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ADAM  作者: 流風 生海
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後始末(7)

 ひとしきり罵詈雑言を並べ、机が原型を留めなくなった頃。

 ハンガールームでボストックごと拘束されているハリエルを思い出す。

 部下を裁くのは辛い。

 だが、けじめを付けなければ。


 ハンガールームに行くと、たまたま非番で難を逃れた整備員達が慌ただしく動いている。

 一機だけ「浮いた格好」になっている、一機のワイヤーで縛り上げられたボストック。

 ゆっくりと近づくと声をかける。

 「ハリィ・・・」

 だが返事がない。

 「おい、ハリエル!」

 ヘルメットを脱がそうとして気づく。ボストックが気密モードになっている事に。

 横の制御盤に目をやる。機体内酸素濃度ゼロだ。

 制御盤からの操作で気密モードをフィルターエアーモードに切り替える。

ヘルメットを外すと。

 涙の乾かないままの顔で自殺したハリエルがいた。

 一抹の寂しさとかすかな安堵を覚える葉月。

 ハリエルの動機は分からず仕舞い。だが、その動機を聞くのも心苦しい。

 申し訳ないが、利用させてもらう事にする。「金で基地を売った裏切り者」として。

 同じ基地の者として、元部下に対する一つの礼として、心の中で手を合わせる。

 そして整備員にハリエルの遺体の回収と機体のメンテナンスを命じ、ハンガールームを後にする。



 エイリィは能力としては有能な方に入るのだろう。

 署員の出迎えを暖かく受け入れ、そのまま記者団に答える。そして宣言する。「テロは収束した」と。

 あえて詳細は言わない。ただ、軍の懸命の働きによりテロ集団が全滅し、それが故に背後を洗う手がかりも無くなったと。そして、わざと「せめて一人でもいいから生け捕りをして欲しかった」と軍に注文をつける。

 その後も記者を煙にまくように言葉を弄しながら記者会見を終える。


 エイリィの指示通りに「隠しページ」へのアクセスを止め、エイリィの思考データの解析結果を見守る葉月。


 しばらくして遼氏への連絡をとっているのだろう。作戦報告を作っているようなデーターが葉月の端末に表示されている。

 要するに作戦失敗、テロ首謀者と軍に判断された諸茗は自害。

 沖合の輸送艦は軍によってその存在を感知され撃沈。

 非常事態を利用して全ての住民の中の候補者から血液サンプルを取るも「男性の発見」は出来ず。

 最も可能性の高かった宮本蒔司は、戦闘中に流した血液から分析するも、男性ではないことが確認された。

 これらの状況により、今後のチャイナの安定のため、全ての戦闘要員に自決の指示を出した。

 なお、秘匿ページへの侵入を行なっていたのは中町指令の秘書官であることを諸茗が突き止め射殺し、先程端末にデータ破壊のウィルスを送り込むことに成功。今後覗かれる心配はない。

 今後共監視は怠らないが、枕崎に男性が居る可能性は無いに等しい。


 大まかに言うとこんな感じであろう。

 思考を読んでいるので当然嘘はつけないエイリィ。

 指令の秘書官に死者はいないのだが、それはこちらで工夫しろということか。

 オペレーションルームの死者にその肩書きを日付を遡って与える必要がある・・・。


 現在この基地には司令部に属するのは葉月しかいない。

 軍規により、現在の基地を導くのは葉月独りだ。

 ふと、蒔司を参謀に引き上げる事を思いつく。

 だが、ただでさえ実働部隊員が少ないこの現状。

 ましてや、その類まれなる戦闘能力を皆んな知ってしまっている。

 さすがに前線から外すという指令は本人も、周りも許さないか・・・。


 改めてBB部隊の死傷者リストに目が行く。

 第一小隊、全員死亡。

 第二小隊、隊長含む3名死亡。

 第三小隊、アタッカー2名死亡、スナイパー1名重傷。

 第四小隊、アタッカー1名死亡、スナイパー1名重傷。

 第五小隊、隊長死亡、アタッカー1名重傷。

 第六小隊、隊長死亡。

 特務小隊、2名重傷。


 何なんだこの結果は・・・。

 自分を含めて総数40名。うち14名の死者。5名の重傷者。

 満足に動けるのが半分だと・・・。

 名前に目が行く度に、葉月の頭をメンバーの記憶が浮かんでは消える。皆んなこんな事で亡くなっていい部下じゃない。

 自分の無力さを思い知る。

 私は・・・私は・・・。

 「この椅子」に座る以上、泣くことは許されない。それは「仕事」ではない。

 険しい顔でリストを睨む。

 重傷を負った第三、第四のスナイパーは一時的に小隊編成から外し、第六を第一に移し、第五は第三に編入。うちアタッカー1名スナイパー1名を第二へ・・・残りは・・・現兵力で我慢してもらうしか無いか・・・。

 第四は二名欠員だが、エンリケは、スナイパーもアタッカーも出来る、いわゆるデュエルだ。彼女に踏ん張ってもらうしかなかろう。

 しかし、指揮官を任せられる人物に不安が出る。

 「隊長格」は葉月、蒔司も含めて4名・・・。第三と第四以外は特務・・・。

 こんなアンバランス上が認めまい。

 だが、総じて若い隊員が多く、安易に昇格させるのも難しい。全体的な視野を持てる程経験が深い隊員などそう簡単に見つかるものでもない。


 仕方あるまい・・・とつぶやく葉月。


 部隊再編リストを作成し熊本本部へと転送する。

 重ねて熟練員の増員とボストックの補充を催促しておく。


 寝る暇もない状況になったが・・・いや、未だに交代できずにゲートに立っている第二小隊もか。

 もうすぐ日も昏れようとしている。


 葉月にはまだ他の軍部署の再編プランも立案する仕事が残っている。


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