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ADAM  作者: 流風 生海
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望むと望まざると(2)

(作者注):戦闘シーンがここらへんから始まります。意識して押さえてはありますが、「流血沙汰」である以上、多少の「死」の表現はあります。ご容赦ください。

 司令室で指揮を取る葉月。

 くそったれ。スライムの数が多過ぎる・・・。

 モニターで確認できるだけでも100はゆうに超えている。ラボの保管管理区は既にもぬけの殻だ。保管していたのは300体弱。大規模訓練用に大量にストックしていたのがアダになったようだ。

 しかも、ヤツらの背後にあるのは豚舎。

 当然のごとく、保管中はスライムに餌を与えてはいない。しかも捕獲する際に体のかなりの部分を切り落としている。

 つまり、今のスライムたちは自分の空腹を満たすためにも、体を補完するエネルギーを補充するためにも餌を欲し、全体が「活性化」している。

 豚舎は自動制御であり、人的被害の心配はないが、スライムたちの腹を満たすには数が少なすぎる。

 それほど間を置かずに居住区方面へと移動を開始するだろう。

(・・・訓練用に集めたスライムをこういう形で使われるとは・・・)拳を握り締める葉月。

 パンッ!

 その時、後ろで銃声が響く。

 ハッとして振り向くと、ゆっくりと崩れ落ちる司令が目に入った。

 銃を持っているのは・・・諸茗シャオ・メイ参謀!

「そうか・・・そう言えば・・・確か貴女はチャイナエリアからの帰属でしたね・・・」

 右手に銃を構え、その銃口を葉月に向ける諸茗シャオ・メイ。左手は右脇の下へと組み、高級将校用のショートローブに阻まれ見えてはいない。

 その構えが気になるが、諸茗シャオ・メイは葉月にしゃべる間は与えなかった。

「昔の話しにしておきたかったのだがな・・・答えろ・・・アダム、いや、蒔司少尉は本当に男なのかね?」

「私には何のことかわかりませんが?」

 その瞬間に葉月の足に穴があく。微動だにしない葉月。

「ふむ。君がサイボーグという話は本当だったのか。では耳でも落としてみるか」

 銃口を葉月の顔に向ける。

 その隙をついてオペレーターが諸茗シャオ・メイに飛びかかる。

 再びパンという音。

 それとと共に諸茗シャオ・メイを掴もうとしたオペレーターの頭が弾ける。組んでいた左手にも銃か。それにしても見ずもせずに的確に額を打ち抜くとは。

 額を撃ち抜かれた彼女は紐の切れた人形のように掴もうという姿のままで崩れ落ちる。

 諸茗シャオ・メイは目もくれない。

 対して顔色が変わる葉月。

「ほほう。貴様は自分よりも周りが傷つくのが嫌いか?軍人にしては甘いな」

(そういう意味の顔ではないのだが。)このちょっとした誤解を利用すべく頭を回す葉月。

 諸茗シャオ・メイは今度は右手の銃を司令の頭に向ける。

「実はな、まだ司令は生きておられる。一応急所は外したからな。だが、それも君次第というところだ・・・とりあえず銃をもらおうか」

「皆、余計な動きはするな」

 それだけ口にして腰のホルスターから銃を取り出す葉月。

 今回の一連の事件に関して、ある程度の予想はしていた葉月。何故ならエイリィの秘密ページヘのアクセスコードが「日本の漢字ではなかった」から。だが、よもや本基地の中枢である、参謀まで手中に収められているとはさすがに読めなかったのは事実だ。

 悔しいが、この状況では素直に従うしかあるまい。




 その頃、ハンガールームに到着した第5、第6小隊。そこには無残な光景が広がっていた。

 血にまみれた整備員達。動くものはいない。

「おい!しっかりしろ!」

 マイアが声をかける。

「生存者確認を急げ!」

「ダメです!」

 口々に厳しい報告が相次ぐ。

「BBは使えるのか?!」

「こちらもダメです!」


 重火器で穴だらけになったボストックを呆然と見つめるキュイーネ。


 マイアが司令室に連絡をとっている。だが、繋がらない。


「全員聞け!こうなれば我々はその身をもって戦場に向かう!各員歩兵用装備を急げ!」

「ハッ」

 駆け足で歩兵準備室から防弾コートや自動小銃等の詰まったカーゴボックスが運び込まれる。

 ゴンという扉の音。

 その普段とは違う音に気づく暇はない。

「現状、我々には指揮管理系統がない。恐らく敵は司令室に向かっているはずだ。あそこが簡単に落ちるとは思えん。急行すれば間に合う可能性が高い。行くぞ!」

 ハッという掛け声の下、動き出そうとする隊員達。


 だが、そこで異変に気づく。

「隊長!ドアが開きません!」

 ヒューンとした空調の音が大きくなってくる。

「空調の音が変です!」

 キーンと耳鳴りがする。

 これは・・・。

「いかん!換気装置から空気を抜いている!」

「クッツ・・・このままでは・・・」

 急激に失われていく空気。元々緊急事態用の換気装置だ、真空に近いレベルまでこの部屋の空気は無くなってしまう。

 加えてBBの力にも対抗できる設備だ。

 歩兵用装備などでどうこうできるドアや制御システムではない。

 アラートは。作動しない。

(何者かの罠にはまったのか・・・うかつだったな・・・)唇を噛むマイア。

 あっという間に意識が朦朧とし始める。

「全員横になれ・・・少しでも酸素の消費を抑えるんだ・・・」

(我々フィルまでもどこまで耐えられるか・・・?・・・いや、ここは若い隊員たちの生命力に期待しよう)

 二人の小隊長が顔を見合わせる。お互いに決意のこもった、だが納得した顔だ。



 マイアの指示に従い救助を待つこととなった。

 隊員たちが横になった直後。

 それを見届けたように響く二つの銃声。

 皆には判る。何が起きたのか。

 だが、「遺命」に背くことはできない。


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