蒔司とフェルティ(2)
無意識に寝返りを打とうとした蒔司は何かに遮られる。むにゅっとした感触。なんだろう。マシュマロのようだ。無意識に手を触れる。暖かくて柔らかい。
つかんでみる。
指を優しく押し返す弾力と共に、頭の上から「んっ」という小さい声がする。
(「んっ」?声?)段々意識がはっきりしてくる。うっすらと目をあける。そこには白い巨大な団子のようなのものが二つ。
(なんだろう?)自分の手はどうやらその「団子」をつかんでいるらしい。
頭の上で再び声がする。
キュッと何かに抱え込まれ二つの「団子」に顔を押し付けられる。
頭上の声は・・・フェルティだ。
その瞬間に自分の状態を察知する。顔に押し付けられているのは・・・フェルティの胸!
ガバリと起き上がる。そこには大きく開いたシャツから胸がはだけたフェルティが眠っていた。
「お、おい・・・」
思わず声をかける。
「ん・・・起きたの?」
起き上がり眠たげに目をこするフェルティ。
胸元は全開。
「いいから、隠せ!いや、隠して!」
「ん~何を~」
まだ、頭がぼんやりとしているのだろうか。それでも優しい表情を向けてくるフェルティ。
「む、胸だ!」
「・・・え?」
自分の胸を見下ろすフェルティ。ボタンの状態を確認でもしているのであろうか?しばし間が開く。
「え、え、ええ!」
とたんにシャツの胸元を閉じてうずくまるフェルティ。
瞬時に耳まで赤くなったのが分かる。
「お、あの、しっかりして」
声をかけるが返事は無い。
しばし間が開く。
「見たのね~」
ちょっと怒った声のフェルティ。
「いや、待って、俺には今が理解できん」
かける言葉に困る蒔司。
「あ、あの?これってどういう状況なんでしょう?」
改めて言葉をかける。とりあえず説明が欲しい。
いや、「説明できないこと」になったのか?これは。
「お、俺は、夕べはフェルティさんに、い、いやフェルティさんの、む、胸の中で泣いてしまって・・・ごめん・・・それから記憶がないです」
とりあえず言葉にしたものの、更に困る。
「あ、いや、あの、せ、責任は取ります。ごめんなさい」
「ん?責任?」
シャツのボタンをかけ終え、疑問形の顔を向けてくるフェルティ。
「良くわからないけれど・・・まあ、いいわ」
さらっとかわされた。
「いや、そんなにさらっとかわす事じゃないでしょう?!」
思わず声が大きくなる。
「あ、そうか、ごめんね、窮屈だったでしょベッドが」
何か別の方向で謝るフェルティ。
話がちぐはぐだ。
「でも、よく眠れたみたいね。腕枕のかいがあったかしら?」
ん~と伸びをするフェルティ。
「腕枕?」
「うん、夕べ、アダムさん寝ちゃって、どうしようかなーと思ったけれど、気持ちが安らぐって聞いていたから、アダムさんに腕枕してみたの。そしたらいつの間にか私も眠っちゃって」
ペロッと舌を出しはにかむフェルティ。
「・・・それ、逆です」
ほっとして突っ込む。どうやら「責任を取らないといけない」ようなことはなかったようだ。
「え?逆?」
フェルティが聞いてくる。
「腕枕ってのは、本来男がすることです」
あ、そうなんだと笑顔のフェルティ。
でも、すぐに軽く睨みつける。
「でも、だからといって眠っている私のシャツのボタン外すことないじゃない。ご丁寧にブラのホックまで外して・・・」
「え、いや、俺じゃないですって」
即座に否定する。
「おっぱい吸ってみたかったの?」
フェルティの言うセリフに頭がクラクラする。
「ま、そこまで赤ちゃんじゃないよね~」
そういうと立ち上がり、シャワールームに駆け込む。トタタッと軽い足取りだ。
「だからといって覗いちゃダメだぞ」
ニコリと笑顔を残して扉を閉じる。
ベッドの上であぐらを書く蒔司。シャワーの音だけが部屋に響く。
(う~む)
なにかがおかしい。
ごろんと横になる。ふと、フェルティが寝ていた場所へ手を伸ばす。暖かさが残っている。鼻をくすぐる、自分ではない、フェルティの香り。香水であろうか。爽やかな花のような香りがする。
そこには確かに「フェルティの優しさ」が残っていた。
思わず深呼吸する。
フェルティの残香に心が包まれる。
不思議とそれが心地よい。
こういうのもいいのかもな・・・そう思うと不思議と落ち着いた気持ちになる。昨日までの砕けたガラス細工のような固く鋭い自分は今は感じられない。
せせらぎのように流れ込んでくる優しさににつつまれて再び眠りに落ちていく。
シャワールームから顔を出すフェルティ。
ベッドの上で再び寝息を立てている蒔司を見つけると思わず微笑む。
服は・・・バスローブはないので、とりあえず蒔司のシャツを借りると袖を通す。
ブカブカだ。エヘ。何か嬉しい。
そのままベッドへ歩き寝顔を覗き込む。
(可愛い寝顔ね・・・)
愛おしい気持ちが湧いてくる。だがその本当の意味をフェルティは知る由もない。
ベタですいません。。。




