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ADAM  作者: 流風 生海
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蒔司とフェルティ(3)

 一転して朝のブリーフィングルーム。

「昨日はご苦労だった。各自よくやったといっていいだろう」葉月が珍しく褒めている。

 実際、昨日は第3,4,5小隊は5つのスライムの集団を殲滅し、捕獲した数も48体と中々の戦果だ。

 その間遊撃に出ていた第6小隊の報告では、北側の半径20km圏内にスライムは居ないことが確認出来ている。

 しかも当方の負傷者はゼロだ。アンネを除いて。

「昨日の諸君の働きで、わずかだが、我々の行動に余裕が生まれるだろう。だが!」

 一旦言葉を切る葉月。一同を睨みつける。

「残念なことに今日も任務はある。1班!拠点防衛用の装備で2班と交代!」

「ハッ!」という言葉と共に立ち上がろうとする第1小隊の面々。

「待てい!話は最後まで聞かんか!」

 動きが止まる。

「4時間後、3班に防衛任務を交代、さらにその4時間後は4班!その次5班、そして今日の任務のトリは6班が4時間防衛任務に当たり、再び2班に引き継ぐ。いいか!」

「それって・・・」

 隊員たちがざわめく。

「それ以外の任務は無し。各自自由行動。わかったか!」

 葉月が言葉をかける。とたんに歓声が上がる。モニター越しに参加していたアンネも笑顔だ。


 ふと、こういう風景もあるんだということを見せようと蒔司をコールする。

 返事がない。

 強制的に接続する。

「アダム!」

 声をかけて開いた画像をみてぎょっとする。

 そこにはベッドの端に腰掛けるフェルティ。優しくアダムの頭を撫でている。まだいたのか・・・。しかも何だそのあられもない格好は・・・。

 そこには「戦場」にはとてもじゃないがふさわしくない穏やかで心温まるような風景が映っていた。

 歓声が静まっていく。

「あ、アダムはどうした?」

 しばしの硬直のあと声をかける葉月。

 しーっと指を立てるフェルティ。

「寝てます」

 アダムの頭を撫でながらそっと返す。アダムを見下ろす目線が暖かい。

「お、お前・・・」

 ミーシャが思わず声をかける。

 しまったと思うがもう遅い。頭を抱える葉月。

「はい昨夜は泊らせていただきました」

 ニコッと微笑みを返すフェルティ。

 その台詞にどよめくブリーフィングルーム。



「フェ、フェルティちゃんがアダムに食われたっ」

「い、いや、フェルちゃんがこの部屋にいるってことは食べられたのはアダムなの?!」

「そっちの趣味があったなんて・・・」

 ザワザワとざわめく室内。肩を落とす葉月。

 終わった・・・。

「放っておけ!」

 そう言い残すとモニターを閉じる。


「まさか・・・よりにもよってフェルティが夜這いをかける方だったとは・・・」

 愕然とするミーシャ。

「え?何が起きたの?」

 当然状況を知らないアンネ。

「落ち着いて聞け、フェルがアダムに夜這いをかけた」

 沈痛な面持ちで報告するミーシャ。

「ほ、ほぇ~ま、まさか・・・」

「うむ、世の中は不思議がいっぱいだな~こういう結果とは・・・事実は残酷だ」

「う、うん。・・・・とにかく、皆んな、暖かく見守ってあげようねっ!」

 部屋全体に向かって声をかけるアンネ。

 ややあって、そうね、そうだなと納得の雰囲気が広がっていく。


 事ここに至ってはもはや何も言えない葉月であった。



 突然モニターにつながり、そして突然閉じた壁を眺めてキョトンとするフェルティ。


「ん?」

 なんだったのでしょう?


 ふと、見下ろし、自分の姿を見てポンと顔が赤くなる。・・・ブカブカのシャツ一枚。大きく空いた胸元・・・

(やっちゃった~!!!)

 それでも蒔司を起こさないよう注意しながらキャーと嬌声をあげる。

「せめて制服着とけば良かった・・・」

 つぶやくが後の祭り。


 再び壁がモニターに変わる。そこにいるのは葉月とミーシャ。

「痛かっただろう?」

 葉月が語りかける。

「え?」

 ぽかんと表情が固まるフェルティ。

「え、痛いのか?」

 葉月に聞くミーシャ。それには答えずに再びフェルティに話しかける。

「アダムには責任をとらせる」

「え?、あ、あの・・・」

 違うんですと言う前にモニターが切れる。


 間髪を入れずに内線のコールが入る。病院棟からだ。今日は病棟勤務だったかと思い至るが、何故この部屋に?

 出るとそこには満面の笑みのアンネ。

「フェルちゃん、優しくしてもらった?あ、したのかしら?」

 言ってから不思議な表情をするアンネ。

「とにかく、私は応援するよ!」

 ニコリと笑い右手でガッツポーズを作る。

 そこにフェルティの意志は無い。

 最早言葉を失って、アハハと作り笑いを返すフェルティであった。

「検温でーす」とアンネのバックでナースの声がする。

「あ、切らなきゃ。とにかくフェルちゃんガンバ。あ、でもあんまり無理強いはダメよ?焦らずゆっくり行こうね」

 事実誤認のまま、言葉の真意こそ違うが、しかし妙に的を得たアドバイスを残してモニターは切れた。


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