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ADAM  作者: 流風 生海
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事件の後で(2)

「ん、蒔司は?」ブリーフィングが始まる時間なのだが蒔司の姿はない。

「さあ?」アンネが答える。

 葉月が入ってきていつものブリーフィングが始まる。

「まずはこれを見てもらおう」

 画面に映し出されるラボの画像。中央に蒔司が立っている。

「では皆よく見ておけ」

 言うが早いか蒔司が剣舞を始める。

 ほほーという声。

 そして二刀流に切り替わった瞬間。

 どよめく室内。なんだこれは。という声。

「皆、今の動きが見えたか?」

 沈黙が答える。

 葉月が二刀流の瞬間をスーパースローで再生し解説をする。


 そして。

「皆の機体にこの動きをプログラムさせてもらう。体で覚えろ」

 残酷な一言。

 これにはさすがに隊員が反論する。無理です、体が追いつきません、不可能ですといった声。

 それはそうだ。いきなりこれほどの動きが出来る訳がない。

「安心しろ。この速度でやれというわけではない。フロントのボストックにはそれぞれの搭乗者に合わせた速度、機体可動範囲に調整してプログラムする。また、バックスにはこれに連携した射撃ができるようシンクロモードに入力する。そういうことだ」

 隊員の一人が挙手で発言を求める。

「中隊長、すみません。ですが、この動きは恐らく相手が単体の時の動きですよね。対formlessに有効なのでしょうか?」

「大丈夫だ。シュミレーション上ではこの剣術とバックスの援護射撃で一体一体確実に仕留めるという方法でも十分に戦果も上げられる」

「つまり、バックスが余計な動きをするformlessを仕留めろと言うのですか?」

 今度は別の声が上がる。

 それに向き合うように葉月が答える。

「今回ラボの研究成果はこれだけじゃないぞ。銃弾に高濃度の酸を仕込む事に成功している」

「それでは・・・」

「そう。確実にコアにヒットしなくても、命中した酸により、formlessの体組織が結晶化し、動きが止まる。実験データでは命中場所や個体差によって多少ばらつきがあるが、およそ10分は止められる。これだけ時間があればお前たちには十分だろう?」

 ニヤリと葉月が笑う。

「現在ダブルコアの存在が確認されている。単純にまっぷたつに切ればよいという状況ではなくなったのだ。この戦術でフォワードのリスクは結果的に軽減できるであろう・・・これでいいか?」

 一同を見渡す葉月。

 反論が出るはずもない。


 そして皆が出動していく。


「あれ?」至極当然のように終わってしまった事に驚くミーシャ。

「隊長~蒔司は?」

 テーブルに片肘で顎を支えた格好でミーシャが葉月に問う。

「蒔司は部屋だ」

 そっけなく返す葉月。ミーシャを見向きもしない。

「アイツまた何かやらかしたんですか?」

「上官に向かって「アイツ」はないだろう?」

「すみません」

 見てもいない葉月に向かって頭を下げる。

「蒔司少尉は昨日のラボで軽い負傷をした。なので、しばらく休ませる」

「え、ケガですか?!」

 驚くミーシャとアンネ。思わず身を乗り出す二人。

「蒔司さんでもケガすることあるのね・・・」

「大したケガじゃない。よって見舞いも必要ない。」

「はぁ」

 何かしら拒絶するような葉月の言葉に生返事で答えるミーシャ。

「要するに、フェルちゃんとの時間を邪魔するなってことよ」

 アンネが囁く。何か妙な方向に合点が行ったようだ。

 乗り出したは良いものの、その後の収まりがつかないミーシャが今度はふんぞり返る。

「んじゃあ、今日はどんな訓練するかな・・・アンネ、もう十分に動けるのか?」

「うん。全開バリバリ」

 左腕で力強くガッツポーズして返すアンネ。

「じゃあ、久しぶりにスライム相手にトップバディの実力を披露しようか」

「うん、まあ、スライムは見てはくれないけれどね・・・」

「それなんだが・・・二人にはちょっと変わった任務についてもらう。」

 いきなり言い出す葉月。

「変わった?」

「何ですか?その変わった任務って」

 そのアンネの言葉に葉月は答えない。視線も指揮机の端末に向いたままだ。

 かわりに2枚のカードとメモリーカードを差し出す。

 受け取る二人。

 携帯端末に差し込み驚く。

「これって・・・」

「よろしく頼むぞ」

 そう言葉を残し葉月は部屋を後にする。




「どうするよ・・・この任務・・・下手すりゃ俺たちだけじゃない。隊長も基地司令もクビが飛びぜ?」

「それを覚悟の上で、でしょう?・・・やるしかないよ」

 参ったなあと呟くが、逆に言えばそれだけ葉月に信頼されているってことでもある。そう思うと悪い気はしないミーシャ。


 指定された部屋に向かう。扉を開けるとテーブルの上には大きな紙袋。中には二組の「中央警察」の制服と身分証。そして拳銃2丁と大型アーミーナイフ2振り。

「これで大丈夫なのか?」

「ま、大丈夫か、ここに帰れなくなるかのどちらかよね・・・」


 着替え終わり装備を点検する。

「リボルバーか。反動大きくて好きじゃないんだよな」つぶやくミーシャ。弾倉を確認し実弾が入っていることを確認する。

「使う事態になったら終わりだって」アンネが指摘する。

「アンネこそナイフ見つかんなよ。一発で疑われるぞ」

「そこはそれ。私ミーシャの護衛官だから」拳銃をホルスターにしまい、ナイフを腰後ろに装備するアンネ。上着の裾でナイフが隠れるのを確認する。

「で、俺が監察官っと・・・と、俺言葉はダメだな」

「そうよ・・・そうですよか」

「しかし、さ、おれ・・・いや私達はフィルマなんですよね・・・」

おかしな表現をするミーシャ。

「そうね・・・この服着ると・・・私たちが成熟個体ではないことを嫌でも認識しますね」

 返すアンネ。こちらも変だ。

「うん」

「胸がブカブカ」

 やっぱりそこは気になる二人であった。

 

 いつもの調子でスタートした任務ではあるがセリフを記憶していくうちに顔つきも変わってくる。

「ミーシャ様、そろそろいかがでしょうか?」

「うむ。アンネ君、行こうか」

 一応の形にはなったようだ。


 裏口を抜け、細道を遠回りして高級将校用の駐車場につく。うん誰にも見られていない。指定された車に乗り込む。

 ミーシャを後ろに乗せ、アンネがドライバーズシートに収まる。


「では、行きます」そうアンネが言うと「ちょっと変わった任務」が始まった。

 


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