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ADAM  作者: 流風 生海
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蒔司とフェルティ(8)

「お茶、冷めちゃったね。入れ直すね」そういうとキッチンに向かうフェルティ。


 まずい。せっかくのフェルの好意を・・・俺、台無しにしてしまう。

(何か話題ないか・・・明るい話題・・・)

 こういう時に限って浮かばないものだ・・・。


 しばしの後、シュンシュンとポットのお湯が沸く音が聞こえる。もう時間がない。

「そ、そういえばアンネやミーシャのプレゼントってなんだろうねっ!」何を言っているんだ俺は・・・。

「そうね~何かしら?」

 意外と明るい声。フェルティって意外と切り替えが早い?


 何かに注ぐ音。そして部屋一面に広がる香ばしい香り。これって・・・コーヒー?

「今度はコーヒーにしてみましたっ。枕崎コロニー特製コーヒーですよっ」

 笑顔でポットを持ってくる。もう大丈夫なのだろうか・・・。

「枕崎ってコーヒーの産地だったっけ?」もっと南の国の産物のような気がするが・・・。

「少量だけれど、ハウスで作っているのよ。だから高級品なのよ」

「悪いなぁ。いいの?」

「うん」

 至って普通の笑顔のフェルティ。この感じなら大丈夫か・・・。

「じゃあ遠慮なくいただきます」

「はい。どうぞ」

 一口、口に含む。うん。香り、苦味、後味も良い。中々美味いんじゃないだろうか。

「これ、美味しいね」

「でしょでしょ。奮発した甲斐があったわ」

「そんなに高いの?」

「うん。大体紅茶の3倍から5倍はするわ」

「そんな高級品を。ありがとうフェル」

 この世界に来て初めてのコーヒー。じっくりと味わうようにいただく。


「さて、一服したら残りは・・・って床はロボットがやってくれるし・・・蒔司の部屋ってそもそも物無いし・・・クローゼットのお片づけ位か・・・」フェルティがつぶやく。

「俺はベッドを起こしてその周りしてみよう。力仕事だし」

「じゃあ、いっそのこと外に出しちゃおうか?その方がやりやすいでしょ?」

 二人なら持てるよと答えるフェルティ。うん、その方がいいか・・・。



「せーのっ」

 かくして二人がかりでベッドを動かす。マットはそれなりに軽いのだが、いかんせん軍用のフレーム。無骨な金属製でかなり重い。

 ついでにソファーセットも運び出す。こうして蒔司の部屋は真っ平らとなる。


「こうやってみると広いね~私の部屋の倍くらいに見えるわ」

「そうなんだ」

「うん。やっぱりそこは士官室ってところね」


 こうして午後の作業が始まる。が、それほど大した量ではない。あっという間に終わってしまう・・・はずだった・・・。

 ふと気づくとフェルティがクローゼットで固まっている。

「フェル?」

「こ、こういうものってどうやって畳むのかしら」

 トランクスを手に取り困惑しているフェルティ。

 しまった・・・油断した・・・。

「あ、あ、ごめん・・・」慌てて受け取る。

「こ、これは自分でやります・・・ちょっと待ってて」

 クローゼットの外にフェルティを追いやる。



 ガサゴソとやっている時に呼び鈴が鳴る。

「ごめん、フェル出てくれる?」

 はーいという返事と扉の開く音。何か話をしている。フェルティの嬉しいような恥ずかしいようなちょっと上ずった声。そして誰かが入ってくる。

 とりあえず下着を隠そうと引き出しを開けると・・・そこには整然と並んだブラジャー。その有様にしばし放心・・・。



 その間、ドンという何かを置く音と続いてフォーンという音。

 なんでしょう?

 振り返るとそこには巨大になったベッドがあった。

「な、なんじゃこりゃ?!」

「ミーシャさん達からのプレゼントっ!」にこやかな顔のフェルティ。

「見て見て!最新式のエアーマットレスよ!たっかいんだから!」

 何故かキャッキャとはしゃぐフェルティ。固まる蒔司。

 そして見る間にベッドメイキングされていく。シーツ、毛布、カバー。そして二つの枕。見事にピンクで統一されている。あ、頭が痛い・・・。

「それでは受け取りのサインをください」

 何故かフェルティのサインをもらって「外のベッドは返納しますね」と告げると配達員は帰っていった。

「・・・確かにビッグだ・・・」ぼそっと呟く。

 詳しくは知らないがこういうのをキングサイズとでも言うのであろうか・・・だけど・・・センスが・・・いやこれ以上は考えないようにしよう・・・。


 最早この件に関して「考えるだけ無意味」であることをベッドは告げていた。


「ほらほら!ふわっふわ!」フェルティがベッドに腰掛けお尻で跳ねている。

 トントンと自分の横を叩くフェルティ。そこに座れということらしい。

 指定通りに座るとフェルティは前を向いたまま囁く。

「みんなにお祝いされちゃったね・・・」

(こ、答えられない)返事に窮する。

「ま、いいっか」そういうとゴロンと横になるフェルティ。

「悪い気はしないよ・・・私は」

 そう言うと、しばしベッドの上でゴロゴロと柔らかさを堪能するフェルティ。


 そしてむくっと起き上がる。

「んで、これは何でしょう?」

 そう言ってカードを見せる。そこには{参考文献・取り扱い注意!}と手書きで書かれている。

「ん?」

「ビデオカードだけれど・・・参考文献ってなんだろう?」

 何かしらいやーな予感がする。

「ま、見てみよう」とフェルティが無造作にカードをリモコンに突っ込む。

 その瞬間壁が画面へと変わり女性二人が映し出される・・・豊かなボディラインが透けている二人の衣装。インド風とでも言ったら良いのであろうか?異様な雰囲気。

 そして。

 艶しげな音楽と共にお互いに熱のこもった視線を交わしながら徐々に服を脱ぎ居だす二人・・・こ、これは・・・!

 ヤバイと思った瞬間にフェルティからリモコンを奪いカードを抜き取る。

 フェルティは完全に固まっている。


 しばらくほけっと壁を見つめてようやく耳まで赤くなるフェルティ。



「これは没収!」

 そう言い切ると蒔司からカードを奪い取る。

 え、あ、おいと声をかけると赤くなった顔で睨まれる。

「ひ・つ・よ・う・ない!でしょ!」

「あ、ああ。もちろん」

 それ意外の答えを蒔司は知らない。


 いろんな意味で複雑な空気が流れる。


「・・・いったん帰るね・・・」そう呟くとフェルティは立ち上がり部屋から出ていった。

 

 


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