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ADAM  作者: 流風 生海
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帰結(2)

 一度BB形態になったからであろうか。今度は思い通りに飛行するペガサス。霧島コロニーへの自動飛行は解除されている。

 脳裏に浮かぶナビゲーション画面で枕崎を選択し飛ぶ。

(フェル・・・大丈夫だよな・・・)

 自分のせいでこうなったという事実が焦りを生む。

 だが、燃料増槽のなくなったペガサスに高速飛行はできない。

 ジリジリと心が焦がされる思い。

 ようやく陸地が見えてきた。

 外にも敵がいるかもしれない。

 エンジンをカットし惰性で飛ぶ。フラップを引き出しカナードの角度を調整し滑るように静かに飛んでいく。

 港らしきものの上空を通過する。

 目の前には巨大で上半分が透明なドームが見える。

 失速のアラームが鳴ると同時に変形。自動的にスラスターで姿勢を制御されて降り立つ。

(ここは・・・)

 街だ。いや、だったというのが正解か。

 薄緑色の夜明かりに照らされるだけの廃墟。不気味な世界ではある。だがそんなこと気にしている場合ではない。枕崎コロニーは、基地は目の前だ。

 走り出すペガサス。





「え?何?」

 第2小隊ハリエルは気づく。前方暗がりの中からセンサーに感あり。識別信号がそれがペガサスであることを示している。

「止まりなさい!」声をかける。

「すまない。急いでいるんだ」

「蒔司少尉ですか?」

「ああ。そうだ」

「どうして!いいえ、どうやって外に?」

「そんなことはどうでもいい。中の状況は?」

「苦戦はしてますが状況の打開はできています。今警察署での作戦行動が終了したと」

「基地は?」

「同じく終了したとのことです。これより全勢力を持ってスライムの駆逐にあたると」

「そうか・・・で、なんで君はこんなところで一人なんだ?」

「・・・哨戒任務ですので・・・」

 その言葉に引っかかる。

「夜間にか?」それも何故独りで?・・・?

「あ、ハイ」

「ふうん・・・何を探している?いや、ま、いい。ゲートは誰が守っているんだ?」

「こちら側のゲートには隊長とミナルがついています」

「そうか。実は俺はこっちのゲートは使ったことないんでよくわからん。道案内を頼む」

「え、えっと命令ですか?」戸惑った声だ。

「そうだ。上官として命じている」

 微弱な電波をハリエルのボストックが発している事をペガサスのセンサーが示していた。それは・・・この基地で使われる周波数ではない・・・。カマをかけてみるか。

「それとも入り口は無人か?」

「な、いえ、そのような事は無い、です。何故そのようなことを・・・」その言葉に見える動揺の色。

「俺の無線には「基地からの情報は入ってきていない」普通のボストックがペガサスの情報能力を上回ることはない。わかっているはずだ。」

「う・・・」

 ゆっくり念を押すように語りかける。

「この位置なら見えただろう?もう、船は。ない」

 海を指差す。船が沈没する様はセンサーでも感知できる。

「はい。見えました」

 武器を捨てるハリエル。その仕草が「ハリエルがクロであること」を示している。

「それでいい。最早お前たちの計画は潰えた。俺もさすがに同じ隊員のお前までは切りたくない。自首して公正に裁きを受けるがいい」

 ワイヤーでハリエルのボストックを後ろ手に縛る。

「では入り口に案内してもらおう」

 ハリエルを先にしてゲートに向かって歩き出す。




 ゲートは・・・骸となった2体のボストックが守っていた。

「嘘!何でっ!」

「お前がやったのか?」

「まさか!そこまではしていません!通過許可を出しただけです!」

 必死に抗弁するハリエル。謀ろうという雰囲気ではない。

「まあ、お前のボストックのデータを見ればわかるさ」

 そう言うとゲートを開けて中に入る。

 シャッターが閉じ、シャワーが吹きつけられる。

 目の前のシャッターが開くとそこは金属の壁で作られた、だだっ広い廊下。脇に大型トレーラーが3台寄せてある。注意深く近寄るが、無人だ。カーゴルームにBBのハンガーと思しきものがある。どうやらこいつで侵入したらしい。

 


無線が入るがノイズが酷い。ジャミングか?

「ジャミングかけたのかハリエル?」

「は、はい。ゲート周辺には・・・正門側も。ですのであちらのメンバーは何も知りません」

「つまりは無事だと言いたいのか?」

「・・・はい」

 壁にかかっている内線電話を取り、正門ゲートを呼び出す。

「はい。こちら第2小隊ナディアです」うん、大丈夫なようだ。

 ハリエルの言葉通り向こうは何も知らないことを確認すると、緊急事態である事を告げ、1機のみ残して後はコロニー内のスライムの鎮圧に向かうよう指示する。

 こちらのゲートでの出来事はあえて言わない。

「情け。ですか?」

「いいや。お前、自分の口で言うべきだろう。その責任がある」

「はい・・・」

「この先は?」

「エレベーターホールです。1階に上がるとボストックのハンガールームがあります」

 そうか。

 駆け足で進む。



 ボストックのハンガールームの光景に息を呑む二人。

「こんなッ!なんで?こんなはずじゃなかったのよッ!」

 自分が招いた結果に動揺し怯えるハリエル。

 蒔司も見知った顔を見つけて心が大きく揺れる。

「マイア隊長・・・」

 怒りが再び心を冷たくする。

「ハリエルッ!お前はここで懺悔してろッ!」

 そう言うが早いかハンガーにボストックを突っ込みロックをかける。

「ッアア~ッ!」

 大声で泣き出すハリエル。

 ハリエルとの通信を切る。どういう動機でこの基地を売ったのかは知らない。聞きたくもない。


 ハンガールームの中で、ようやくジャミングが消えた。急いで葉月と連絡をとる。

「隊長!」

「な、馬鹿な!なぜだ!」

 驚気の言葉の葉月。

「何で戻ってきた!」

「俺だけ逃げるわけにはいかない!状況の説明を!」

「現在スライムと交戦中!数が多くて苦労しているが、それほど心配する状況ではない。お前は来るな!」

「何故!」

「お前を死なせるわけにはイカンからだ!」

 その言葉の矛盾を読み取る。

「フェルは!」

「わからん!だが、簡単には行けない所だ、多分、大丈夫なはずだ!」

 葉月の声に余裕がない。

「第2小隊からそちらに2機ボストックを向かわせた。だからもうしばらく耐えて!俺も今から行く!」

 そう一方的に言葉を送り回線を切る。

 急いで脚部のバッテリーを交換し、バックパックに燃料を積み込む。銃弾も欲しいところだがペガサスのライフルの弾の装填はここでは無理っぽい。

 ふと、ブレード収納ボックスに立てかけてある巨大な刀に目が行く。何だこのサイズは。

 ゆうに4mは超える日本刀。身長の倍近い。こんなのボストックに装備できないだろう・・・。だが、こういう状況だ。念のため持って行こう。


 左手に刀を握りしめエレベーターに乗る。

 強引にぶち破った形跡のある基地施設入口を抜けるとブーストで滑走する。


 到着までおよそ5分。


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