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ADAM  作者: 流風 生海
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闇の中

 深夜11時。

 葉月は端末の前に座っていた。

「来るぞ・・・」

 メールが届く。書かれているのはエイリィのアクセスコード。

「良し」

 メールのリンクをクリックしてアクセスする。


 画面が警察用ネットワークのログイン画面に切り替わる。

 アクセスコードを入力する。無事にエイリィのページにたどり着く。

「侵入成功っと」

 この半月の事件データを閲覧しながらコピーする。

 昨夜、葉月を庇った警官が重体ではあるが一命を取り留めたという情報を見つけ、少し落ち着いた気持ちになる。


 しかし、どうやら本当に犯人の目星もついていないらしい。

 警官が語っていた「犯人がフィルマの可能性」についてもそれらしき記述もない。

 何故だろうか。被害者の周辺情報等は詳しくあるが、肝心の犯人についての情報が皆無に等しい。

 これでは意図的に情報を載せていないようにも見えてしまう。

 ここまでやって肝心の情報の手がかりゼロ。は流石に悔しい葉月。


 アクセス可能なファイル、ページを片っ端から開いていく。

「ん?」

 不意に画面に違和感を覚える。

 エイリィの業務日誌と思えるファイルを開こうとした時だ。

 アクセスコードを入力し横のボタンをクリックしようとした。

 何かが変だ。

 不意にアクセスコードの入力欄と実行ボタンの横が他の場合と比べて若干スペースが広い事に気付く。

 カーソルを持って行って初めてそこにもボタンがあることに気付く。

「隠しボタンだと・・・」

 嫌な予感がする。

 クリックしてみると再びアクセスコード及びパスワードを求められる。

 メールに書かれたコードでは開かない。


 電話を取り、また何かを話すと、数分後再び新たなコードの書かれたメールが届く。

 今度は漢字のコード。

 しかもこの字体は・・・。嫌な予感が増幅される葉月。


 多少入力に手間取ったが、とりあえずはアクセスに成功する。

 開かれた画面。

 ん?

 そこでまたアクセスコードとパスワードを求められる。


(やけに厳重だな・・・)

 再度電話とメールでやり取りし、侵入に成功する。


(なるほど・・)

 ようやく開いたページを見て半分納得の行く葉月。

 そこにあったのはここ一蓮の「猟奇殺人事件」の情報。というか被害者リストだった。もちろん昨夜の事件も含まれている。

「フン、テロとか言っていたくせに・・・」

 このページに至るまで、どのページ、資料にも「テロ」の文字は書かれていない。

 だが、それだけではない事に気付く。

「これは?」

 そこには被害者以外の人名も載っていた。

(例の襲われる可能性のあるヴィジリアンの名簿か?)

 葉月を庇った警官が確か10名程居ると言ってたな。


 情報を更に漁っていくと、他のコロニーの名簿もあるのに気付く。

 リストに書いてある日付。それは事件の発生した日。それは判る。だが末尾のに付いているチェックマークとはなんだ・・・?。

 更に「被害候補者」にもいくつか日付が乗っているものがある。過去の日付のものには末尾にチェックマークがついており、未来の日付には何も書かれていない。

 これは・・・。


 不意に閃く。

「まさか・・・そうなのか・・・」葉月は苦しそうに呟く。

 この一連の情報。

 署長自らがこの一連の事件の主犯、もしくはそれと同等の立場にいる可能性を示しているのではないか?

 他のコロニーや「被害候補者」も含めると膨大なリストだ。

 これらを一連の犯罪と括るならば、実行できるのは非常に大掛かりな組織なのは間違い無いだろう。

 だが、この情報を未だ軍は知らない。中央警察も動いた形跡はない。

 まあそれを知っていたからミーシャ達を送り込めたのだが・・・。


 背後に蠢く巨大な悪意を感じる。

 そして、恐らく・・・この目的は・・・「男性の捜索」。

 ここまでリスクを犯し、なおかつ大規模にやる理由が他にない。

 更に言えばこれほどの大規模犯罪の可能性のある事案を地方警察のみで処理しようという意味不明の行動。

 エイリィが「クロ」だとすれば、「アダムの存在がNUN情報部とはいえ外部に漏れている」という事実を繋げていくと・・・。

 思い過ごしであればいい。だがこれまでの情報が、直感が思い過ごしではないことを告げている。

 最悪の事態と想定して動くべきだろう。


 それにしてもこの大層な数は何だ。

 一通り目を通して「宮本蒔司」の名が無い事を確認してホッとする。

「軍部の名簿は今のところ漏れていないようだな・・・油断はできんが」

 とりあえず胸を撫で下ろす葉月だった。



 ピコピコと画面のメールランプが点滅する。どうやら誰かがエイリィ宛にメールを送ったらしい。

 これは流石に開くわけにはいかないだろう。単純に開けると記録に残ってしまう可能性が高い。

 それに、時間的にもそろそろ限界だろう。記録に残さずコピーするには流石に時間が足りない。このメールはぜひとも読みたいが・・・流石に無理か・・・。

 葉月は新たなメモリーディスクを端末に挿入する。

 このページに直接ウィルスを仕込み、こちらから閲覧可能な状態にページにゲートを作る。

(まあ、ミーシャたちのウィルスは駆除できてもこの秘匿ページはそもそもアクセスもできんだろうしな・・・)


 そう。実はミーシャたちはデータをコピーしたつもりでいるが、葉月の手によってウィルスを仕込む役割を担っていた。本来クローズドネットワークである警察ネットに「入口を作るプログラム」を。

 明日には定時検査でミーシャたちの仕込んだウィルスは自動的に削除される。だが、発動したとは分からない形に今変更を行ない、最初の侵入口は閉じた。

 現段階では上出来といって良いだろう。エイリィの隠しページを発見し、そこへの入口も作らせてもらったのだから。


 だが、当然葉月の気分はすぐれない。

 むしろ、眼前に脅威がある可能性を認識し、悩みは深まる一方だ。



 警察から軍への逮捕権はあるが、その逆はない。残念だが。

 もし、本当にエイリィがクロだとしても、我々には手を出す権限がない。

 今朝の記者会見で「沈痛な面持ち」でインタビューに答えていたエイリィ。

 その皮膚の下は嘲りの表情なのだろうか?

 ヴィジリアンの、いや、元来の種である我々が捨てた名称「人類」のおぞましさを垣間見ているような気がする葉月だった。



 ここはしばらくこのページを見守るしかない。

 気の毒とは思うが、この名簿の枕崎コロニー分だけでも済んで欲しい。今はそれしか手がない。

「何を持って済んだとするのか」の指定はこちらではできない。当然のことだ。だが、フィルマとして育てられた自分の矜持が、無駄にヴィジリアンの被害を産むその葉月の考えを責める。

(本当にこのやり方でいいのか・・・さっさとアダムを公表し、精液を採取して各エリアに配るその方法がいいのではないか?)

 そう考えたりもする。

 だが、フェルティと蒔司のにこやかな会話が脳裏に浮かぶ。

 やっと作り上げた二人の関係。最初はぎこちなさもあったが、今では完全に「カップル」として成立している。

 蒔司もここに来た時とは全く違う。自分の状況をしっかり把握して、いい意味で周りにも影響を与えるようになっている。それを成し遂げたのはまさしくフェルティのおかげだ・・・そして、フェルティの気持ちも想像がつく・・・

 彼らを引き裂くのか・・・?


(私は、愚かなのかもしれんな・・・)そう思う葉月であった。

 


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