ?

 だが、今回の事件に関係があるのかも知れん。ワザと「生き残り」を装って疑惑の目から逃れる気かも知れん。あるいは・・・。

 嫌な予想しか浮かばない葉月。


 病棟へ急ぐ葉月。

 これは直接話して確認せねば。


 蒔司たちの病室を覗く。そこには何故か突立っているフェルティと談笑しているミーシャとアンネ。蒔司の姿はない。


 「お、お前たち、蒔司はどこだ?!」

 つい声が大きくなる葉月。

 「蒔司さんなら「デート」だそうです。華音さんと」

 アンネがさらりと答える。

 「え?」

 思わずよろけそうになる葉月。

 「隊長。蒔司のやつ、フェルの他にも手ェ出しやがったんですよ。しかもお子様をね」

 ミーシャが半分呆れた顔で報告する。

 「おい、フェル。どういうことだ?」

 フェルティに尋ねる。

 その言葉にはっとするフェルティ。

 「あ、姉さま・・・ごめんなさい。報告が遅れてしまって・・・」

 「ちょっとこっちに来い!」

 フェルティを廊下に引きずり出す。

 「説明をもらおうか?」

 小声で問う葉月。

 フェルティの説明を受けて不思議な面持ちになる。


 「要するに、理由不明で感づかれたと?」

 「良くわからないんです。「幽霊」だったという時は私は会ってないし」

 「ふむ。で、今はやたらと蒔司に懐いていると」

 「はい。あの感じだと蒔司の正体を自ら口にはしないと思うの。自分で独占したいような素振りだし」

 「まあ、言ってしまえば周りのヴィジリアン全てがライバルになる訳だしな・・・」

 「はい」

 「だが、いつまでもこのまま放置することはできん。リスクが大きい」

 「そこなんですけれど、蒔司をラボの病室に移せないかしら?あそこなら華音さんが何を口走っても大丈夫です。それに・・・」

 「蒔司の秘密を守りながらの治療には都合もいい。か」

 「はい。それにね。姉さま。正直、今日みたいに大騒ぎになると・・・ミーシャさんから苦情も出ました」

 「わかった。では治療環境を整えるということで蒔司をラボに引き取ろう」

 不意に思い至る。

 そういえば彼女は生き残りといってたな。

 下手に世間に放り出すよりも監視下に置きたい。

 「華音とやらもラボに引き取るのが良いだろう」

 そう言ってから気づく。フェルティの複雑な顔に。


 「本音では来てほしくない。か」

 ゆっくり頷くフェルティ。


 トリスティアとのチャットの文字が脳裏に浮かぶ『アダムとしての自覚を持たせろ』『パートナーが一人というのは許されない』。

 この言葉を、今、フェルに告げなければならないのか私は。


 「仕方あるまい。アダムである以上は」

 それ以上は言葉に出来ない。


 葉月の言葉を一瞬の驚きの表情をもって受け取るフェルティ。


 「そうですよね・・・蒔司は、アダムなんですものね・・・」

 うつむき、力なく口にする。



 それが、今のこの基地を守る条件だとは口にできない葉月であった。

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