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0:始発

僕が高校に入学したばかりの頃……丁度皆が高校生活のテンポに慣れてきて、気が緩んでくる時期に、ある噂が広まった事がある。

今年は2015年だが、今から約15年前……2000年の夏季補習に行った男子生徒が、全員戻って来なかったという噂。

僕はこんなソースの提示も無い不確定な情報を信じてなどいなかった。だから僕は調べる気などなかったのだが……友達である西川光司が調べていく「ノリ」を作ってしまった。

高校の中には、グループやスクールカーストというものが確かに存在する。「ノリ」の悪い奴や何か外れている奴、生意気なやつ、とにかく気に入らなかった人間は位の高い者によって除外され、省かれ、スクールカースト……つまりは学内での立ち位置の事だ……を落とされる事になる。弱肉強食の世界だ。 僕はそれを恐れ、スクールカーストの高かった西川の発言に乗ってその事件について調べることにした。誰だって迫害は嫌である。もちろん僕も例外ではない。……これだから人付き合いは面倒だ。

結果から言ってしまえば、予想外の答えが出た。確かに何かがあった事が暗示されたのだ。西川は高学年にも人脈を広げており、とことん顔が広い奴だったのが災いした。

過程を後付けで説明しておくと、その日の昼休みに僕らは西川、それから彼の腰巾着や金魚の糞と共に二年二組の教室に向かう事になった。そして西川が所属するテニス部の先輩であるという長身の男とコンタクトを取った。

実際に会話をしたのは西川だけだった。――いや、あれは会話とは呼ばないか。「先輩、夏季補」

と言い掛けた所で、先輩は顔を真っ赤にして、

「ああっ……この話はやめだやめ……それじゃあな!」

と焦燥感を剥き出しにして逃げ出してしまったからだ。メタルスライムかよ。

他にも複数のテニス部の先輩(明らかに違うだろうと言う人も居た)の男子に聞き込みを実施したが、似たような反応が返ってくる。何があったかの推測は、僕には出来なかった。しかし、何かあった事は分かった。――これは誰でもか。そうして僕らはよく分からない結果を持ち帰り、議論を交わし合う事になった。ああ、僕の読書の時間が……

その結果から結論を導き出す事は出来なかった。化学反応の実験のようなモノだ。反応したことは分かっても内部で何が起こったか分からなければ理解には至れない。質問された先輩らが顔を赤くした事から、「エロスの予感?」と叫び出す馬鹿は居たが。作り笑いしといた。


その後すぐに噂は沈静化して、事件は迷宮入りした。こうやって見ると去年の一年生も来年の一年生も同じことをしていそうだな。一種の伝統行事だろうか。

その後、僕らの間でその話題が広まる事は一切なかった。そして問題の夏季補習の季節がやって来た。期末テストが終了したのだ。僕は成績は良い方だったから、補習なんかに引っ掛かる事は無いだろうと思っていた。――しかし引っ掛かってしまった。今回も決して成績は悪くなく、むしろいつもより調子が出ていたというのに。

夏休みに入った七月二十五日。何も起こらない筈の普通の日。そして補習の開始日。

僕が冷房のきいた家からしぶしぶ出ていく所までが、回想。

蝉の鳴き声を聞きながら早速暑さに唸って項垂れているところから今だ。

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