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海に堕ちた太陽 【蒼碧の鎖-4-】  作者: 沖津 奏
第4章 終わりの始まり
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33 波の結び目

「あなたは本当に、生まれながらの貴族のようでした。でももう、あなたは必要ないのです。スペインで死ぬだろうと思っていたのに、よもや生きて帰るとは!私は今まであなたの多少の失敗には目をつむってきました。あなたが必要だったからです。シアーズに逃げられた時も……。降等処分にすらしませんでした。でも今はあなたの代わりとなる者達を見つけました」

 女王はそこで一呼吸置いた。ローランド卿の目が大きく見開かれている。瞳が揺れる。世界が揺れる。彼は今、女王が言ったことを必死に理解しようと努力しているようだ。それよりも、いつも信じてきた言葉を疑う自分に驚いているようにも見える。女王が大きく息を吸い込んだ。

「よって、今回の戦いにおける大損害、シアーズの監督不行き届き、その他海賊との私的交流等において、あなたを死刑、いえ、あなたに褒美として自由を与えましょう。これはほんの余興です。あなたが私の忠実な家臣であるなら、そのことを、私を楽しませて、証明してみて下さいね」

 ローランド卿の目に絶望の色が浮かんだ。追い詰められた獲物の顔だ。

「陛下……!お待ちを……私はっ……」

 ヒューストン伯爵が再び銃口を向けた。あまりにも軽い銃声が響き、ローランド卿は立ち上がりかけた右足に切り傷を受けた。彼は地に手をついて倒れた。ふと、石畳に目を落とした。自分のいた場所が、斑に紅い。陽の光のせいで、白っぽく見える石畳に散っている。そうだ、薔薇を――薔薇をまだ、渡していない。約束したのだ。いつか、とげのない薔薇を渡すと。ああ、もう一度大陸へ行って、頭を下げて貰ってこなければ。

「さあ……そのまま、どこへでもお行きなさい。あなたは自由なのですよ。愛する国民の手にかけられて死ぬ方がよいでしょう?見ましたか?あなたの死を求めている人が、城壁の外にはたくさんいるのですよ」

 そんなこと、知っている。知っている……。なのに、この気持ちは何だ。怒りでもなく、悲しみでもなく。ましてや、諦めでもない。女王陛下の声は、自分を相手に話しているのに、まるで潮騒のように聞こえた。

 ああ、これが屈辱というものなのか?分からない。もう何も分からないし、考えたくないし、知りたくもない。こんな最期を迎えるために、今まで必死に生きてきたなんて。裏切られるために命をかけていたなんて。どんな妬みにも恨みにも、いわれのない憎しみにだって耐えてきたのに。ただ一人、目の前の女性の治める国のために、義父はこの醜い命を救ってくれたと思っていたのに。

 俺が至らなかったのか……?これが、悲しみというものなのか?

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