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ADAM  作者: 流風 生海
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たたかい。(3)

「ま、死んじゃあいない」

 蒔司はそう呟くと葉月に向かう。

       

     

「そう言えば大昔の剣豪に「宮本」ってのがいたな」

 葉月が話しかける。

「嫡流ではないがな。「色」は強く継いでいるつもりだ」

 そう答える。

「なるほど、どうりで昨日、刀を手にしてからの動きに無駄がない訳だ」ふむ。

 そうつぶやいて更に葉月が言葉を続ける。

「で、その怖い殺気むき出しでどうするんだ?私も倒して脱出口を探すのか?」

「できれば倒さずに済ませたい」

 答える蒔司。

「言ってしまえば刀を握っている俺は「別人格」だ。これ以上「コイツ」に本気になって欲しくない」

「なんだ、制御できないのか?」

「今はしている。だが本気になればなるほど俺の制御が効かなくなる。体に染み付いた本能みたいなものだからな。本来、俺の剣質は敵に対してのみ向けられるもの。だが昨日ついに千文を切ってしまった。」

「相手は化け物だぞ」

「中身はな。だが、千文に刃を振り下ろしたという事実は変わらない。そこで俺の心の「何か」がはずれてしまった。これ以上は殺戮者しか道はない」

       

「あんたも俺の刃の下に晒されたいのか」

 努めて声を落ち着かせる蒔司。

「フム。本気になれば私も倒せると?」

「それはやってみなければわからないさ。ただ、どういうケリがつこうともお互いに5体満足では済まない。模擬刀でもシールドに穴は穿てるのは先ほど証明した。ボディなど簡単に貫通するぞ。俺の突きは」

「そうだな」

 短く答える葉月。

「だがそれでは私は死なんよ」

 言うが早いかマントの前を開ける。

 そこに装甲は無い。黒くて太いチューブのようなものが何本も胴体を這っている。その様はまさしく筋肉のようだ。

 上半身が見事に発達し、腰周りは逆に中身があるとは思えない位スリムだ。

「変わったボディだな」

「こいつは特注品でな。私しか身につけられん」

 そう言うと葉月は自分の首を掴む。カシャっという音と共にヘルメットが外れ顔が現れる。はらりとショートカットの銀髪が解ける。

       

 なんだ?何をする?と思っている間に、今度は、葉月は自分の首をすっと引き上げる。

 シューッという意味不明の音。

 !!!

 そこには驚愕としか言いようのない世界があった。葉月の首の下には何やら機械のようなもの、そしてその下はケーブル、チューブ数本でボディとつながっているだけだったのだ。

「お、おい、く、首っつ、生首っ」

 思わずうろたえる。

「そうだ。実は私の本体は首から上しかない。いわゆるサイボーグだな」

「い、生きているのか?!」

 驚きのあまり舌が回らない。

「ああ、そういうことになる」

 完全に動きが固まってしまった蒔司に葉月が言葉をかける。

「見てのとおり、私のボディは、無い。このBBは磁性筋肉と内骨格フレームのみで出来ている。普段は生命維持装置を内蔵した通常フレームに載せているがな」

       

 それより、と葉月は言葉を続ける。

「刃を下ろしてはもらえんか?」

 中段の構えで固まっていた事に気付き、構えを解く蒔司。

「ああ。葉月も首、戻してくれ」

 とりあえず返事する。

「ありがとう。アンネの件も含めて礼を行っておく」

 首を元通り収めて葉月は軽く頭を下げる。

「気づいたのか」

「分からいでか。その気ならアンネの首は千切れていたはずだ」

「ああ、「気」を当てた。」

「気?」

「まあ、当身の一種だ」

「フム何やらお前には「隠れた引き出し」がありそうだな」

「うちの系譜は本来戦術家だ。伊達に免許は貰ってない」

        

 なるほど、と腕を組む葉月。

「しかし、まあ、色々仕込んだな」

「まあね、知ったらミーシャは怒るだろうな」

「いや、戦術の有効性を考えたらそうも言えん。負けは負けだ。どうせパイプのスナップスローも手加減したんだろう?」

 ニヤリと笑う葉月。

「まだ本気じゃないからな」

「怖い怖い・・・その上小麦粉スモークに壁に打ち込んだカメラ」

 葉月が壁を指す。

「まさかああいう方法で視界を確保しているとは思わんだろう」

 そう、最初の両壁に向かった3点バーストのうちの一つずつは小型カメラ。こいつがペガサスに情報を送りアクティブバインダーをコントロールしてたって訳だ。

「更に長い握りを利用しての伸びる「突き」ねえ。常人に突きの途中で握りを変えるなんて芸当はできんよ」

 肩をすくませる葉月。

(おまけに「通り過ぎる瞬間にアクティブバインダーを束ねて跳ね上げてミーシャの刀の軌道を変える」とはな)考える葉月。

 この度胸。本当にこいつがあのアダムなのか?そう一瞬考えたりもする。

       

 一方、じっくりと葉月を観察する蒔司。

(なるほど、「南九州トップ」は伊達じゃないらしい。いとも簡単にこちらのトリックを見抜きやがる。しかもあの突きの右手の返しが見えたのか・・・どうやら一筋縄ではいかないようだ。)

(実際、軽口を叩いていながら間合いだけはしっかり図っている。首を晒して俺をの動きを止めたのも計算のうちって訳か。)

        

「まいったね。こりゃ本気にならないといけないか」

 そう言って、下段に構えようとする蒔司に向かって葉月が言葉を投げる。

「いや、よそう」

「負けを認めるというのか」

 少し期待する。斬らないで済むならそれに越したことはない。

「私は負けんさ。だが、お前を傷つける訳にはいかん。我々の対決はどちらかが動けなくなる、最悪命を落とすまで続ける。そのつもりなんだろう?」

「ここに残って心が壊れるよりマシだ」

 決意を込めて口にする。

        

「たかが訓練が大仰なことになったな・・・」

 肩をすくませる葉月。

 そして、葉月はくるりと背中を見せるとクイクイっと指で呼ぶ。

 近寄るとイヤホンジャックを握っている。それを手に取りお互いの首元にあるコネクターに接続する。

 ヘルメットを再び被る葉月。

「この会話は誰にも聞こえていない。本当は機密事項なのだがお前にいつまでも黙っているわけにもいかないようだ。いいか、さりげなく姿勢を戻せ」

 そう言うとこちらに向き合う。蒔司が下段の構えに戻し、いかにも対峙しているように見せる。

「そうだ。それでいい。このワイヤレスマイクは数m離れていても秘匿会話ができる。済まないが私の動きに合わせてくれ」

 そう言うと葉月は大剣を振りかぶると、上段の構えから一気に振り下ろしてきた。

 だが、殺気は微塵もない。動きも奇をてらっているわけでもなく簡単に合わせられる。

       

 こうして盛大なチャンバラごっこが始まった。

        

 モニター室で一人観戦していたフェルティが口にする

「あれ?結局始めちゃうんだ」

 電源の落ちているミーシャは空気の振動で戦いが始まったことを察する。

「何も見えんし、何も聞こえん。体も動かん。したがって隊長を援護は出来ん。ま、アダムが勝つわけないか」

 そう呟きつつも微かに聞こえてきたボストックらしき物の撃破される音。「アンネが撃破された事」を心配していた。

 

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