死体愛好家の悲劇
---白雪姫が毒りんごで、倒れた直後----
---白雪姫の母親にあった王子は、自国への帰途についていた。---
「はぁ。」
思い出しただけでも、ため息がでる。
世界一の美女と聞いていたが、とんだ厚化粧のオバサンだった。口を開けば、甲高い声で捲くし立てる。
やはり、女は死体に限る。五月蝿くなくてよい。
突然、馬車が止まった。
「おい、どうした?」
衛兵がいない。
森の中だった。悪戯な妖精が人を惑わすという魔の森だ。
「しかたない。」
馬車から馬を離し跨る。
同じところを回っている気がする。魔の森の妖精の仕業だろうか。
しばらくの間、森の中を彷徨った。
木々が開けていた。明るい。
綺麗な花が咲いている。その中央に場違いな棺があった。
絶句した。
なんと美しい女性だろうか。可愛らしい顔立ち。肌は透き通るように白い。ただ、くちびるは青紫だった。
死んでいる。
理想の女性だ。美しく。静かに眠っている。
やはり、死は女性から無駄なものを取り除く。
誰も見ていない。自分の衝動を抑えきれず、棺の中で眠る少女にキスをしていた。
「けほっ、けほっ。」
慌てて離れる。青紫だったくちびるが、赤みを帯びて行く。
「白雪姫が起きたよ。王子様のキスで目を覚ましたよ。」
どこからか現れた小人たちが騒ぎたてる。
やめろ!
死んでいたのではないのか。
なぜだ。僕は眠っている少女が好きだったのに。
そんな、目で僕を見るな。
熱を帯びた目で、僕を見るな!
---王子様のキスで目を覚ました白雪姫は、王子様と結婚して幸せになりました。---
---王子様が幸せだったのかは、また別のお話---
普通、見ず知らずの死んでいる女性にキスはしませんよ。王子様が白雪姫にキスをしたのは死体が好きだったからですよ。ってな、感じで書いてみました。リンゴが女性の純潔を表しているとか、そんなところも書きたかったのですが、さすがに、R18になっちゃうので、それは別の機会に