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ADAM  作者: 流風 生海
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償い(3)

 「や、ミーシャ。どうだい機体の調子は?」

 蒔司がトイレから戻ってきた。

 「ああ、帰ってきたか。ん?なんだ?そのギクシャクとした動きは。やっぱり痛むのか?」

 「まあ、痛くないと言えば嘘だよね。でも、この動きはさ、体中にサポーターとか固定具とか着けられて、まともに動けないんだよ。」

 「当たり前です。その状態で誰も歩くことを想定してませんから」

 温もりのないフェルティの声。目線が怖い。

 「悪かったよ。でも、これだけは勘弁してくれ」

 拝む蒔司を見てフェルティがため息をつく。

 「解ったわ。車椅子を用意するからそれを使ってくださいね」

 リモコンを何やら操作する。

 すぐにスルスルと空の車椅子が走ってくる。

 勝手にベッドに横付けるとアームを伸ばし、ベッドにマットを載せる。

 「さ、この上に横になって。蒔司。操作はこのリモコンでしてね」

 そういうとマットの上に横になった蒔司に手渡す。

 「だからといって、勝手に出歩かないこと。安静が一番良いんだから」

 そう念を押すフェルティ。

 「ゴメン。ありがとう、気をつけるよ」

 うん。

 と、やっと笑顔で返事をするフェルティ。

 そしてミーシャを向いて一言。

 「ミーシャさん。申し訳ないんだけれど、病院内でBBで歩くのはちょっと」

 「ああ、そうだな。寝ている人にはウルサイか。ローラーで滑るようにしよう」

 「うん。お願いしますね」



 改めてミーシャの機体を見て不安になる蒔司。この機体で任務につこうというのかこの子は。

 「しかし、本当にひどい状態だなそのボストックは。任務につけるのかい?」

 「ああ、フレームと駆動系には問題がない。外部での活動用に穴はシールする必要はあるが、要はそこだけだ」

 「無茶するなよ」

 「いらん心配するなよ。少なくとも蒔司みたいに自分の体にダメージを負うような活動はやりたくてもできんぜ」

 「ミーシャさん。ちゃんと睡眠は取るのよ?」

 「ああ。わかっているよ。ありがとうなフェル」

 そう言って、アンネに向き直る。

 「アンネ。頑張って早く治そうな」

 アンネに向かって優しい言葉をかけるミーシャ。

 うん。と頷き返すアンネ。

 「蒔司。お前はじっくり治せよ?どうせ機体も無いんだし、半病人に俺のバックは任せられんからな?」

 「なんだ。俺にはかける言葉が違うじゃないか」

 つれないな~といった顔の蒔司。

「戦場で上官が先にへばってどうするんだい?これから先はもっと厳しいんだ。体に爆弾抱えた奴は上官だとしてもありがたくねえ」

 ぶっきらぼうではあるが、これがミーシャなりの優しさの表現ということなのだろう。

 「ありがとう。その言葉にしばらく甘えさせてもらうよ」

 ミーシャがニカッとした笑顔で返す。

 「ああ、よろしく頼むぜ。だが、ハードなプレイで治療が遅れるって言い訳は聞かんからな」

 蒔司とフェルティ、交互に目線を渡す。

「しません!」

 赤くなった顔でフェルティが答える。

 「フェル。お前はもうちょっとボディラインを隠すような格好が良いんじゃないか?その方が蒔司も発情しにくいだろ」

 追い打ちするように更にからかう。

 「んもう」

 膨れるフェル。

 ゆったりと作ってあるフェルティのナース服。だが、それでも彼女の豊かなボディラインの起伏を隠せていないのは事実だ。


 「んじゃあ、もう夜もふけたし、俺はこれで。また明日な」

 軽く敬礼をして部屋から出ていくミーシャ。足裏のローラーを使って今度は滑るように動いている。

 あ、と引き止めたいアンネ。このメンバーで夜を明かすのは心臓に悪い。そう思う。

 だが、恐らくミーシャのことだ。夜を徹して自分の新しい愛機の修復にとりかかるであろう。そう思うと口には出せない。



 さてと。

 一旦部屋を出たフェルティが折りたたみのベッドを転がしてくる。おまけに寝間着に着替えている。

 蒔司とアンネのベッドの間に設置して一言。

 「それじゃあ、私達も寝ましょう。睡眠が一番の治療なんだから」

 「えーっとフェルちゃんもここで寝るの?」

 「うん。だって私は特務の看護師よ。ここで寝るのが正解」

 実にあっけらかんと言うフェルティ。

「貰ったベッドよりは寝心地悪いけれどね」

 そう付け足す。

 寝心地よりも居心地が悪いと思うアンネ。だがそれはさすがに言えない。

 「じゃ、じゃあおやすみなさい」

 そう言って再び布団で頭を覆うアンネだった。


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