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ADAM  作者: 流風 生海
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独り?の部屋。(2)

 ふと気づくと、ほどよくピンクに染まったフェルティの顔。

「フェ~ル~酔っ、った~?」尋ねる蒔司の声もおかしい。

 あらという顔をするフェルティ。蒔司はかなり酔ってしまったようだ。

「ほら、言わんこっちゃないでしょう?」

 蒔司の横に座ると肩を支える。

「ベッドに行きましょう」そう言ってベッドまで支えて歩く。蒔司の足元がおぼつかない。右へ左へ寄り道しながらベッドにたどり着く。

 ガバっと布団をはぐとごろりと横になる蒔司。

 ハアとため息をつくフェルティ。だが急に蒔司に手を引かれて蒔司の上に倒れ込む。ドキンと心臓が跳ねる。

 蒔司に抱え込まれる。心拍数が上がってくる。心なしか蒔司の胸越しに伝わる心臓が脈打つ音が大きい。

「覚悟は出来ている」大丈夫と自分に言い聞かせる。

(そのためにワイン奮発したんだから!)

 優しく包み込む蒔司の手。

 ゆっくりと頭を撫でている。

 フェルティも蒔司の胸に片手を添え右手が蒔司の背中に回る。

(えーっとこの後どうなるのかしら?)

 蒔司の左手がすーっとフェルティの背中に移ってくる。

 その動きに一瞬びくつく。

(胸に来る?のかしら?)

 心の準備を整えるフェルティ。

 だが。

(やっぱり・・・最初にキスかしら・・・)そう思って顔を蒔司の顔に向ける。

 ん?

(あれ?)

 そこには蒔司の穏やかな寝顔があった。




 ピーッピーッピーッというアラームに目が覚める。頭が痛い。

 横でゴソゴソという動きと、「ん~」という声。もしかして・・・。

 今度は俺の腕の下にフェルがいた。

「フェル?」

「うん?」

 目をこするフェルティ。

「あ、おはよう。蒔司」

 おはようってそんなに気楽に言われても・・・。

「あのぅ昨夜は・・・」

 その一言にフェルティが膨れっ面で答える。

「んもう、蒔司ったら飲みすぎ!ベッドまで運ぶの大変だったんだから」

「んで、やっぱりフェル泊まったの?」

「うん。この枕は私の枕。んでそっちが蒔司の枕」

 実にさっぱりという。

 最早、何かしらの「風格」を感じる笑顔だ。

 よいしょと起き上がり背伸びをするフェルティ。一応、服は着ている・・・が・・・何故かシャツの胸のボタンだけが外れている。

 幸いなのか不幸なのか、中にTシャツらしきものを着ているので「中身」を見ることはできない。

「フェル・・・何故にシャツが?」

「エへ。だーれかさんがボタンを外しても大丈夫なように~ですよ~」

「いや、だから俺じゃないって」

「さーて。どーかしら~」

 とりあえずは「酔った勢い」という事態もなかったみたいで少々ホッとする蒔司。

 そして「作戦失敗」を笑顔でごまかすフェルティだった。



 だが、しかし。

(・・・内容はどうあれ・・・やっぱり責任問題だよな・・・)そう思う蒔司であった。


 ブリーフィング開始前。

 独りで今日の伝達事項等を確認する葉月。

 ふと、念のためと思って蒔司へと回線をつなげる。

 そこには巨大で悪趣味な色のベッド。

 思わず口があんぐりと開く。

 そして、その上に何故か正座している蒔司とにこやかに手を振るフェルティ。

 深々と頭を下げる蒔司を見て、もう何も言えない葉月。

 バカ者とつぶやくと回線を切る。


 こうして、蒔司の部屋にフェルティがいるのが当たり前となった。




 こうやって、フェルティが居着いて3日目。


 昼食を作ろうとフライパンを振るフェルティと。ソファーセットの奥で模擬刀で「舞う」蒔司。

 食事は「少なくとも蒔司は手を出さないほうがいい」その結論に昨日たどり着いている。


 チャイムが鳴る。フェルティが出る。

「はーい」

 扉を開けるとそこにいるのは葉月。

「あら、姉さま。どうしたの?」

「何か知らんが二人とも板についたな」

 模擬刀を携える蒔司を見て一言。

「ふむ。だからといって、たるみきったという訳でもなさそうだな」

「すいません」

 反射的に頭を下げる蒔司。

「姉さま、蒔司ってすごいのよ。もう最上級の剣舞と言っても良いくらい」

「フム。蒔司。やってみろ」

 言われるがままに始める。


 まずは一刀を振るって始め、幾つかの技を見せた後、瞬時に体をひねる。

 気づけばその手には二刀。

 疑問に思う間も無く上に小太刀を投げてその間に両手で握って鋭くひと振り。

 そして落ちてきた一刀を掴み再び二刀流の構えに戻る。


「うむ。さすがというしかないな」

 これはもう、何も言えない。

 正直、葉月の目でさえも剣先は見えない。特に二刀目を抜いた瞬間。体を回しながらの左手での振り下ろしまではかろうじて見えた。だが、ほぼ残像に近い。二刀目を握っている事に至っては終わってから気づいた。二刀目の技が何だったのかさえもわからない。何だこのスピードは・・・しかも重い模擬刀だぞ・・・。

 3日前の模擬訓練。あの時本気で戦っていたら恐らく自分に勝ちは無かったとさえ思う。見えない斬撃を防ぐことはできない・・・。

 自分でミーシャに語った「剣の化け物」・・・その想像をはるかに超えている・・・。


 目を見開いている葉月にフェルティが語りかける。

「蒔司には握りが短いんですって。今握りを作り直してもらっている最中よ」

「つまり、本当の蒔司の剣技はまだ先にあるということか」フェルティに問うと、こくりと頷きが帰ってくる。

「それに、ペガサスじゃここまでうまくいかないんですって」

「そうだろうな。たとえBBを使いこなせても、あの動きには逆に機体の方がついてこれまい・・・」

 どうやらペガサスはカスタムが必要なようだ。

「それで、どのような用件でしょうか・・・?」

 そ~っと尋ねる蒔司。

「お前、今日がどういう日か分かっているか?」

「はい。もちろんです」

 そう。今日は謹慎最終日だ。

「うむ。今日は内示書を渡しに来た。自室謹慎中の者を呼び出す訳にもいかんからな」

 受け取れと紙を差し出す。

「え、俺、少尉ですか?」

 紙を覗き込み驚く。

「ああ。いいか、ミーシャやアンネの上官になるんだ。明日からな。気を引き締めろっ!たるんでいると後ろから斬って捨てるからなっ!」

 本気で切りつけそうな剣幕だ。

「あ、はいっ」

「「あ」はいらん!」

「はいっ」 

 びしっと返事を決める蒔司の後ろで紙を奪い取ったフェルティが何故か飛び跳ねているのが見える。やれやれ・・・。

「良し。士官たるもの部下の手本とならねばいかん。少尉は本来小隊長クラスだ。この基地の部隊員全員の規範となれるよう努めよ」

「はい」 

 今度は後ろでバンザイをしているフェルティが見える・・・空気が締まらん・・・。

「うむ。お前には銃の携行命令が出ているのは知っているな。だが、お前は本来剣術家だ。そこで、ひと振りだが、太刀の携行も許可する」

「はっ・・・って剣を持ち歩くんですか?俺だけ」

「許可だ。そこは任意と捉えてもらっても良い」

「ただし、銃及び・・・ブラジャーの装着は命令だ」

 目線の先には破顔の笑みで見つめるフェルティ。

 いかん・・・釣られる・・・まあいいか。

 ブハッと吹き出し、いきなり豪快な笑顔とでも言うのだろうか。初めて笑顔を見せる葉月。

「ぶ、ブラは試したか?」

「はい。一応。」

「よしよし。その調子で行くぞ!」

 バンバンと蒔司の肩を叩く。

「明朝のブリーフィングに遅れるなよ?そこで正式に任命証と階級章が渡される。フェル。ちゃんと起こしてやれよ」

 すでにフェルティがいることは折り込み済みのようだ。



 では、明朝会おう。そう言い残すとバタンと勢い良く扉が閉じられた。


「初めて葉月、い、いや隊長の笑っているところを見た」

「そりゃね。蒔司の剣技を見れば安心もするし、頼もしくも思えるでしょう?やっと気が緩んだのよ」

 そう言って笑顔を見せるフェルティ。自分のやったことには全く気付いていないのであった。

「つまり、認めてもらえたって事か・・・」

「うんっ。さぁって、今日は腕にヨリをかけちゃうぞぉ~昇進前祝いよっ」

 あ、それには・・・昨日の悲惨な食卓が思い起こされる・・・「何故かアルデンテのご飯」炊いたのはフェルだぞ・・・それに表面だけ塩辛くて中身が生煮えの肉じゃがも・・・ま、まあ俺も真っ黒こげの焼き魚作ったが。

 夕べは蒔司が「魚から出火した」時点でキッチンから追い出された。しかし、しかし・・・フェルよ・・・キミに期待していいのかは実に不安だ・・・。

「やっぱり、食べてもらう人がいるってのは嬉しいねっ」

 出た!微笑み攻撃。

 あえなく撃沈され、とぼとぼと元に戻って素振りを始める蒔司であった。

 


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